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<オピニオン>日中韓の交流拡大を海外旅行市場の成長の力に−ソウル、上海・取材より

  • 2007年12月14日
 12月10日から12日にかけて、大韓航空(KE)でソウル、上海を訪れた。往路は羽田/金浦/虹橋の定期チャーター、復路は浦東/仁川/成田の定期便利用だ。ソウルでは金浦、仁川と訪れ、韓国人の旅行意欲の高さに触れた。上海では、万博を控えた勢いを建設ラッシュの状況で感じた。

 振り返ると今年は特に、日中韓の3ヶ国の相互交流をさまざまな場所で感じることが多かった。韓国からの日本訪者数は約260万人、日本から韓国への訪問者数は220万人と初の日韓訪問者数の逆転現象が起こると予測される状況にあり、日本・中国間では羽田/虹橋間の定期チャーター便が開設された。さらに、冬柴国交相が先ごろの中国訪問で提案した羽田/北京線も開設に向けて動き出す。

 旅行業界の動きにも変化が訪れている。例えば、航空でいえば、全日空(NH)とアシアナ航空(OZ)が包括的な業務提携を結び、昨年から始まった日本航空(JL)、大韓航空(KE)のコードシェアは羽田/虹橋間にも拡大した。韓国とはアジア・ゲートウェイ構想来、初の自由化に合意した。旅行会社ではジェイティービーは韓国ロッテグループと合弁企業を設立、近畿日本ツーリスト、ジェイティービー九州が相次いで韓国最大手のハナツアーと業務提携するなど、動き出している。一方で、韓国のランドオペレーターから日本の旅行会社に対して、支払い期日を早めて欲しいという要望が出され、中国国家観光局は高品質の旅行商品の開発を強く促すなど、交流拡大の影となっていた側面が浮上したのも、前向きな方向として捉えたい。

 日本市場では、海外旅行が伸び悩みを見せていると断言しても良い局面にある。この難局を乗り切る鍵として、この3ヶ国の交流人口を増やすこと、特に日本からの出国者数の増加に注力し、今後の海外旅行を牽引する市場の力として示す場面にあるだろう。日中韓の交流人口の拡大は、中国、韓国での反日感情を契機として、「草の根」交流を活性化することの重要性を意識した政治的な決断が大きいが、実際に送客につなげるのは旅行会社の役割であり、商売にもつながる。

 海外旅行業界としては、3ヶ国間の旅行に関し、国内旅行の感覚で気軽に出かけられる雰囲気を醸成することが求められる。特に、韓国・ソウル、中国・上海、または北京は簡便に行ける環境として、羽田発の定期チャーター便があり、さらに中国、韓国の航空会社による日本の地方都市へ乗り入れている路線、日系航空会社の主要都市からの主要都市への路線を最大限に活用したい。これをきっかけに、北東アジアの3ヶ国から、東南アジア、ビーチリゾート、欧州、北米、南米、アフリカ、オセアニアと、全世界を訪れる日本市場をつくりだしたい、と改めて思うソウル、上海への訪問だった。(鈴木)