ビザまめ知識(1)−9.11テロ事件以降、米国ビザに生じた変化

  • 2007年11月22日
 今回からアルビスジャパンの協力を得て全11回にわたり、具体的な事例やトラブルを交え、「ビザ」に関わる現状や、対処方法について前カナダ外交官のチャールズ・W・プレイ弁護士に寄稿してもらう。特に、アメリカ入国時に指紋採取を必要とするなど導入時には様々な変更があったが、こうした点では11月20日から改正出入国管理法が施行され、日本でも関心の高いところ。入国に必要な書類である「ビザ」という観点から、問題や対応を探っていく。第1回は、現状把握として、2001年以降の変更点のおさらいからはじめる。<文:チャールズ・W・プレイ弁護士(アルビスジャパン主任弁護士)>

 2001年9月11日に起きたテロ事件以降、米国ビザ取得に関する様々な変化や変更が下記のように生じた。

A.移民局が国土安全保障省の管轄となった
B.2003年8月以降、ビザ取得申請が今までの「郵送申請」から、米国領事との面接が重要視される「面接申請」に代わった
C.ビザ申請フォームが「バーコードフォーム」へ変更
D.「バイオメトリックシステム(生体情報)」が2004年7月より導入される
E.米国入国時での「バイオメトリック」と「ルックアウト」システムが2004年9月より導入される

 旧移民局は司法省の管轄であったが、テロ事件以降、テロリストの脅威から米国本土を防衛する目的で設立された国土安全保障省の管轄となり、2003年以降はビザ申請手続きが大幅に変更した。なかでも一番大きな変化は「領事との面接による申請」が必要となったことである。面接は約2分から3分程度のものであるが、領事は申請者および申請内容の信憑性を瞬時に判断するので軽んじることができず、ビザ取得へいたる重要なポイントとなる。

 具体例をあげると、移民局での請願を必要とするHビザ(就労ビザ)やLビザ(企業内転勤者ビザ)などは、以前であれば請願後に大使館・領事館へ郵送で申請を行えば自動的に取得することができた。しかし2003年8月から面接申請が導入されたことにより、ビザ申請者の適性について直接領事が審査することで、申請者自身の認識不足が原因となりビザ取得が却下されるというケースも出てくるようになったのである。

 さらに、米国訪問時には「US-VISIT(新出入国管理システム)」により、入国時だけでなく出国時にも指紋などの生体認証情報や写真をとることが必要になり、くわえて「Look Out」システムの導入によって、過去の逮捕歴の有無について瞬時にチェックすることが可能となった。いままでは問題なく自由に米国を出入りしていた者であっても、数十年前の逮捕歴について指摘され、突然入国が不可能になるというケースも起こるようになったのである。



チャールズ・W・プレイ弁護士
(アルビスジャパン主任弁護士)

経歴:
前カナダ外交官
カナダ弁護士会会長(1997〜1998年)
CIPC議長 

前カナダ外交官。現在は移民法専門事務所のアルビスジャパ
ン主任弁護士として、多くの日本人のビザや永住権などの取
得サポート。米国移民弁護士協会(AILA)、やカナダ弁護士
協会(CBA)や国際弁護士協会に所属し、専門家、企業や法人
に対し米国、カナダ両国の移民に関する法的サービスを行う
国際移民弁護士。 現在、移民問題に関する記事を執筆し、移
民政策に関してカナダの上級政府官僚に定期的にアドバイスしている。

http://www.albsjapan.com/