チロル州、自然に加えて歴史や文化的側面で訴求へ−交流プログラム定着傾向

  • 2007年9月4日
 チロル州観光局はアルプスの雄大な自然を中心に、ハプスブルク帝国の陰の首都と呼ばれたインスブルック市に代表される歴史、ジャム作りなどの文化交流体験を前面に打ち出し、日本人宿泊数の約5万泊を増加させたい考え。このほど開催した業界向けセミナーで、チロルを中心としたデスティネーションの紹介と旅行商品の造成を訴えた。

 ジャパン・チロル・コーディネーション(JTC)企画・手配マネージャーで、チロル州観光局日本担当オフィスも兼任する飛田浩一氏によると、JTCは現在、チロル州の文化的交流プログラムとして約30種類を用意。街中から馬車に乗り、山小屋に行き、地元の果物でジャムを作った後、ヒュッテで昼食を取ってハイキングして帰るプログラムや、ハイキングしながら「ハーブガイド」と共にハーブを摘み、ハーブオイルを作るコースなどをはじめ、「日本マーケットの中で定着してきている」という。また、社交ダンスやテーブルマナーを学べるプログラムや、バイクでのツーリングプログラムなども展開中だ。また、飛田氏は「食文化」についても触れ、「酪農が盛んなため、ハムや乳製品は特に高品質」と語り、ウィーンなどのオーストリア東部を周遊するようなコースを提案している。

 なお、チロル州の観光素材としてインスブルックで、15世紀にハプスブルク家によって作られた「黄金の小屋根」や王宮、マリア・テレジア直系の子孫が管理する「トラッツベルク城」、ロココ調の建物「ヘルブリングハウス」、総大理石の大聖堂などがある。リゾート地のゼーフェルトは、宿泊施設やレストランの質が高いものの、価格は比較的割安に利用でき、ショッピングやカジノも楽しめる。またサンクト・アントンはハイキングのメッカとされ、豊富な植物や花が特徴で、花畑を歩くコースの人気が高い。またチロル州にはスワロフスキーの美術館や、ガラス器メーカー「リーデル」の工場などもある。スワロフスキーの美術館では、グループ用に音楽付きの昼食会も用意している。

 飛田氏は今後、「まずはデスティネーションとして認知して頂くために、ザルツブルクやスイスの都市などと組み合わせた商品の企画を訴えていく」という。オーストリア政府観光局の神田博夫氏も、「まだ観光地化していない部分もあるが、それも『落ち着ける』という意味ではメリット。オーストリア東部が一段落し、新しい商品、新しいデスティネーションにニーズが集まり始めており、都会にはない自然の楽しみを提供できる」という。また今回は、消費者向けセミナーも開催しており、「今回が初めてのこと。今後はチロルなどについて、直接、消費者にも訴求していく」と意欲を示した。