現地レポート:アイルランド
豊かな自然、受け継がれる文化との共存
「グリーンボックス」でエコツーリズムに名乗り
世界的にエコツーリズムに注目が集まる中、アイルランドではいち早く、自然と触れ合い、地域に密着したアクティビティを楽しめるエリアを「グリーンボックス」として設定、プロモーションを開始した。エリア内にはエコフレンドリーな宿泊施
設がそろい、土地ならではのアトラクションも用意。本格的なエコツーリズムを提供している。(取材協力:アイルランド政府観光庁、ヴァージン・アトランティック航空、エア・リンガス)
◆ エコツーリズムに最適なアイルランド
「エメラルドの島」との異名をとるアイルランドは、その名が示すように緑豊かな国である。樹木は少なく、深い森はないが、一年を通じて青々とした芝に覆われたフィールドがパッチワークのように広がる様子は、牧歌的で心和ませる。近いてみると、土地の境界線は柵ではなく石を重ねた石垣が連なり、周囲には朽ちた石造りの塔や小屋などがぽつねんと佇んでいる。それらは英国支配時代の遺物だが、このほかにもなにげない風景の中に先史時代の遺跡を見出すこともある。
エコツーリズムはただ、自然景観を眺めるだけの旅行ではなく、ある一定の定義がある。たとえば、小規模のグループで環境への影響を抑えた持続可能な観光内容であり、地域密着型でその土地の風土を感じられるプログラムであること。かつ、旅行を通して環境保護の意識を高める教育的な意味合いを含み、心や精神を活性化させるアクティビティがあること、などが挙げられる。これに「我こそは、まさに適任地なり」と手を挙げたのが、アイルランド。このほど設定した「グリーンボックス」は、単なる自然の豊かさだけでなく、エコツーリズムの精神を追求することができるエリアなのである。
◆ EUの基準を取り入れ、本格的にエコフレンドリーな旅を
「グリーンボックス」はアイルランド北西部に位置するファーマナ、リートリウム、ウェスト・キャバン、ノース・スライゴー、サウス・ドネゴール、ノース・モナハンの6地方にまたがる地域に設定した、エコツーリズム専用のデスティネーションの呼び名である。英国領内である北アイルランドを含み、このエリアを選定したのは、本格的なエコツーリズム体験ができるから。今まで観光の手があまり入らなかった地域だけに、ごくアイルランドらしい自然の姿に触れることができるのだ。
このエリアでのアクティビティは多岐にわたる。自然を楽しむアウトドアが中心で、トレッキングやサイクリング、湖での釣りやカヌー、川下りなどもでき、スライゴーではサーフィンも楽しめる。
屋外アクティビティだけではなく、宿泊施設そのものにも注目したい。グリーンボックス内にはシンプルなロッジから歴史建造物を改装した豪華ホテルまで、さまざまなカテゴリーの施設があるが、エコフレンドリーであると認めた施設には、欧州連合による認定マーク「EUフラワーズ」が付与されているのだ。客室内のゴミの捨て方、蛇口から出る水の量など、欧州委員会が監修する基準等を満たし、環境に配慮した経営をしている施設のみが、このマークを取得することができる。純粋にエコツーリズムに興味を持つFITや視察などのグループには、このマークを取得した施設での滞在がお勧めだ。
◆ オーガニックで心も体もリフレッシュ、日本人向けのアトラクションも
グリーンボックスでは、オーガニック素材と土地の野菜などを学習する機会を設定している。北アイルランドとの国境線の近くにあるオーガニックセンターは、無農薬栽培法の伝授や一般に展示するための非営利施設として1995年に設立された。敷地内には多くの果物や野菜が植えられ、その農法や水の循環法などの説明がされる。学習といっても特に難しくはなく、日本ではあまり見たことのない野菜などを見学するだけで十分におもしろい。
施設内にはオーガニックのチョコレートやお菓子、環境汚染を防ぐ洗剤などが売られているほか、カフェでは無農薬野菜中心のメニューを取り揃えた軽食を提供。料理教室も開催しており、野菜を使った料理を覚えて帰るのもいいお土産となるだろう。今後は料理教室のフィールドワークとして、海辺まで出かけて海草を採り、それを使ったアイルランド料理を伝授することも考えているという。
貧困時代の長かったアイルランドでは、環境破壊につながる乱開発には縁がなく、「オーガニック」や「手作り」といったキーワードも特に目新しいものではない。だからこそ環境が守られており、それゆえ、ヨーロッパからこの地域を訪れる旅行客の多くはエコツーリズムを目指しているのだ。新たに「グリーンボックス」という名のデスティネーションとしたことは、国を挙げた積極的な環境保護のためのエコツーリズムのモデルケースとして、他国の手本となるだろう。
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「グリーンボックス」でエコツーリズムに名乗り
世界的にエコツーリズムに注目が集まる中、アイルランドではいち早く、自然と触れ合い、地域に密着したアクティビティを楽しめるエリアを「グリーンボックス」として設定、プロモーションを開始した。エリア内にはエコフレンドリーな宿泊施
設がそろい、土地ならではのアトラクションも用意。本格的なエコツーリズムを提供している。(取材協力:アイルランド政府観光庁、ヴァージン・アトランティック航空、エア・リンガス)
◆ エコツーリズムに最適なアイルランド
「エメラルドの島」との異名をとるアイルランドは、その名が示すように緑豊かな国である。樹木は少なく、深い森はないが、一年を通じて青々とした芝に覆われたフィールドがパッチワークのように広がる様子は、牧歌的で心和ませる。近いてみると、土地の境界線は柵ではなく石を重ねた石垣が連なり、周囲には朽ちた石造りの塔や小屋などがぽつねんと佇んでいる。それらは英国支配時代の遺物だが、このほかにもなにげない風景の中に先史時代の遺跡を見出すこともある。
エコツーリズムはただ、自然景観を眺めるだけの旅行ではなく、ある一定の定義がある。たとえば、小規模のグループで環境への影響を抑えた持続可能な観光内容であり、地域密着型でその土地の風土を感じられるプログラムであること。かつ、旅行を通して環境保護の意識を高める教育的な意味合いを含み、心や精神を活性化させるアクティビティがあること、などが挙げられる。これに「我こそは、まさに適任地なり」と手を挙げたのが、アイルランド。このほど設定した「グリーンボックス」は、単なる自然の豊かさだけでなく、エコツーリズムの精神を追求することができるエリアなのである。
◆ EUの基準を取り入れ、本格的にエコフレンドリーな旅を
「グリーンボックス」はアイルランド北西部に位置するファーマナ、リートリウム、ウェスト・キャバン、ノース・スライゴー、サウス・ドネゴール、ノース・モナハンの6地方にまたがる地域に設定した、エコツーリズム専用のデスティネーションの呼び名である。英国領内である北アイルランドを含み、このエリアを選定したのは、本格的なエコツーリズム体験ができるから。今まで観光の手があまり入らなかった地域だけに、ごくアイルランドらしい自然の姿に触れることができるのだ。
このエリアでのアクティビティは多岐にわたる。自然を楽しむアウトドアが中心で、トレッキングやサイクリング、湖での釣りやカヌー、川下りなどもでき、スライゴーではサーフィンも楽しめる。
屋外アクティビティだけではなく、宿泊施設そのものにも注目したい。グリーンボックス内にはシンプルなロッジから歴史建造物を改装した豪華ホテルまで、さまざまなカテゴリーの施設があるが、エコフレンドリーであると認めた施設には、欧州連合による認定マーク「EUフラワーズ」が付与されているのだ。客室内のゴミの捨て方、蛇口から出る水の量など、欧州委員会が監修する基準等を満たし、環境に配慮した経営をしている施設のみが、このマークを取得することができる。純粋にエコツーリズムに興味を持つFITや視察などのグループには、このマークを取得した施設での滞在がお勧めだ。
◆ オーガニックで心も体もリフレッシュ、日本人向けのアトラクションも
グリーンボックスでは、オーガニック素材と土地の野菜などを学習する機会を設定している。北アイルランドとの国境線の近くにあるオーガニックセンターは、無農薬栽培法の伝授や一般に展示するための非営利施設として1995年に設立された。敷地内には多くの果物や野菜が植えられ、その農法や水の循環法などの説明がされる。学習といっても特に難しくはなく、日本ではあまり見たことのない野菜などを見学するだけで十分におもしろい。
施設内にはオーガニックのチョコレートやお菓子、環境汚染を防ぐ洗剤などが売られているほか、カフェでは無農薬野菜中心のメニューを取り揃えた軽食を提供。料理教室も開催しており、野菜を使った料理を覚えて帰るのもいいお土産となるだろう。今後は料理教室のフィールドワークとして、海辺まで出かけて海草を採り、それを使ったアイルランド料理を伝授することも考えているという。
貧困時代の長かったアイルランドでは、環境破壊につながる乱開発には縁がなく、「オーガニック」や「手作り」といったキーワードも特に目新しいものではない。だからこそ環境が守られており、それゆえ、ヨーロッパからこの地域を訪れる旅行客の多くはエコツーリズムを目指しているのだ。新たに「グリーンボックス」という名のデスティネーションとしたことは、国を挙げた積極的な環境保護のためのエコツーリズムのモデルケースとして、他国の手本となるだろう。
やっぱりはずせないアラン島
のんびり滞在してじっくり堪能
グリーンボックスの地域内ではないが、アラン島もまたエコツー
リズムの宝庫。3つの島々からなるアラン島のなかでも最大の
イニシュモア島には、モハーの断崖に次いで有名な、高さ90
メートルの断崖デューン・エンガスがあるため、もっともポピュ
ラーな旅先となっている。ゴールウェイはずれのロッサヴィール
港からフェリーで約40分。午前11時30分に到着し、夕方6時
に島を発つ最終フェリーまでデイトリップを楽しむ観光客も多い
が、じっくり自然と触れ合うなら1泊か2泊の宿をとるのがお勧めだ。
島内は車の乗り入れができないため、移動は予約制のタクシーか自転車、または
徒歩になる。サイクリングは非常に人気があり、激しいアップダウンも少ないので
健康に問題のない人ならぜひ利用したい。島内の観光名所は自転車を借りれば
十分行ける距離である。デューン・エンガスをはじめ舗装されていない場所へは
徒歩で上っていくことになるので、サイクリングと軽いトレッキングをあわせたような
アクティビティだ。
キルローナン村には島内唯一の銀行(週3日だけ営業)やスーパーがあり、土産物店
もいくつか軒を連ねる。アラン編みセーターや貝でできたアクセサリー、海草から作ら
れた基礎化粧品などがこの島らしいみやげ物だろう。帰りのフェリーが出港するまでの
時間帯はこれらを求める観光客で非常に混み合う。宿泊する場合は余裕をもって翌日
の朝などに買い物時間を入れるのがいいだろう。
▽グリーンボックス
http://www.greenbox.ie/
▽EUフラワーズ
http://www.ecolabel-tourism.eu/frameset/frameset.html
アイルランド政府観光庁 http://www.discoverireland.jp/
ヴァージン・アトランティック航空 http://www.virginatlantic.co.jp/
エア・リンガス航空 http://www.aerlingus.com
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