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ビジネストラベラー:出張者の要望と目的に沿ったプラン作りが決め手

  • 2007年6月21日





出張者の要望と目的に沿ったプラン作りが決め手

今回はキャノン株式会社の写真制作課の菅原和彦氏へのインタビュー。秘境をはじめ、世界各地への出張経験を豊富にもつ菅原氏が旅行会社に求める必須サービス、期待するサービスを伺った。旅行者の意図を汲んだつもりの提案が時として、本人は望まないこともある。旅行者の立場に立ったサービスとは何かというヒントを頂戴した。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)

Q:これまで海外出張で訪問された国は?

菅原和彦さん(以下、菅原): いろんな国へ行きました。例えば、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、ギリシャ、スイス、オーストリアなどの欧州各国のほか、カナダ、それに中国、タイ、マレーシア、シンガポール、韓国などのアジアから、オーストラリアやニュージーランド、タヒチなど、30ヶ国は訪れているでしょう。珍しいところではモンゴルなど、シルクロードの奥地にも行きました。

Q:最近はどうですか?

菅原: 昨年は4回でしたが、最近の平均では年に約2回から3回は海外へ出張しています。今年は7月にロシアとニュージーランドに行きました。

Q:出張の目的はどのようなことが多いですか?

菅原: 目的は通称「作例」というカメラの新製品を使って撮影する作例写真、また新製品の写真そのものを撮影するためです。私の部署は、世界の本社として世界に向けて展開しており、様々な国で外国人モデルを使い撮影することが多く、必然的に海外ロケが必要となるのです。

Q:社員の海外出張で増えている地域はどこですか?

菅原: 全体的には、やはりアジアが増えていますね。これは、各地に工場を増やしている関係で工場建設や操業支援などが目的で出張することが多いです。

Q:海外出張での座席利用規程はありますか?

菅原: 座席は役職と飛行時間で決められています。ファーストクラスの利用はごくトップクラスだけです。

Q:旅慣れておられますが、旅行準備で気をつけることはありますか?

菅原: 仕事柄、背広ではなく普段着のまま行きます。機材が重いのでとにかく軽装、かつ極力余計なものは持っていきませんね。だいたい10日以内の出張が多いので、綿パンツを2本と下着を日数分もっていきます。靴は足場の悪いところでも平気なようにスニーカーです。出張用の持ち物として、薬は胃薬と頭痛用の2種類、洗面道具、爪切り、耳かき、電池式髭剃りにサングラス、リンスと空気枕、スリッパを一括袋に入れてもっていきます。

Q:出張時に苦労なさることは何ですか?

菅原: 私の場合は仕事上、必需品の撮影機材がとにかく重いことです。また、通関に手間取ることが最も大きな問題です。

 1回の出張で必要な通関は4回。つまり、日本からの出国、到着した国での入国手続き、訪問国からの出国、日本への再入国手続きです。国際貿易仲裁協会に加盟している国であれば手続きが簡単に済むのですが、加盟していない国の場合は手間取ります。

 加盟国の空港には「カルネ(CARNET)」と看板が掲げられていますが、分かりにくい場所にあることも多く、探すだけでも時間が掛かり、飛行機に遅れそうになったこともあります。各空港とも判り易い場所に看板を掲げてほしいものです。成田でさえ見やすい場所になったのは5年ほど前です。

利便性よりも旅行者の要望の汲み取りを

Q:海外出張時の最も印象に残っている出来事は何ですか?

菅原: サンディエゴから国境を越えたところにあるメキシコのティファナという町での出来事です。そこは原住民のインディオが多く、治安はよくないと聞いていたので結構、警戒心を持って町を歩いていました。その時、小さな女の子が寄ってきて、わら人形のようなものを差し出しつつ、「ワンダラー、ワンダラー」と言ってきました。

 私はその身なりから物乞いだと思い1ドルを渡し、「人形はいいから」と受け取らなかったところ、その少女がずっとついてくるのです。近くにいた母親らしい女性が、どうやら「受け取ってもらえ」というしぐさをしていました。しかし、私はしばらく受け取らないまま歩いていき、そのまま仕事で撮影に入ったのですが、まだしつこくいるのです。

 その時、「ああ、物乞いではないと、アピールしているのではないか」と思いわら人形を受け取ると、嬉戯として帰っていきました。つまり私は、小さな彼女の大きなプライドを傷つけていたことに気付きました。その少女のあどけない表情は未だに忘れられません。

Q:次回家族で行きたい海外旅行先はどこですか?

菅原: 家族ではこれまで、ハワイ、グアム、イギリス、フランス、イタリアを訪ねました。昨年はグアムへ行き、一人息子と妻と3人でゴルフをしました。それが楽しかったので、今年は11月にまたグアムへ行き、ゴルフ合宿を楽しむことに決めています。

 もう一度行きたい国といえば、ギリシャのサントリーニ島やロードス島などですね。あの紺碧の海と空に魅せられました。

Q:安全対策の秘訣はありますか?

菅原: 宿泊先でセキュリティボックスがあれば、必ず入れるようにしています。機材を置いて外出することがあるので、カメラバッグにダイアル式ロックを必ず付けます。また、バッグごと持っていかれないようにワイヤー式ロックを動かないテーブルなどに固定します。外出する場合はパスポート、財布、航空券など貴重品を全てポシェットに入れて、たすきがけにしています。現金は5万円位を現地通貨に換えますが、支払いはほとんどカードを利用しています。

Q:出張先の宿泊先に望む点は?

菅原: 安全で静かなホテルが一番です。仕事は太陽や天気に左右されることが多く、早朝から夜中まで撮影することが普通なので、ゆっくりできる静かなホテルでくつろぐ時がもっとも楽しい時間なのです。ホテル選びはキヤノンの拠点があるところは良いですが、仕事柄、僻地に行くことが多い。そのような場合はホテル情報が少なく、便利さだけで街中のホテルを予約されたことがありましたが、結構うるさいホテルが多く休めませんでした。

求めるのはきめ細かいサービス、危機管理、手配の確実さ

Q:企業として旅行会社に求める最も重要なサービスは?

菅原: まず、危機管理です。それから手配の確実さでしょう。

Q:旅行会社に何か提案することはありますか?

菅原: 旅行者の要望にあったホテルを推薦するなど、きめ細かいサービスをしてあげると喜ばれますよ。いつも私は旅行の手配は子会社の「キヤノンツアーズ」がすべてやってくれるので安心しています。一般のツアーではとても訪れない、現地のガイドがはじめて行くような場所での撮影が多く、いつも無理な注文をするのですが、現地情報を詳しく収集してアレンジしてくれるなど、対応が良く感謝しています。

Q:旅行会社に注文はありますか?

菅原: やはり旅行者の状況、要望にあわせた旅行プランを提案してほしいですね。そのためには現地の状況を常にアップ・デイトしておくことが必要ではないでしょうか。

菅原 和彦(スガワラ カズヒコ)氏
キヤノン株式会社 
コーポレートコミュニケーションセンター
宣伝部写真制作課 課長 フォトグラファー

1975年 入社、広報部写真制作課
1995年 広報宣伝本部、制作部制作課
2002年 コーポレートコミュニケーションセンター、制作部写真制作課