トップインタビュー:エア・タヒチ・ヌイ アジア地区統括支社長 千野淳氏

自社営業へ転換して一年、
さらなるブランド力の強化をはかる



エア・タヒチ・ヌイ(TN)は、2006年1月にエール・フランス(AF)とのGSA契約を解消し、自社営業を開始し、一年が経過した。日本路線が現在、週3便で、13ヶ月連続プラス成長と好調に推移、今夏の予約状況も昨年比10%増と勢いのある伸びをみせている。日本アウトバウンドの需要だけでなく、インバウンドも視野に入れ、各種のパッケージ商品の開発を促し、タヒチの洗練されたブランディング作りにも成功している。今回はアジア地区統括支社長の千野淳氏に、現在の実績や今後の流通政策などを聞いた。(聞き手:弊紙編集長 鈴木次郎)



現在のエア・タヒチ・ヌイの実績、およびGSA体制からの変更での状況は

千野淳氏(以下、千野) TNは、エア・フランス(AF)とのGSA契約を終えた2006年1月以降、最初の4ヶ月は対前年比で実績が落ちたものの、2006年4月は前年比3.6%と増加し、その後も順調に推移し、2007年4月まで13ヶ月連続で対前年実績を上回っている。このうち、2006年5月から2007年4月まで12ヶ月間の平均成長率は13.6%増と好調に推移している。

日本からタヒチへの渡航者数は2006年5月から2007年3月まで順調に増えており、9.3%増を記録している。こうした成長率からすると、自社営業への転換は成功であると実感している。

タヒチに就航している日本発の航空会社はTN一社で、タヒチ観光局とオフィスをシェアすることに問題は無かった。GSAから自社体制となり、国内で週3便を販売していくという意気込みを業界にアピールするためにも、丸の内の路面に新たなオフィスを構えることができたのは幸運だった。観光局とオフィスをシェアすることで、会議や打ち合わせが行いやすくなり、広告やキャンペーンなどでも統一したメッセージをマーケットに送ることができるようになった。


今年の夏の予約状況は?

千野 タヒチの旅行者の大半はボラボラ島へ行くが、昨年は多くのホテルが高潮の被害を受け、宿泊施設の不足で苦労した。そこで観光局と共に、タヒチ島のプロモーションを積極的に進めたことで、良い結果をおさめることができた。現在は新しいホテルがオープンしたこともあり、未だキャパシティは十分とは言えないものの状況は改善され、今年の夏の予約は去年と比べて10%近い伸びを示している。


流通面ではどのような工夫をしていますか

千野 TNの営業チームと旅行会社との関係が非常に上手くいっていると思う。年に数回、旅行代理店のカウンターで商品を売ってくださる方々を中心としたFAMを開催しており、こうした活動を通じて、タヒチ、TNの商品内容に理解を深めていただいている。

タヒチはタヒチ島だけでも、他の観光地に劣らない楽しみ、素材がある。以前はタヒチ商品のバラエティは少なかったが、現在はいろいろなテーマ性を持つ商品が増えている。例えば、タヒチアンダンスを学ぶもの、シニア向けにはイースター島への旅などを企画、それぞれに対応した客層にアピールできる商品などが数字に反映されてきた。

重要なことは、「タヒチは特別な場所である」という一貫したメッセージを発信してきたこと。タヒチは他のビーチリゾートにはない歴史や魅力を持つ特別な場所であるということをアピールし、ハネムーンなどを想定してメッセージを発信する時には「上品さ」を心がけている。タヒチはハワイのようなマスマーケットになることはないし、質を保った上質なデスティネーションとして、これからもメッセージを送っていきたい。


マスへの方向を否定しながら、航空会社として一定のイールドは保つという課題にはどのように取り組んでいますか

千野 タヒチはビジネスの需要は少ない。そうすると、必然的にエコノミークラスのイールドを高めなければならない。タヒチというデスティネーションは、航空料金の割引が購買に結びつくとは思われない。安いものが常に良いものであるわけではなく、また、赤字にしてまで日本路線を週3便に保つ必要もなく、必然的にイールドは高くなっている。

最近はタヒチのストップオーバープログラムの普及に力を入れており、北米からタヒチを経由してニュージーランドやオーストラリアへ行くお客様も年々増加している。世界一周旅行などのプログラムにもTNは積極的に社名をだしてアピールを行い、タヒチを最終目的地という旅行以外にも利用してもらえるような商品を旅行会社に提案している。これらは航空券のみの購入でもパッケージ商品とほぼ同じ価格帯ということもあり、問い合わせも多い。

また、タヒチの人々は、海外旅行へ頻繁に出かける国民ということから、タヒチから日本へのインバウンドにも取り組んでいる。タヒチの島は小さいがTNの総売上げの15%のシェアを占めており、これらの客層がこれまで日本へ来ていないことはもったいないと考えていた。特に年に2回はロサンゼルスへ渡航する人も多いことから、新たに日本行きのパッケージ商品を開発し、タヒチで販売を開始したところ、ユーロ高の影響もあり、大成功を収めることができた。年に7本を企画し、京都や大阪をはじめ、ディズニーランドや温泉、日本の文化を学ぶ旅などを商品として販売している。


最近は地域航空会社もアライアンスに加入する時代です。その考え方をお聞かせください

千野 TNは航空各社と多くの販売契約を締結している。欧米から日本を経由してタヒチに向かう旅客も多く、各種の契約によって料金を抑えることができる。日本航空(JL)やカンタス航空(QF)をはじめ、今年4月からはニュージーランド航空(NZ)ともコードシェアを開始しており、アライアンスに入らないことで実現可能なコードシェアも実施している。こうした背景から現在、様々な観点から検討していくとアライアンスに入る必要はないと本社は考えているだろう。


ありがとうございました。


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