観光活性化フォーラム
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現地レポート:イタリア? カラブリア編

  • 2007年5月16日
イタリアの新デスティネーション
海から引き揚げたブロンズ像と素朴な村々


〜郷土料理はイタリアでブームに〜

カラブリア州と聞いてピンと来なくても、中村俊輔選手が所属していた海外サッカークラブの「レッジーナ」は、ほとんどの日本人が知っているはず。その本拠地が、カラブリア州のレッジョ・カラブリアだ。当時は中村選手を見に一部の日本人が訪れていたというが、純粋に観光を目的にしたツアーは、残念ながら皆無に近い。確かに、日本人向けの観光が確立していないため、今のままでは物足りない感があるかもしれないが、注目すべき素材は十分にある。今年からカラブリア州政府観光局は日本人誘致に本腰を入れる意向で、受け入れ側の準備も始まっている。
(協力:イタリア政府観光局、アリタリア航空、カラブリア州政府観光局、カラブリア州ホテル協会)


ほぼ完璧な姿で残った紀元前5世紀のブロンズ像

 レッジョ・カラブリアでは必ず「大ギリシャ国立博物館」を訪れたい。ここに展示される2体の「リアチェの戦士像」は、これだけを目当てに来ても惜しくないほど、見ごたえのあるものだ。

 レッジョ・カラブリアは紀元前8世紀にギリシャの植民地として作られた街。リアチェの戦士像はギリシャ時代の紀元前5 世紀に作られたものとされている。その後、ローマの植民地となったとき、多くのギリシャ時代の遺跡が壊されてしまったという。しかし、リアチェの戦士像は1969年、レッジョ・カラブリアから車で10分ほどのヴィラ・サン・ジョバンニ沿岸の海底から引き揚げられたというドラマチックな登場に加え、当時のほぼ完璧な姿を留めているという点で、日本でも大いに注目を集めた。約190センチメートルの堂々とした像は「ミケランジェロでも成し得なかった、ギリシャ文明の最高峰」という賞賛は決して誇張ではなく、世界から彫刻家がデッサンをしにやってくるという。芸術関係者じゃなくても、つい見とれることだろう。

 レッジョ・カラブリアは先史時代から人が住んでおり、大ギリシャ博物館にはリアチェの戦士像のほか、先史時代以降の資料や遺跡が展示されている。旧石器時代などのものは日本のそれらを展示する博物館と遜色なく面白みに欠けるが、新石器時代の土器や青銅器時代の装飾品、そしてギリシャ時代のその他の発掘物はどれも状態が良く、興味深いものばかりだ。目玉はリアチェの戦士像だが、こちらの鑑賞もあわせて楽しみたい。

 ただし、博物館の中はほとんどがイタリア語で英語併記も少ない。さらに、ガイディングもイタリア人向けの内容を訳するだけでは、文化や歴史のバックグランドをあまり知らない日本人に面白みが伝わる可能性が少ないため、事前に打ち合わせなどをして内容を確認した方がいいだろう。














まだ見たことのない南イタリア、小さな素朴な村はリピーターに

 南イタリアの魅力といえば、昔ながらのイタリアの姿が残っていることではないだろうか。そうした風景やスローな暮らしぶりを求め、中部のトスカーナなどの人気が出ていると思うが、「もっと本当のイタリアの姿を見たい」という人には、半島最南部のカラブリアもお勧めだ。

 レッジョ・カラブリアから車で50分ほど北上した場所にある「セミナーラ」は陶器で有名な街。ここも例に漏れずギリシャの征服を受けており、15世紀頃まではギリシャ語が話されていたというユニークな街である。陶器作りも、ギリシャから伝わったという。

 そのためか、セミナーラの陶器は、イタリアにあるほかの“陶器の街”と呼ばれるところで作られたものとは趣が異なる。緑と茶色と黄色の青色の配色が特徴なのだが、それだけではない。セミナーラの陶器には2つの意味合いがあり、1つは生活用品としての利用、もう1つは魔よけの意味合いがあるのだ。強面の陶器の仮面は大きなもので1メートル以上のものがあり、昔は必ず一戸に1つ飾っていたという。また、細長い壷のような「バッバルータ」は、中で火を焚いて煙を出すことで魔よけの役割となっていた。イタリアでこうした呪術的な陶器が残るのは珍しく、この町だけなのだそうだ。以前はこの小さな街に30もの陶器工房があったというが、現在は5つのみ。工房には、陶器を作る土や焼き窯もある。

 もう一つ、今回訪れたのは、レッジョ・カラブリアから車で30分ほど北上した海岸沿いの漁師の町シッラ。ここもこじんまりとした街で、海岸沿いに家々が並ぶ。夜の訪問だったので分からなかったが、家々はパステルカラーで塗られており、昼間はかわいらしい街並みだという。見学時間はゆっくり歩いても往復40分程度。ところどころを街灯が照らす夜も十分な趣がある。

 シッラは夏、イタリア国内やドイツなどから、リゾート滞在で訪れる人が多い。ビーチの他に特に観光がないため、のんびり過ごしたり、小さな街の静かな雰囲気を散策するしか観光はないが、本当にイタリアが好きという人には、ここは魅力的な穴場になるかもしれない。

 このほか、カラブリアの小さな街では中世の石造りの城塞がある「ジェレーチェ」、ビサンチン教会の宝石といわれる「スティーロ」などが有名。また、セミナーレから1時間半ほど北上した「トロペア」は、カラブリアきってのビーチ・リゾート地。ホテル客室数が2500あり、夏は多くのドイツ人が訪れるという。日本人にはイタリアでビーチ・リゾートというイメージは少ないが、そうした素材があることも覚えておきたい。そして、これらの街を効率的に巡る場合、公共交通機関ではなかなか難しく、そこに旅行会社の手配力が生きることも、追加する。

 カラブリア州で日本人向けのツアーを組む場合、州単独ではビーチでのリゾート滞在以外は現状では難しく、周囲のカンパニア州、バジリカータ州、プーリア州、シチリア州などとの組み合わせによる周遊型が現実的だ。アクセスはレッジョ・カラブリアまたはラメツィア・テルメへの空路か、シチリアと組み合わせる場合はカターニア/ヴィラ・サン・ジョバンニ間のフェリーが考えられる。



カラブリア州の特産、唐辛子料理とベルガモット


 今、カラブリア州の郷土料理がイタリアで注目されている。

 その特徴は特産の唐辛子を多用すること。イタリアでも健康
に対する関心が高いのだ。
 
 チェラセッラという唐辛子にパン粉や野菜、スパイスを詰めた
「ペペロンチーノ・リピエーノ」は、ピリッと辛いけれど、
ついつい後を引く。また、「ドゥイア」は豚の首肉と唐辛子で
作られたペースト状のサラミで、これをパンにつけたり、
トマトソースに混ぜて、味のアクセントにもする。

 このほか、ハムやソーセージ、チーズなどにも唐辛子が
入っているものもある。


 また、カラブリアが世界に誇るものといえば、ベルガモット。
世界でも産地が限られ、希少なオレンジに似たこの果物は、
紅茶のアールグレイの香料としてもおなじみ。ベルガモット
製品ではパフュームやオイル、石鹸などが一般的だが、
おすすめはチョコレート・ソース。

 チョコレートにベルガモット、唐辛子を加えたソースで、これ
をアイスやスポンジケーキにかけて食べると絶品。このほか、
ベルガモットのリカーなどもある。

 なお、空港には唐辛子製品のお店とベルガモットのお店が
それぞれあり、品揃えは豊富。ただし、現在EUの空港では、
液体物の持込制限をしているので、受託手荷物に入れられる
ように、前日までの購入を勧めた方がいいだろう。

 お土産の買物は空港のみになる場合は、固形製品だけにし、フライトに間に合う時間に
必ずお店を空けてもらえるよう、事前に確認をした方が安心だ。