観光活性化フォーラム
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現地レポート:イタリア? シチリア編

  • 2007年5月16日
侵略の歴史が造る多様な文化
新観光スポット、テーマが豊富



〜組み合わせしだいで幾多のツアーが実現〜



シチリアのツアーは、ナポリやカプリ島、ポンペイ、アルベロベッロなどと組み合わせた「南イタリアツアー」となって商品化されているのが多勢を占めていたが、最近ではシチリアのみの商品も増えている。とはいえ、四国ほどの大きさの島には4つの世界遺産が分散されており、それらを求めてバスでぐるりと移動すれば、どうしても世界遺産巡りで終わってしまうのが現状だ。しかし、これらのハイライトの周囲には、幾多も侵略され“文明の十字路”といわれるシチリアらしい文化が溢れている。現状のツアーに加えることで魅力が深まる、そんなポイントを紹介する。
(協力:イタリア政府観光局、アリタリア航空、シチリア州政府観光局)











ゲートウェイのパレルモ&カターニアをゆっくり巡る

 シチリアのツアーの場合、ゲートウェイは空港および港のあるパレルモかカターニアになる。パレルモ・イン、カターニア・アウトやその逆など、島内を横断するツアーが一般的だ。

 パレルモは“文明の十字路”と呼ばれるシチリアの姿を、目の当たりに感じられる場所だ。観光のハイライトは、モザイクの美しいノルマン宮、カテドラルなど。なかでも郊外のモンレアーレにある大聖堂のモザイク装飾は有名で、ほとんどのツアーに組み込まれている。いずれも一つの建物内でローマ時代、アラブ時代など、各統治者の影響を受けた様式を垣間見ることができ、とても面白い。

 今年の旬の素材にあげられるのが「マッシモ劇場」での観劇。イタリアでは世界三大歌劇場であるミラノのスカラ座が有名だが、1857年に誕生したこの劇場は、ヨーロッパでパリ、ウィーンに次ぎ、3番目の大きさを誇る。「イタリアの春」の一環で今年6月に日本初公演をする予定で、これも呼び水になるはずだ。

 さて、このマッシモ劇場の付近はちょうど街の中心地。パレルモは東西で新市街と旧市街に分かれており、その分岐点になる。西側の新市街はイタリア統一運動を境に貴族たちが作った町で、今では高級ブティックやカフェなどが並ぶ都会的な印象だ。ツアーで利用するホテルが多いのも新市街。

 そこから旧市街に入ると、ガラリと雰囲気が変わる。道行く人の中にはアラブ系の人も増え、“文明の十字路”が肌で感じられる。

 旧市街でぜひ出かけて欲しいのが、市場。地元の生活を肌で体験でき、その町を知った気分になれる。スパイスやドライトマト、赤い粘土のようなトマトペーストなど、日本では入手しにくい本場の食材を見るだけでも面白いし、作り方を教えてもらえば、気分も高揚してくる。

 パレルモには大きな市場が2 つある。マッシモ劇場から徒歩10分ほどの「イル・カーポ」には露店が並ぶ道沿いに意外な名所もあり、パレルモで一番のバロック式教会といわれる「コンチェッツィオーネ教会」がある。内部は色とりどりのタイルのような装飾だが、それのほとんどが大理石によるもので一見の価値がある。市場を見ながらこんな観光ができるのも、通の心をくすぐるだろう。

 街歩きという点ではカターニアも捨てがたい。バスターミナルから徒歩5分ほどとアクセスが良い上に、品揃え豊富で活気がある。その他、ベッリーニの生家、修道院や教会が並ぶ“十字架を背負った通り”という名の「クロチフェリ通り」「カターニア大聖堂」などの歴史・文化的な見もの、エトナ山に続くように伸びる目抜き通り「エトナ大通り」でのショッピングなど、散策目的のバランスも良く、地図を片手に気軽に散策しやすい。


シラクーサ観光にラグーサ滞在で変化

 すでにホールセール商品にも組み込まれるようになった、シラクーサの考古学地区。シラクーサ観光には欠かせない存在であるが、少しアプローチを変えるなら遺跡だけでなく、街にも出かけてみよう。5つの地区に分かれるシラクーサの中でも、“うずらの卵”の愛称のあるオルティジア島は大型バスが進入禁止となっている、こじんまりとした地区だ。古い建物や家々が並ぶ街には、紀元前6世紀に作られた、イタリアで一番古いアポロ神殿跡などの遺跡がそれとなく残っており、わずかに残った窓から「ポルト・ピッコロ」という小さな港と市場の風景が垣間見られる。

 小さな島のコンパクトな町なので回りやすい反面、この街だけを目当てにするのは頼りないので、昼食をとるレストランへ行くために街を歩くという名分を作った方がいいだろう。シチリアにはナッツをペーストにしたソースで食べるパスタがあるが、島で一番といわれるレストラン「OSTERIA」には黄緑の「ピスタチオのカバテッリ」があり、美味だった。

 また、シラクーサから内陸へ1時間半ほどの場所に、バロック式の建物が並ぶ世界遺産の街・ラグーサがある。イタリア国内やヨーロッパから多くの観光客が訪れるが、日本のツアーには組み込まれていない新デスティネーションだ。ひょうたんを寝かしたような形のラグーサは、大きい方の新市街と小さい方の旧市街で構成されており、市街の外観を楽しむ散策を求めて人が訪れている。
 
もともと川に囲まれた岩山に立つラグーサは、旧市街を歩いてみると、坂が多くて岩山の上に建つ街を実感する。道路の両脇には小さな商店や土産物屋が並び、かわいらしい雰囲気だ。中心のドゥオーモ・サンジョルジョで解散し、自由散策もいいだろう。ただし、規模が小さいため、30分程度で十分。バロックの街並みだけでなく、街から見下ろす付近の山々などの景色も楽しみたい。

 一方、新市街はというと、徒歩観光の時間がなかったため車中からの印象になるが、生活用品を販売する商店の中に、思わず入ってみたくなるようなかわいらしいインテリアグッズや小物類を売る店を見かけた。ラグーサに2泊し、1日をシラクーサ観光に、もう半日をラグーサの旧市街・新市街散策に当てれば、今までと違った楽しみができるだろう。

 ラグーサのほかにも、シラクーサを核とするシチリア西南部にはバロックの街として有名なノートなど、世界遺産に登録された街群がある。ラグーサの代わりにこちらを組み込むプランも十分考えられる。また、シチリア東南部には世界遺産の神殿遺跡群の街・アグリジェント、内陸部にはモザイク画で有名なピアッツァ・アルメリーナや陶器の街・カルタジローネなど、見どころが豊富。組み込む旅程によって、滞在都市を変更すれば、それぞれ違った印象を与えられるツアーになるだろう。

シチリアの食もテーマの1つに


 グルメが観光目的の一つとなっているイタリアでも、
特にシチリアでは食をハイライトにしたツアー作りが
できる場所。各都市ではシチリアらしい食べ物を味
わうことができる。

 まずはパスタ。実は本場イタリアのなかでも、美味
しいといわれるのはシチリア産のパスタだとか。本土
と異なるシチリアの土壌が、コシのある小麦を育てる
のだそうだ。生産量が限られているため、本土には
ほとんど流通されない。シチリアでもスーパーのような
量販店ではなく、小さな商店の方が見つけやすい。袋の
裏面の「PRODOTTO」のところに「TP」(トラパニ)また
は「PA」(パレルモ)と書いてあるのが目印だ。

 また、パンやスイーツなどの甘いお菓子も美味。
やわらかいクロワッサンのようなパン「コルネット」や
ブリオッシュに、チョコやクリーム、ジャムを絞って食べる。
 クリームには名物のチーズやピスタチオ風味のものもあり、
彩りも鮮やか。甘いものの好きな女性なら特に、目移り
してしまうに違いない。