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主要5社・上期ホールセール商品出揃う

  • 2007年3月17日
パッケージ本来の姿を見直し旅行会社の実力を訴求
〜注目の団塊世代へのアプローチはいかに〜

 06年度は、ほとんどのホールセラーが前年実績を上回り、今年は業界として上向きの環境にある。これを受け、07年度はジェイティービー(JTB)が3.4%増の141万人を目標とするほか、それぞれ5%増以上を目指すなど、各社とも強気の目標を立てている(表)。一方で、航空座席の供給は、航空会社の路線減少や機材小型化などの動きで減少傾向にある。大量送客が使命だったホールセラーにも収益性の向上が急務となり、特に今上期はこれら高収益商品を中心にした戦略が目立つ。当然、リテーラーにとっても、これらの商品の対応は生命線となるはずだ。各商品の傾向をまとめた。









今年の課題は高収益への対応

 今年度はダイナミックパッケージの本格展開と、航空会社の供給量削減の影響もあり、ホールセラーは旅行需要の取り込みに加え、高収益商品による収益確保の課題に直面している。ただし、今年は史上最大規模の日本人出国者数が予測されている。今までも何度か多数の出国予測がされていたが、団塊世代の大量退職が始まる今年は、その数の質が変わってくるはずで、むしろこれらの課題を乗り切れば、9.11以降の不振を取り戻す絶好のチャンスになるともいえる。

 では、これら高収益商品の需要はどれくらいあると考えられるだろうか。JTBは商品発表の席で「ルックの約140万人のうち、110万人が飛行機やホテル、食事や観光など、旅行の構成要因を選べるオンデマンド型商品」(代表取締役社長・伊藤正人氏)というように、ホールセラーの利幅の多い商品を求める旅行者のシェアは、約2割強にしか満たないのが現状だ。ただし、親会社の路線戦略の影響を受け、既に供給減少への対応を余儀なくされているジャルパックは、06年度の実績は厳しい結果となったものの「供給量は15%減となったが、収入は7%減。06年度上期には営業利益8億円を計上しており、年度でも“水面上”に出る」(代表取締役・梶明彦氏)と、高収益体制へ変化しつつある兆候を見せる。

 07年度に、前年比7%増の58万人を見込む近畿日本ツーリスト(KNT)は上期、平均客単価を19万2000円と前年より1.8%増加させた。これは、為替相場でユーロや豪ドルに対して円安になっていること、原油高騰による航空運賃の値上がりを反映させたものだが、本来、自助努力で賄えきれないものは価格に反映させるべきもの。これも収益確保に向けた歓迎すべき傾向といえるだろう。

焦点は“団塊世代”

 上期商品で各社ともポイントとして最も強調したのが、団塊世代向けの商品や施策だ。日本旅行はシニア・団塊世代向けに展開していた「喝采の旅」やヨーロッパの「大好き」シリーズを、今年は「遥かなるヨーロッパ」へと進化。こだわりのこの世代の知的好奇心を満たすため、「旬」「伝統のイベント・祭り」、音楽や絵画などの「芸術」をキーワードに、その時だけの限定性の高いツアーを提案していく。

 商品の中身だけでなく、団塊世代の特性に目をつけたのはJTB。時間に余裕の出るこの世代を長期旅行へ促し、ハワイとオーストラリアで「ロングバケーション」として一般的な期間よりさらに3日、4日ほど長い旅行を提案したほか、“仕事からの卒業旅行”として「ヨーロッパ90日間」も設定。30日間の商品を3つ造成し、それらを組み合わせて90日間の旅行を可能にした商品で、新しい旅行を提案する。

 商品のみならず、ユニークな販売施策の取り組みも見られる。KNTでは「いい夫婦の日・リピートキャンペーン」とし、今年新設した「いい夫婦の日・添乗員同行シリーズ」に4月から10月までの期間で2回以上参加した人には、2回目以降の旅行代金を割り引く。団塊世代のリピートを促し、囲い込みを強化する。

 ジャルパックも団塊向けに各種割引や宅配などの特典を盛り込んだ「シニアパッケージ60」を継続展開。さらに、出発前に現地在住スタッフにメールで問合せができる「教えて!メールサービス」やシニア向け専用ダイヤル「現地シニアダイヤル」などを加え、安全・安心を意識した値段以外のサービスにも注力した。

 また、ANAセールスも団塊に向けたアプローチを強化し、早期予約特典のほか、上期の期首商品全般で、100歳以上で参加の夫婦にフォトフレームをプレゼント。団塊夫婦にお勧めの「出かけよう夫婦の旅推奨商品」に参加した夫婦には、ワインやミールクーポンなどの“もてなし”を提供する。

パッケージの利点を抜本改革

 FIT化に対応すべく、パッケージの良さを打ち出す施策が増えたのも、昨今の流れ。KNTは「自由自在・わがままかなうホリデイ」をキーワードに上期商品を展開。また、ANAセールスは「安心・満足への更なる取り組み」を掲げ、旅行中のサポートを充実させた。日本旅行はパッケージツアーそのものの存在価値が求められている時代だとして、上期商品で「新たな価値の提案」を目指し、ジャルパックのアイルでは「魅力の追及」をテーマに展開。パリの「オルセー美術館」の休館日を借り切るなど、個人旅行では体験できない付加価値を追加した商品を投入している。

 ただし、商品の中身で勝負とはいえ、無形商品の旅行でその差を表すのは難しい。その点で今回新しい試みをしたのがJTBだ。消費者の目にも判るように、盛り込んだパッケージの価値自体を説明するパンフレットを作成したのだ。
 JTBでは今回、パッケージツアーを全市場に正対できる「スーパーパッケージ」として展開。パッケージの真価を追求すべく、キーワードである「快適」をベースにした12項目の「快適宣言」を掲げ、商品をてこ入れした。旅先でベテラン添乗員の判断により、食事に旬の素材を入れたメニューを追加するほか、業界で初めて旅行者自身によるインターネットでの事前座席指定を可能にするなど(いずれも一部コース)、パッケージに参加することでもたらされる快適性を12の項目で訴求し、他社商品や手配旅行との違いを鮮明に打ち出した。ちなみに、このパンフレットはカウンターに平積みし、商品説明時に積極的に活用してもらう考えだ。

ハネムーン・挙式は一新

 上期に必ず重要市場のひとつとして上がるのが、ハネムーンとウェディング。今回もKNTとジャルパックがこの市場にも力を入れている。ジャルパックではハネムーン特典「ハッピーハネムーン」特典では、早期割引を分かりやすくするため、60日前までのものに一本化。全方面で「お帰りハイヤーサービス」または「JALギフト券」をプレゼントするほか、ハワイではJALエグゼクティブクラスの追加代金を、一律5万円割り引く。また、新たにグアムで「ベビースマイル・ウェディング」を新設した。いわゆる“できちゃった婚”で出産後に挙式する“子連れ婚”を市場と認識して展開する。

 一方、KNTではハネムーン商品として「ロマンチックジャーニー」を各方面で新設。ペアシート確約や2人催行保証、メモリアルディナーなど、ハネムーンの必要要素を押さえたデラックスな内容に仕上げた。このほか、4月から11月は「ホリデイ海外ウェディング・オンリーワンキャンペーン」を実施。ホリデイのウェディングコースに申し込んだカップルに、2人の写真をその商品のパンフレットの表紙に印刷した「世界でたった一冊だけのパンフレット」として、海外挙式の記念となるプレゼントを贈る。