JTB、日本総研と研究会立ち上げ、ロングステイは国内・海外のマーケに違い

  • 2005年10月25日
 ジェイティービーは、シンクタンクの日本総合研究所と「新しい地域戦略とビジネスモデルに関する研究会」を共同で設立、このほど地方自治体などの担当者ら約120名を集め設立記念フォーラムを開催した。基調講演に立った慶應義塾大学経済学部教授・内閣府特命顧問の島田晴雄氏は、人口減少に直面する2007年問題では、特に地方の人口減が推測され、税金投入や各種の景気対策などの有効性は薄れ、大都市から地方へ人を動かすことの重要性を指摘、「理論と実践が需要だ」と参加者に説いた。特に、東京圏の人々をどのように喚起し、地方へ導くかという実例を北海道の取組み、また自らの体験などを交えながら話を進め、「高度成長時の大型送客と装置産業から『観光』のモデルを転換。東京を起点に考え、空気、水、静けさという地域が持つ素晴らしい観光資源を発信していくことが重要だ」と今後の研究会の成果にも期待を示した。
 また、取組みの実例紹介として、北海道知事政策部主査の大山慎介氏が道庁が旗振り役を勤める「北の大地への移住促進事業」を説明。道庁として首都圏を対象とした調査を基に、「プチふるさと」、「プチ移住」などと表現する1ヶ月程度の短期的な地域コミュニティとのふれあいを紹介。実証実験を進めている過程の一部を紹介。ただし、「消費者は(北海道という)1ヶ所だけではマーケットとは認めない。広く自治体同士が連携し、消費者に多くのオプションを与え、選べる環境をつくることが重要」などという考えを述べ、研究会で活発な横の活動も促した。

▽JTBのロングステイへの考え方
 JTB常務取締役の清水愼一氏は会の冒頭、研究会の設立に関ったことに触れ、「2007年問題もあるが、会社として掲げる交流文化産業を目指すには、地域との交流が重要。どのような手伝いが出来るかを実践する場」などと語り、様々なパートナーとの連携を重視する考えを示した。
 JTBは先ごろ、本社事業創造本部にロングステイ事業推進室、東京・日本橋にはJTBロングステイプラザを設置したばかり。現在、実証実験を進める北海道についても、首都圏から北海道へ1ヶ月程度の「プチ移住」を促しているところだ。清水氏はこうした動きについて、「国内(でのロングステイ)は、受入れの問題があり、今は地方とネットワークづくりの時期」と語り、今後は北海道をはじめとした国内でのロングステイの場所を増やし、消費者へ選択肢を揃える考えだ。特に、受入れではホテルではなく住宅の確保、地域コミュニティとの関係から、消費者が満足のいく滞在が出来る形を目指す。
 JTBが進めるロングステイ事業は、海外、国内共に取扱う方向。これについて、清水氏はターゲットとするマーケット、さらに旅行・移動の目的が違うとも言及。マーケットは国内が東京・大阪・名古屋などの大都市圏が中心で、海外は地域というよりも観光から一歩踏み出した体験や目的が重要になるという。今後、商品としての開発を進めなければならない国内について、共同で取組む北海道以外に、「地方のリゾート地は1泊2日などの観光需要では持たない」と言い、ロングステイに対応できる施設もあり、「滞在プログラムというビジネスと地方の発展を組み合わせ、旅行業(JTB)としてビジネスにする」と意気込みも語った。
 なお、JTBでは国内のロングステイ、地域交流として来年度から全国の国立大学とタイアップして交流型の公開講座を実施する。これは大学が通常開設する地域向けの公開講座を地域外の方にも広げ、生涯学習、地域学習の2講座を提供。特に、地域学習は地域固有の歴史や文化などを学べるという利点が地域外の参加者にあり、地域からの参加者は地域外の人々とのネットワークを形成できる。こうした講座の延長として学習から農業体験などの実践の場を設け、消費者にきっかけを提供、さらにロングステイ、移住へと繋げていく考え。