観光活性化フォーラム
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TIJ、初の産学連携セミナー開催、ツーリズム産業を担う人材育成に期待

  • 2005年2月18日
 日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)は2月18日、一橋大学大学院商学研究科とともに、産学連携オープンセミナー「Tourism: A Future Industry ―ツーリズム産業の可能性―」を開催した。同セミナーはツーリズム産業への就職を希望する学生を対象に、産業の重要性や将来性を理解してもらうのが目的。約410人の学生が参加した。このようなセミナーの開催は業界で初めてのこと。
 セミナーにはジェイティービー代表取締役会長の舩山龍ニ氏、日本経済団体連合会の観光委員長・江頭邦雄氏(味の素代表取締役社長)、東日本旅客鉄道株式会社取締役会長・松田昌士氏、日本航空(JL)代表取締役グループCEO・兼子勲氏など業界を代表する企業のトップのほか、一橋大学大学院商学研究科長の山内弘隆氏、東洋大学経済学部助教授の白石真澄氏が登場し、講演やパネルディスカッションを実施。挨拶で舩山氏が「今は世界中で7億6000万人もの人が国を行き交う大交流時代。時代に乗るには若い人の力が大切」と述べ、今後の産業を担う学生への期待を表した。参加した学生からは「トップの話を直接聞けるのが嬉しい。今後も開催して欲しい」などの感想が聞かれた。

▽セミナーはインバウンドに集中、学生からの質問も

 基調講演、及びパネルディスカッションでは、インバウンドの話が中心となった。江頭氏は統計資料を用い、現状と振興の目的を説明。振興には5W3Hでまとめた統一的なデータ整備と、行政区域や省庁間を超えた広域的・横断的な連携、日本の強みを活かした素材開発など民間の努力とホスピタリティの精神が必要と述べた。松田氏は「旅行の楽しみは計画する時から始まるが、日本には外国人向けに発信する情報がほとんどない」として、多方面の情報を作り上げるのが重要と訴求。来年から着工する東京駅のリニューアル工事の際、JTBやJLなどの担当者が1人ずつ駐在して共同で外国人観光客を案内するような、「国際観光情報センター」を作りたいとの考えを明らかにした。
 パネルディスカッションでは学生との交流を狙い、パネラーが学生に問い掛ける場面もあった。学生からは「海外では日本の観光に関するテレビCMが無かった。メディア戦略はどうなっているか」、「日本に外国人が来ない理由の一つに物価の高さがあるが、割引制度はあるか」など、具体的な質問があがった。

▽今後も産学連携は拡大へ
 
 今回のセミナーはTIJが昨年、一橋大学大学院商学研究科と産学連携を目的に提携した事業の一環で実施したもの。現在、両者は観光産業の現状に即した教育をするための研究をすすめており、4月には同大学内に「ツーリズム産業論」を開設。大学の研究結果のほか、業界トップによる講演や授業を展開するという。このほかセミナーでは、各出席者が観光関連の学科の設立や産学連携に取り組む大学が増えていることに触れ、さらなる多くの企業と大学が交流し、ツーリズム産業に有益な人材育成が活性化するよう、期待を述べた。また、松田氏は講演の中で、北海道大学に「観光センター大学院」の開設に尽力したことを述べ、2006年度からオープンする目処が経ったことを明らかにした。