プーケット、施設は回復進むも旅客動向鈍く、復活に向け「来月が鍵」

  • 2005年1月26日
 スマトラ沖地震・津波の発生から1ヶ月が過ぎたが、このほど日本旅行業協会理事長の金子賢太郎氏を団長とするタイ・プーケット現地視察団が現状等を報告した。この視察はプーケット島に限定し、被災地を含めた全島と現地の観光関係者との懇談が目的。報告によると、視察したビーチ10ヶ所のうち津波当時の被災状況も異なれば、復旧の度合いもそれぞれだが、全体としては観光施設等の面では回復が進んでいるのが現状のようだ。インフラとしての道路は空港からホテル等への障害も無く、廃棄物等の津波直後の痕跡は見当たらず、ビーチにおいてもゴミ等はなく、逆に「津波以前よりきれいになっている」との説明を受けるほど。ただし、報道でも被害が大きく伝えられているパトン・ビーチについては海岸沿いのタウィーウォン・ロードの賑わいは津波前までとはいかないが、「修繕に励む槌音が聞こえる」(金子理事長)ようだ。その代わり、海岸から50メートルほど奥に入るソン・ロイ・ピー・ロードは以前の賑わいを取り戻している。
 ただし、旅行客の動向はパッタリと止まっている模様。プーケット島内のホテル全体の稼働率は平均で3%から7%と1桁台と観光客の動向は日本だけでなく、世界的に壊滅的。ホテルの復旧状況は場所によってまちまちだが、受け入れ態勢にあるホテルでは「これが長引き従業員の解雇に繋がらないような状況にしたい」と心配し、今後の回復に向けた意気込みも聞かれる。また、現地からは「募金や基金は要らないが、観光客に来て欲しい」という訴えもあったという。
 こうした状況を受け、視察団と現地観光関係者との会合において、日本側から(1)復旧状況を全般的、統一的に情報提供し、定期的な更新を行うこと、(2)インフラの復旧だけでなく、再度の万一の事態に備えた避難場所への誘導等の従業員教育等のアピール、(3)公的機関からの復興に関するPR活動、を提案した。現地側から(2)などについての賛同があったほか、(3)については近々に一面広告などを展開する予定だと言う。

 視察団と同行したタイ政府観光庁(TAT)マーケティングマネジャーの藤村喜章氏は観光地の復活に向けて「来月が鍵になる」との見方を示す。これは、国土交通省の調査団をはじめ、メディア、旅行会社向けのFAMツアーで現状を各自が確認することで、観光施設やインフラなど現状認識の深まりが重要となることを示唆したもの。藤村氏は「パトンについては2ヶ月程度をかけて、店舗等を含めた復旧が続く」としており、こうした部分も加味した「完全復旧」の直後から、実際の送客に繋がるかの重要な時期を迎える。これまで、日本市場については「復活が遅い」と事あるごとに指摘されてきたが、9.11、バリ、トルコ、イラク戦争、SARSと数度の経験を経たリカバリーに対する市場の力量が試されることとなる。