移動を"コスト"から"投資"へ――フィンエアー「Fly for Innovation」、旅行会社と探る需要創出の可能性 [PR]

日本企業の課題を、フィンランドで学ぶ

 フィンエアーがフィンランドでの学びとして挙げるのは、「サステナビリティ」「デジタル&イノベーション」「DEIB(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包摂性、Belonging=帰属意識)」「ウェルビーイング&教育」の4領域だ。人的資本経営やサステナビリティなど、日本企業が向き合う課題とフィンランドでの実践を結びつけようとしている。

 現地での視察プログラムについて紹介したのが、株式会社クオニイツムラーレジャパンの村松真人氏だ。村松氏によると、コロナ禍以前の北欧視察では福祉や環境に配慮した都市開発などが中心だったが、その後はSDGsやサステナビリティ、IT・ICT、教育などへ関心が広がった。さらに直近では「SDGs」から「ウェルビーイング」へと関心が移りつつあるという。

 こうしたニーズに応じ、企業や学校、自治体などを対象に、イノベーションや教育、サステナビリティなどをテーマとした視察が組まれている。重要なのは、先進的な施設を訪れること自体ではなく、日本側が抱える課題に応じて、現地で何を学ぶかだ。

成功だけでなく「失敗」から学ぶ

 フィンランドの教育について、木下氏は、かつて学力やIT・デジタルを重視してきた一方、近年は改めて人と人とのコミュニケーションを大切にする方向へ移りつつあると説明した。坂野氏も2011年にヘルシンキ大学へ留学した経験から、聞くだけで終わる講義はほとんどなく、少人数の授業で一人ひとりが自分の考えを求められ、それぞれの意見が尊重されていたと振り返った。

 その一方で、フィンランドの教育が常に成功してきたわけではないともいう。OECD(経済協力開発機構)が実施する国際的な学習到達度調査「PISA(Programme for International Student Assessment)」でかつてトップ水準にあった順位が低下したことについても、デジタル化を含むさまざまな要因を振り返りながら、現在は課題を検証し、立て直しを進めているという。

 坂野氏は現在の教育視察について、フィンランドの教育が優れているから成功例だけを見に行くのではなく、「失敗も成功も全部ひっくるめて、今考えていることを学ぶ」ものになっていると説明。「失敗談もすごく正直に話してくれる」ことも、フィンランド視察の価値ではないかと話した。

「学び」を旅行需要に――旅行会社はどう商品化するか

 では、フィンランドでの「学び」を、旅行会社は実際にどのような旅行需要へつなげられるのか。後半の「Fly for Innovation パネルディスカッション」では、その先行事例として、日本旅行がこれまで取り組んできたフィンランド視察が紹介された。

 パネルには、日本旅行の山口圭介氏、鈴木純也氏、クオニイツムラーレジャパンの村松氏、フィンエアーの坂野氏が登壇。日本旅行がフィンランド視察に取り組むようになった経緯から、実際の商品造成、企業・自治体・教育機関への展開まで、旅行会社の立場からフィンランドでの「学び」を旅行需要につなげる可能性を議論した。

 山口氏によると、取り組みの契機となったのはコロナ禍だった。当時所属していたレジャー・パッケージ部門で旅行需要が止まるなか、フィンランドについて調べるうちに、SDGsや幸福度など、日本が抱える社会課題を考えるヒントが多く存在すると感じたという。

 そこで社内プロジェクトを立ち上げ、顧客に提案する前に「まず自分たちが体験しないと説明できない」と、社員15名で現地を視察した。ヘルシンキ中央図書館「Oodi」や職業訓練校、子育て支援の「ネウボラ」などを訪れ、「行ってみて初めて色々な気づきがあった」と山口氏。当初は自治体向けを想定していたが、実際に現地を見ることで、教育機関や企業にも提案できると考えるようになったという。

 こうして得た知見を、日本旅行は実際の旅行商品へと落とし込んでいる。鈴木氏は、Visit Finland(フィンランド政府観光局)とともに「サステナブル・トラベル・フィンランド」の考え方を日本国内に広げる取り組みを進めるなかで、日本の自治体や学校、企業が抱える課題を起点に、フィンランドでどのような解決のヒントを得られるかを考え、視察先を組み立てていると説明した。

 また、「学び」だけでは参加のハードルも上がることから、現地の人々との交流や暮らしに触れる体験、オーロラなどの観光要素も組み合わせる。実際に「サウナ+企業視察」、「オーロラ+企業視察」といった研修旅行を手がけているという。

 顧客の課題を起点に「何をフィンランドで学ぶか」を考え、観光や交流と組み合わせて旅行として形にする。日本旅行の取り組みは、その具体例といえる。

» 次ページ:「発生した需要を手配する」から「新たな価値を提案する」へ