木村観光庁長官、初会見で政策方針示す 国内・海外旅行の振興加速、旅行業界と「密接に連携」

 8月7日付で就任した観光庁の木村典央長官は8月19日、就任後初となる定例会見に臨み、2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、訪日旅行消費額15兆円とする政府目標の達成に向け、インバウンド市場の多様化や地方誘客、消費単価の向上などを進める方針を示した。

 また、2025年7月に新設された旅行振興担当参事官について、国内旅行とアウトバウンドの振興で「一定の成果が出ている」と評価。第5次観光立国推進基本計画で「国内交流・アウトバウンド拡大」が政策の3本柱の一つに位置付けられたことを踏まえ、「より一層、その振興に向けた取り組みを加速する」とし、旅行業界との連携に期待を示した。

就任後初の定例会見に臨む木村典央観光庁長官=8月19日、国土交通省

「観光を戦略産業に」、地方の交通ネットワーク強化も重視

 木村長官は就任にあたり、前任の村田茂樹長官の下で進めてきた政策を引き継ぎ、「観光を我が国の戦略産業としてさらに発展させる」と表明した。

 具体的には、2030年のインバウンド目標に向けた地方誘客の一層の促進、とりわけ交通ネットワークの機能強化を挙げたほか、混雑やマナー違反、民泊の適切な運営確保などへの対応、市場の多様化に向けた戦略的な訪日プロモーション、観光コンテンツの造成、消費単価向上、国内交流・アウトバウンド拡大、DXや省力化投資による観光産業の生産性向上を重点施策として示した。

 地方への誘客については、観光コンテンツだけでなく「観光の足」の確保が重要との認識を示し、バスやタクシーにも大きな期待を寄せた。自身も国土交通省で地域交通政策やバス・タクシー政策に携わった経験があることから、関係部局や業界と連携し、主要交通結節点から観光地へのアクセスや地域内移動手段の確保に取り組む考えを示した。

宿泊産業は「収益性」重視、民泊は適正運営を前提に

 観光産業政策では、人手不足への対応を重要課題として挙げた。木村長官は、宿泊産業で従業員の給与水準や待遇を引き上げるには、まず事業者の収益性を高め、その原資を確保する必要があるとの考えを示した。外国人を含む人材採用、省力化設備への投資、地域内で共同利用する設備、DXを活用した課題解決モデルなどを支援する方針で、第5次基本計画では初めて宿泊産業の収益性に関する目標も設定したと説明した。

 民泊については、インバウンドの受け皿や多様な宿泊機会を提供する役割を認める一方、「地域の生活環境などを損なわずに運営されることが大前提」と強調。閑静な住宅街や学校周辺など、地域の実情に応じて営業を認めない「0日規制」を可能とする運用も含め、無届け営業や騒音、ごみ出しなどの問題への対応を進める考えを示した。

旅行振興担当参事官1年、「国内・アウトバウンドとも重要」

 旅行業界にとって注目されるのが、旅行振興政策の位置付けだ。観光庁は2025年7月、国内・海外旅行の促進や観光人材の確保・育成を担う「参事官(旅行振興)」を新設した。観光庁は設置時から、回復の遅れる日本人海外旅行の需要喚起を主要課題の一つとしてきた。

 設置から約1年を迎えたことについて、木村長官は、国内旅行について「観光消費の7割以上を占め、日本の文化、風土の魅力を再認識するきっかけにもなる重要な分野」と説明。アウトバウンドも、国際感覚や国際相互理解の向上だけでなく、インバウンドとの相互作用による需要創出を通じて、日本と海外を結ぶ航空・国際交通ネットワークの維持、拡充につながる重要な分野と位置付けた。

 旅行振興担当参事官の設置については、国内旅行とアウトバウンドを政策としてしっかり進める姿勢を関係者に示す効果があったとの認識を表明。今後について、「旅行業関係者の方々の取り組みが大変重要」とし、「関係者の方々と密接に連携して施策を進めていきたい」と旅行業界に協力を求めた。

 第5次基本計画では、2030年の日本人海外旅行者数について、過去最高だった2019年の2008万人を超えることを目標としている。観光庁はパスポート手数料の引き下げなども含め、アウトバウンド拡大を政策課題として明確に位置付けている。

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