【南アフリカ視察・後編】ケープタウンの奥深さを探る ワインランドから喜望峰、ロベン島まで

世界遺産ロベン島、当事者の証言で学ぶ歴史

 ケープタウン滞在で最も印象に残った場所が、世界遺産ロベン島だった。

 V&Aウォーターフロントからフェリーで約30~45分のロベン島は、ネルソン・マンデラ元大統領をはじめ、多くの反アパルトヘイト運動家が収監された刑務所として知られる。現在は世界遺産として公開され、南アフリカの歴史を学ぶ重要な観光地となっている。

(左)ロベン島へ向かうフェリーから望むテーブルマウンテン。(右)刑務所入口には、アパルトヘイト時代の当局が掲げた「WE SERVE WITH PRIDE」の文字が現在も残る。

 島内見学で特徴的なのが、ガイドの多くを元政治犯が務めていることだ。今回案内を担当したガイドも、自身がロベン島に収監されていた経験を持つ人物だった。歴史を学ぶだけではなく、当事者の言葉で当時の出来事を聞けることは、他にはない体験である。

自身の収監経験を交えながらロベン島の歴史を伝える元政治犯のガイド。

 まず案内されたのが、ネルソン・マンデラ氏らが労働を強いられた石灰採石場だ。強い日差しが白い石灰に反射する過酷な環境で長時間の作業が続き、多くの収容者が視力に影響を受けたとされる。現在も採石場には当時の姿が残され、南アフリカの民主化の歴史を象徴する場所の一つとなっている。

ネルソン・マンデラ氏ら政治犯が労働を強いられた石灰採石場。白い石灰に強い日差しが反射する過酷な環境だった。

 その後、政治犯が収容された刑務所施設や、マンデラ氏が約18年間を過ごした独房を見学した。元政治犯のガイドは、自身の収監経験を交えながら当時の生活やアパルトヘイト下の実情を語り、参加者は「当事者から聞く」貴重な機会となった。

(左)ネルソン・マンデラ氏が収監生活を送った独房。(右)政治犯らが収容されていた刑務所施設の内部。

 また、政治指導者ロバート・ソブクウェ氏が隔離されていた建物も残されている。囚人たちは限られた環境の中でも互いに知識を教え合い、学びや議論を重ねながら過酷な収容生活を送っていたという。

アパルトヘイト下で、収容者の人種区分によって食事の内容や支給量に差が設けられていたことを示す資料。

 ロベン島は、アパルトヘイトという負の歴史を伝えるだけでなく、民主化への歩みを今に伝える場所でもある。当事者の証言を通して見学することで、展示や史跡だけでは伝わりにくい歴史の重みを実感した。

 南アフリカ観光局も「MADIBA's JOURNEY」としてマンデラ氏ゆかりの地を巡る旅を文化観光の重要なテーマとして発信しており、ロベン島を含む計32の施設・場所を紹介している。ケープタウンでは、絶景やワインだけでなく、南アフリカの歴史や民主化への歩みに触れられることも、大きな魅力の一つだ。

景観だけではない「滞在する南アフリカ」

 ケープタウン周辺を巡るポストツアーでは、テーブルマウンテンの絶景からワインランド、喜望峰、ペンギン、ロベン島まで、それぞれ異なる魅力を持つ観光素材を体験した。さらにホテルやレストランなど観光インフラも充実しており、長期滞在や周遊旅行にも対応できる環境が整っていることを実感した。

 前編で紹介したダーバンが海洋リゾートや多文化を楽しむ都市であるのに対し、ケープタウンでは自然、歴史、食文化、ワインといった多彩な魅力がコンパクトに集まる。同じ南アフリカでも都市ごとに異なる個性があり、それぞれを組み合わせることで、旅の楽しみ方はさらに広がる。現地を巡る中で見えてきたのは、多彩な自然や歴史、食文化が調和する、奥行きのある南アフリカの姿だった。