「Get beneath the surface(日本の奥深くへ)」が導く、これからの日本旅行-インサイドジャパン創業者に聞く
日本専門の海外向けツアーオペレーター、InsideJapan Toursは2000年の創業から25年余りにわたり、日本旅行を手掛けてきた。共同創業者であるサイモン・キング氏とアラステア・ドネリー氏に、英国ブリストルの本社で話を聞いた。創業以来掲げてきたコンセプト「Get beneath the surface(直訳:表面の下へ。日本の奥深くに触れる旅)」が、オーバーツーリズムが課題となる今、どのような意味を持つのか。
ドネリー氏(以下敬称略) 私とサイモンは1994年、オックスフォード大学のキーブル・カレッジで出会いました。大学と愛知県豊田市の縁があり、卒業後、私たちは英語教師として日本に渡りました。サイモンが1997年、私が1998年です。当時の私たちは、日本についてほとんど何も知りませんでした。私は明治期の日本史を学んでいましたが、知識として日本を知ることと、実際に暮らすことはまったく違いました。活気とエネルギーに満ちた、別世界に足を踏み入れたような感覚でした。
キング氏(以下敬称略) 日本滞在中は各地を旅して回りました。豊田に住んでいた頃に知り合った友人の一人とは今も付き合いが続いていて、現在は当社日本法人のマネージングディレクターを務めています。2000年、日本での仕事を終えて、香港・中国を経由し、シベリア鉄道でロシアを抜けて英国へ帰国したのですが、その道中、ロシアで参加した「Beetroot Bus」という小規模グループツアーがとても楽しくて、日本でも同じようなツアーを作れないかと考えるようになったんです。
ドネリー 2000年当時、日本を訪れる外国人旅行者は年間約480万人ほどでした。昨年は4,000万人を超えていますから、大きな違いです。市場の主流は、大手旅行会社が主催する、旗を持ったガイドについて大型バスで主要観光地を巡り、品川の大型ホテルに宿泊するような商品でした。
私たちが持っていたのは、日本で暮らしていた3年半の間に自分たち自身が実際に楽しんでいたこと――登山、カラオケ、居酒屋、温泉、相撲観戦――それを旅程に落とし込むというアイデアでした。2001年2月、ロンドンのトラベルショーで旅行会社としてスタートを切り、その夏に最初のツアーを催行しました。ここから生まれたのが、今も色褪せないコンセプト「Get beneath the surface」です。その後、2000年代には「Experiential Travel(体験型旅行)」という言葉が業界で使われるようになりましたが、私たちはあえてその言葉は使いませんでした。今は「Cultural Adventure (カルチュラル・アドベンチャー)」と呼んでいます。
ドネリー 日本を訪れる人には二種類あると考えています。旅行そのものが好きで、その延長で「まだ行ったことがない国」として日本を選ぶ人。そしてもう一つは、日本そのものが好きで、日本に行きたい人です。私たちが目指してきたのは後者に向けたブランドです。当社のサイトを訪れた人に「ここは自分たちの居場所だ、この人たちは日本を理解し、日本を愛している」と感じてもらうこと。それが私たちのアイデンティティの核心にある部分です。
ドネリー 日本の食や文化、そこで得られる体験、そしてホスピタリティに旅行者が魅力を感じる点は、今も変わっていません。ただ、日本に対する「認知度」はこの25年で桁違いに上がりました。25年前、日本はある意味「秘密の場所」でした。知っているのはごく一部の人間だけで、まるでその「秘密」を知る仲間を一人ずつ増やしていくような感覚があったんです。今はまったく違います。背景にあるのはゲームやアニメの普及、映画『千と千尋の神隠し』のアカデミー賞受賞、日本食レストランの世界的な広がり、ラグビーワールドカップや東京五輪といった大型イベント、そしてSNSの影響です。
キング 一方で新たな課題も生まれています。認知度は上がりましたが、旅行者は同じ場所に集中してしまっている。京都、特に祇園や清水寺、宮島といった場所への訪問者数は激増しました。一方で東北の一部地域や北アルプスの乗鞍高原などは、ほとんど変化がありません。
