豪州の準公的機関「ATDW」が面白い。国内の観光素材のデータを一元管理・標準化し、業者と観光産業全体の競争力を向上する仕組みとは?

 5月に南オーストラリア州アデレードで開催された旅行商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE26)」を取材した際、「Australian Tourism Data Warehouse(ATDW)」という組織の話を初めて聞くことができた。「観光データ倉庫」という変わった名前だが、その役割はまさにデータの倉庫。オーストラリアの観光を支える「縁の下の力持ち」なATDWについて紹介したい。

ATDWロゴ

11カテゴリーのデータを標準化、約300サイトへ配信

 ATDWが設立されたのは2001年。旅行流通のオンライン化の大波を前に、国内の観光業者が取り残されないようにすることを目的に立ち上げられており、オーストラリア政府観光局(TA)と各州・テリトリーの政府観光局が共同で所有、運営。約6万5000件の観光素材がデータとして登録され、TAや各州の観光局、OTA、航空会社など約300のウェブサイトに配信されている。

 仕組みとしてはこうだ。宿泊施設、アトラクション、イベント、ツアー、フード&ドリンク(飲食施設や料理教室など)、輸送サービス、一般サービス(ATMや薬局、スーパーなど)、インフォメーションセンター、旅程など11のカテゴリについて、それぞれに共通のフォーマットに基づいたデータを収集することで、カテゴリ内のデータを標準化。そしてそれを消費者が目にする観光関連サイトにAPIで提供する。

 この仕組みの理想像は、オーストラリアのすべての観光情報がATDWで一元管理され、消費者にはATDWを通した信頼できる最新の情報が提供される状態だ。観光業者は情報を修正する必要が生じてもATDWのデータのみを更新すればよく、利用するサイト側も個別に対応する必要はない。

個人・小規模事業者を支援し産業振興

ATE出展者のほぼすべてがATDWにデータを登録

 逆に、TAや各州観光局の公式サイトにプロダクトを掲載する場合には必ずATDWのプロフィールを作成する必要があるが、少額が必要なビクトリア州を除いて登録費は無料。これは、政府が観光業者を支援するために補助している仕組みと言える。

 また登録されている約6万5000件のデータのうち、約90%から95%を占める小規模あるいは個人の事業者に向けて、ATDWとして無料で1対1のオンラインセッションも提供。人材や資金のある大手だけでなく小規模・零細事業者を支援することで旅行観光産業全体の成長につなげていく施策と言える。

 このほかGoogleとの提携により画像や説明文、営業時間などのATDWデータがGoogleビジネスプロフィールに自動同期できるようにし、Googleマップ上のピンも事業者がドラッグ&ドロップして正確な位置に調整できるようになっているのも事業者にとって嬉しい機能だろう。