国産SAFの安定供給へ危機感 ANAとJAL、共同レポートで航空ネットワーク維持の重要性強調
ANAとJALは5月27日、2050年の航空輸送におけるCO2排出実質ゼロの実現に向けたSAFの共同レポート第2版を公表した。世界的なSAF供給不足やコスト高騰を背景に、航空脱炭素は「認知・啓発」の段階から、供給体制を構築する新たなフェーズに入ったとの認識を示し、日本独自の制度設計や官民連携の必要性を訴えた。
ANAとJALは、2021年に初の共同レポートを策定して以降、業界横断組織「ACT FOR SKY」の設立や、地域と連携した廃食油回収、国産SAFの社会実装などを推進してきた。2025年には国内初となる商用SAF供給も実現し、航空脱炭素における国産SAFの必要性が社会的にも浸透しつつあるとした。
一方で、世界のSAF供給量は2025年時点で全航空燃料の0.6%にとどまり、原料となる廃食油の争奪や製造コスト高騰が深刻化している。レポートでは、SAFの調達はもはや一企業の環境対策にとどまらず、日本の航空競争力や経済安全保障にも関わる課題と位置付けた。特に、国内で十分なSAF供給が確保できなければ、日本が就航地や経由地として選ばれなくなる「ジャパン・パッシング」のリスクにも言及している。
両社は、2030年までに燃料使用量の10%をSAFへ置き換える目標を掲げているが、その実現には安定供給と価格低廉化が不可欠と強調した。欧州ではSAF混合義務化により価格高騰が発生した事例を踏まえ、日本では供給能力と制度導入速度を両立させた「日本型モデル」の構築が必要だと提言している。
また、航空輸送は日本国内で約200万人の雇用を支え、年間約17兆円規模の経済波及効果を生む重要インフラであると指摘。政府が掲げる2030年訪日客6000万人目標の達成や、離島・地方路線の維持にも安定的な航空燃料供給が不可欠とした。
両社は現在、企業のScope3削減に貢献する「SAF Flight Initiative」や「JAL Corporate SAF Program」を展開しており、2026年3月時点で計35の企業・団体が参画している。高コストなSAF導入を社会全体で支える「共創モデル」として、今後も利用拡大を進める考えだ。
JALの鳥取三津子社長は、「持続可能な航空の未来を切り拓く挑戦を決して諦めるわけにはいかない」とコメント。ANAの平澤寿一社長も、「燃料確保の遅れは日本の経済安全保障を脅かす危機的状況」と危機感を示し、社会全体での枠組みづくりを呼びかけた。

