「2030年クルーズ人口100万人」は実現できるか――最大課題は『需要』ではない、JATAクルーズ部会長・松浦氏に聞く

 国土交通省は「日本のクルーズ市場の持続的発展に向けた有識者検討会」において、2030年までに日本人クルーズ人口を100万人とする新たな目標を示した。日本人クルーズ人口は2019年に約35万人まで拡大した後、コロナ禍で大きく落ち込み、現在は回復途上にある。一方、世界のクルーズ市場はすでにコロナ前水準を上回っており、日本市場にはなお大きな成長余地が残されている。

 こうした状況を踏まえ、国が掲げた数値目標をどのように現実の市場拡大につなげていくのか。有識者検討会委員であり、日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)クルーズ旅行推進部会長、クルーズのゆたか倶楽部代表取締役の松浦賢太郎氏、およびJATA海外旅行推進部副部長の大久保英男氏に、日本のクルーズ市場が直面する課題と旅行会社に求められる役割について話を聞いた。

(左から)JATA 大久保英男氏、松浦賢太郎氏
-「2030年に日本人クルーズ人口100万人」という目標を、どのようなメッセージとして受け止めていますか。

松浦賢太郎氏(以下敬称略) この数字は、最終的なゴールというよりも、業界全体に対する一つの方向指示だと受け止めています。これまでクルーズは、船社、旅行会社、国土交通省、港湾自治体と、それぞれが個別に動いてきた側面がありました。今回は、関係者が同じテーブルにつき、同じ地図を共有したうえで、『では誰が何を担うのか』を考え、実際に動き出そうとしている点に大きな意味があると思っています。

-過去にも「100万人構想」はありました。今回は何が違うのでしょうか。

松浦 以前の構想は、正直なところ理念先行でした。一方、今回の目標は、運航計画を含めた積み上げで議論されています。例えば、ディズニークルーズが年間約40万人規模で日本市場に入る見込みがあり、そこに日本籍船の新造計画などを加えると、現実的な計算として100万人が見えてくる。過去の100万人構想は夢物語でしたが、今回は根拠を積み上げた数字だと理解しています。

-日本のクルーズ市場拡大に向けた最大課題はどこにあるのでしょうか。

松浦 最大課題は、需要ではなく売り手の不足です。JATA加盟の旅行会社は約1200社ありますが、その中でクルーズを日常的に扱っているのは50~60社程度にすぎません。仮に2030年に100万人という市場規模を目指すのであれば、少なくとも数百社規模の旅行会社が何らかの形でクルーズを取り扱う状態になっていないと現実的ではありません。