観光庁長官が現地で見た「令和版大山詣り」、宿坊「源長坊」再活用を核に進むレガシー形成の現在地
合意形成と「よそ者」の視点
源長坊再活用にあたっては、建築基準法や都市計画法、土砂災害警戒区域への対応など、制度面での整理も進められている。登録有形文化財への登録を視野に入れ、専門家の助言を受けながら、安全性と歴史的価値の両立を図る計画だ。
同時に重視されているのが、地域内での合意形成。個別ヒアリングや説明会、計画案の可視化を通じ、透明性の高いプロセスを積み重ねている。
この点について村田長官は、「この事業をきっかけに、関係者が集まって、真剣に『自分たちの地域をどうしていきたいのか』を議論する場を提供していることが、非常に大事なポイント」として、オピニオンリーダーが一定の方向性を示しながら合意形成を図っていく重要性を強調した。
内閣府地域活性化伝道師の篠原准教授
これを受けて篠原氏は、事業が次の段階へ進む局面では、地域内だけで議論を完結させることの難しさにも触れた。篠原氏は、「どうしても地域の方々だけでは、話が煮詰まってしまうということがある」と述べ、「外の人も入れて、新たにいろんな発想を広げていくということも大事」と指摘した。
さらに目黒宮司も、「この地域は小さく、どうしても限られた中で我々が主体になってしまう」としたうえで、「若い人たちの声や、外部からの助言をいただける機会を欲している」と率直に語った。
こうしたやり取りを踏まえ、篠原氏は、「地域振興には、よく『よそ者、若者、馬鹿者』が重要という言い方をしますが、外からの視点が入ることで初めて見えてくるものがある」と語り、行政や民間事業者、有識者など多様な主体が関わりながら議論を重ねていくことが、事業を具体化していくうえで欠かせないとの認識を示した。
レガシーを「事業」にするために
事業の最終的な目標は、補助金に依存しない自立的な運営モデルの構築だ。体験プログラム、飲食・物販、スペース活用といった複数の収益源を組み合わせ、得られた収益を建物の維持修繕や新たなコンテンツ開発に再投資する「エコサイクル」の確立が描かれている。ロードマップでは、源長坊の2029年のグランドオープンを目指し、段階的に事業化を進める方針が示されている。
村田長官
村田長官は鼎談の締めくくりで、「我が国の観光地をより高めていくためには、今あるものにいかに付加価値をつけていくか、それをどのように知らせ、伝えていくかが大事だ」と強調。地域の関係者が話し合いを重ねるプロセスそのものが、「自分たちの地域に改めて誇りや自信を持つきっかけになる」と述べた。
そのうえで、こうした取組を支える立場として、「予算面やアイデア、体制づくりなど、観光庁としてもさまざまな面から地域を応援していきたい」としたうえで、「住んでよし、訪れてよし、という観光地づくりを通じて、観光によって地域全体の幸福度が高まる社会を目指していきたい」と語った。

