周年に寄せて-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2025年10月15日

 KYOTOyui 代表の近藤芳彦です。来年7月に法人設立10周年、そして8月には個人事業開始から20周年を迎えることとなります。現在、周年イベントの開催に向けて会場の手配など準備を進めており、この節目にあたり、今の想いを皆さまと共有させていただきたいと思います。

地域と共に歩んだ20年

 思えば19年前、2006年に同級生と2人で個人事業を立ち上げたのが始まりでした。まだよちよち歩きの頃、2008年10月には「観光庁」が観光立国実現に向けて発足され、その当時よく耳にした言葉が「着地型観光」でした。私は「京都のランドオペレーターになる!」という思いを胸に「トラベル京都」という屋号で事業をスタートしました。

 当時の着地型観光は「儲からない仕事をよく頑張っているなぁ~」と業界内で言われることもありました。そんな中、京都府とのご縁をいただき、府内各地を職員の方々と訪ね歩きながら「ちーたび」という地域密着の旅づくりに携わったことが、私の原点となっています。そこでは、地域の文化や人々の暮らしを肌で感じながら観光の可能性を模索し、数多くの学びを得ることができました。

 その仕事の中で出会った町が「和束町」でした。ある時、地域の外郭団体で事務局次長を務めておられた木村さんから「こんちゃん!うちの町に来て観光客を呼ぶ手伝いをして欲しい」と声をかけていただいたのがきっかけです。当時の観光客数はほぼゼロ。しかし「この地は必ず生まれ変われる」と確信し、アドバイザーとして委嘱を受けました。現在は「和束茶カフェ」という観光拠点で、事務局長兼理事を務めさせていただいております。和束町での取り組みは、地域と観光の在り方を深く考えるきっかけとなり、私の事業における大きな柱となりました。

未来を結ぶ10年

 個人事業10周年を迎えた際、京都結(現・KYOTOyui)を設立しました。これは自分にとって旅行業から観光業へとシフトした大きなターニングポイントでした。その後、OTA(Expedia)との連携を開始し、亀岡の刀鍛冶職人と取り組んだ「小刀づくり体験」は、今では予約が取れないほど人気のコンテンツに育ちました。

 私はこの経験を通じて、スポットの当たっていない職人や地域を、体験を通して知っていただき、「稼げる職人・稼げる地域」へと成長させることこそ観光業の役割だと痛感しております。まさに観光庁発足当時に掲げられていた「着地型観光」の理念に通じるものです。観光は単なる娯楽に留まらず、地域の経済を支え、人と人をつなぐ力を持っていると確信するに至りました。

 またこの20年間で築かせていただいた人脈は、未来を結ぶ大きな力となりました。特に2017年9月のGlobal Venture Forumをきっかけに、WAOJE京都を発足し、初代代表を務めさせていただいたことは、世界中の人脈につながる大きな財産となっています。京都から始まったご縁が海外へと広がり、国境を越えた観光の可能性を考えるきっかけともなりました。

人とのつながりが生んだもの「持続可能な観光」

 周年イベントのご案内に向けて人脈を振り返る中で、あらためて「本当に多くの方に支えられて今がある」と実感しております。現在取り組んでいる事業の大半も、人とのつながりから生まれたものです。

 京都で課題となっているオーバーツーリズムについては、事業者が「ビジネスありき」で商品を開発・販売していることに原因があると感じています。その点、「経済」という言葉が「経世済民」(世の中を治め、人々を救い、生活を安定させること)を由来とすることを知り、大変深く納得いたしました。観光業もまた「人とのつながりを重んじること」によって初めて持続可能となるのだと思います。これは、単に地域を訪れる人を増やすのではなく、訪れる人・迎える人双方が心豊かになれる仕組みづくりこそ大切だと感じています。

観光と地域のこれから

 観光業とは、地域の光、産業の光、人の光を当てる営みであると確信しています。インバウンドビジネスを単なる儲け主義にしたくはありません。人とのつながりこそが観光の醍醐味であり、地域や産業に光を当てる観光商品を創ることでこそ、経済を健全に回していけると感じております。

 振り返れば、個人事業当初に「京都の職人さんの想いに出会う旅へ。出かけませんか。」という冊子を作ったことを思い出します。あの原点に立ち返り、「観光×地域」「観光×産業」「観光×文化」と真摯に向き合い、経済発展につなげてまいりたいと考えております。観光は未来をつなぐ大切な架け橋であり、今後もその可能性を信じて行動し続けたいと思います。

2014年発刊

未来へのビジョン

 50代半ばを迎え、模範となるよう襟を正し、観光事業者としても人としてもお手本にしていただける存在を目指し、日々精進してまいります。これからの10年は、地域と人をより深く結びつけ、次世代に残せる観光の形を模索する10年にしたいと考えています。

 皆さまからご意見をいただければ幸いです。今後の歩みに生かしてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

近藤芳彦
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光サポーター。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。