TIFS会員インタビューVol.19 チャーターと失敗論で切り拓く、クルーズ市場の未来ービュート村田 洋一氏
TIFS会員の取組をご紹介するシリーズ第19弾は、YouTubeを駆使した新規顧客開拓、社員全員に年1回クルーズを体験させる独自研修、そしてにっぽん丸チャーターなど挑戦を重ねる株式会社ビュート。TIFSの事務局長も務める代表の村田洋一氏に、創業の原点とこれからの展望を伺いました。

村田 洋一 氏(以下敬称略) 株式会社ビュートは2017年に創業しました。もともとバージンアトランティックのリチャード・ブランソン氏に影響を受け、航空会社を立ち上げたいという夢があり、バンクーバーに留学していたのですが、その頃にクルーズと出会いました。当時、日本では「クルーズで世界一周2000万円」といった高嶺の花という印象が強かったのですが、実際には5万円程度で楽しんでいる人も多く、「これを日本に広めたい」と思ったのが原点です。帰国後に旅行業で経験を積み、クルーズ専門旅行会社として独立しました。現在はクルーズ一本で事業展開していますが、千葉市などからインバウンド推進への協力依頼もいただいています。
村田 現在取り扱っているのは、ダイヤモンド・プリンセス、コスタクルーズ、MSCクルーズ、セレブリティ・クルーズ、ノルウェージャン・クルーズラインなど、幅広い外国船・日本船です。コロナ後は航空券が高騰しているため、日本発着が約8割を占めています。会社が急成長中だということもあり、リピーター率は約4割で、新規のお客様が非常に多く流入している状況です。顧客層はリタイア世代が中心ながら、年末年始やゴールデンウィークには30代40代の家族旅行も増加しています。特に「子供無料」のMSCクルーズなどは人気があります。
村田 新規流入の大きな要因はYouTubeです。動画一本で1万人に情報を届けられるのは大きな武器であり、アナリティクスを活用して視聴データを徹底的に分析しています。数字しか信じない姿勢で、登録者数や視聴時間、コンバージョン率を細かく確認しながらPDCAを回し、改善を重ねています。意外な動画が大きな反響を得る一方で、伸びない動画もあり、その要因を徹底的に突き止める姿勢を持っています。中学生時代から映像制作が趣味で、8ミリビデオで撮影や編集をしていた経験が現在の発信活動に直結しています。
村田 社員の“圧倒的な経験の差”です。社員には必ず年に一度、会社負担でクルーズを体験してもらっています。乗船代金だけでなく飲み放題やWi-Fiなどのオプション、また寄港地までの航空券まで含めて全額会社が負担し、業務なしで「お客様目線」で楽しんでもらうのです。実体験を通じて、寄港地観光や船内サービスの細かい部分まで把握し、それをお客様に伝えられるのが当社の大きな強みです。こうした研修制度は他社ではなかなか真似できない取り組みであり、社員一人ひとりがリアルな体験談を語れることがお客様の安心感や信頼につながっています。
村田 下船後のお客様の過ごし方は縛らず、情報提供に徹する姿勢です。港ごとの交通手段や周辺情報を把握し、お客様が自由に選べるようにしています。今後はTIFS会員のネットワークを活かし、船会社では提供できないようなコアな体験型ツアーを一緒に作ることにも可能性を感じています。