村田観光庁長官が初会見、アゴダ問題に言及 旅行振興参事官新設でアウトバウンド促進へ

観光庁の村田茂樹長官は16日、就任後初となる定例記者会見を行い、訪日外国人旅行者数の現況や新設された旅行振興担当参事官の役割、自身の抱負、旅行予約サイト「Agoda(アゴダ)」を巡る問題への対応などについて言及した。
6月の訪日外国人旅行者数は推計で337万7800人となり、6月として過去最高を更新した。前年同月比では7.6%の増加で、アジア地域からは19%、欧米豪や中東からは28%の伸びを記録した。2025年1〜6月の累計では2152万人に達し、過去最速のペースで2000万人を突破した。背景には円安の継続や航空路線の復便・増便、さらに一部市場でのスクールホリデーなども影響しているという。また、2025年4〜6月期の訪日外国人消費額は速報値で約2.5兆円、上半期累計で約4.8兆円となり、いずれも過去最高を更新した。
月 | 訪日外国人数 | 出国日本人数 | ||||
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2024年 | 2025年 | 前年比 | 2024年 | 2025年 | 前年比 | |
1月 | 2,688,478 | 3,781,629 | 140.7% | 838,581 | 912,298 | 108.8% |
2月 | 2,788,224 | 3,258,491 | 116.9% | 978,884 | 1,181,062 | 120.7% |
3月 | 3,081,781 | 3,497,755 | 113.5% | 1,219,789 | 1,423,449 | 116.7% |
4月 | 3,043,003 | 3,909,128 | 128.5% | 888,767 | 961,386 | 108.2% |
5月 | 3,040,294 | 3,693,300 | 121.5% | 941,709 | 1,076,756 | 114.3% |
6月 | 3,140,642 | 3,377,800 | 107.6% | 930,229 | 1,054,000 | 113.3% |
7月 | 3,292,602 | 1,048,823 | ||||
8月 | 2,933,381 | 1,437,126 | ||||
9月 | 2,872,487 | 1,212,545 | ||||
10月 | 3,312,193 | 1,148,502 | ||||
11月 | 3,187,175 | 1,175,117 | ||||
12月 | 3,489,800 | 1,187,207 | ||||
1~6月 | 17,782,422 | 21,518,100 | 121.0% | 5,797,959 | 6,609,000 | 114.0% |
1~12月 | 36,870,148 | 13,007,282 |
こうした観光需要の拡大を受け、観光庁は7月1日付で「参事官(旅行振興)」ポストを新設した。村田長官は、「好調なインバウンドとの相乗効果を生かしてアウトバウンドの促進にも取り組む必要がある。人材不足も深刻化しており、観光業全体を支える体制強化が急務だ」と説明した。同ポストは観光人材の育成や国内旅行の活性化も担当範囲としており、業界との連携を通じた総合的な旅行振興を図る。
長官としての抱負については、「2030年の訪日客数6000万人、消費額15兆円という政府目標の達成に向けて、2026年度から始まる次期観光立国推進基本計画を実効性あるものにしていきたい」と述べた。特に注力したい施策として「持続可能な観光地域づくり」と「地方誘客の促進」を挙げ、人口減少や社会構造の変化を見据えた中長期的な政策形成の必要性を強調した。また、秡川前長官からの引き継ぎとして、基本計画の策定と観光庁内部の働き方改革を引き続き進めるよう指示を受けたことも明かした。
アゴダを巡っては、予約した部屋が確保されていない、予約内容と実際の宿泊条件が異なるといったトラブルが相次ぎ、観光庁は今年3月に業務改善を要請していた。
これに対し同社は、特定の第三者サプライヤー経由の在庫の取り扱い停止やAIを活用した事前監視システムの導入を今月15日に発表。村田長官も会見で、同様の報告を受けたと述べており、今後については「対応状況を注視し、他の旅行予約サイトも含めて苦情があれば必要に応じて対応する」との方針を示した。
そのほか、政府が進めるワーケーションや休み方改革についても言及し、「第2のふるさとづくりプロジェクトやワーケーションなどを通して、関係人口の増加につなげ新たな交流市場の拡大に向けた取り組みを進めたい」と述べた。休暇の取得を促す「ポジティブ・オフ運動」や、高齢者向けの旅行環境整備も今後の重点分野とし、需要の平準化に資する施策として位置づける考えを示した。