開幕1ヶ月を経た大阪・関西万博、アウトバウンドの後押しとなるか?行ってみて感じたこと
2025年4月13日に開幕した日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)。開幕時には、入場やら予約やらいろいろとネガティブなコメントも出ていたが、開幕1ヶ月を経ての一般来場者数(確定値)は241万9509人(4月13日から5月10日までの4週間)となり、万博協会発表によると来場者を対象にしたアンケートでは8割が「満足」と回答しているという。実際にゴールデンウィーク前の平日に訪れた実感を海外からの出展館を中心にレポートしてみたいと思う。
万博協会のHPでは前週の来場者数を毎週公開しており、取材日は約11万人(うち関係者などAD証入場者数が約1万7000人)。ゴールデンウィークは5月4日(日)が約13万7000人と最多だが、明けての平日は9万人から10.6万人というところ。なので取材日は今のところのだいたい平均に近い混雑度である。3つの取材館以外は、予約なしでの入場になるという状況下で、共同出展のコモンズ館をのぞいて14館(以下、パビリオンは館と称する)を回った。
まず、感想を先に言ってしまうと、やはり多くの国や地域への興味がかき立てられる体験はとても楽しく「一度は行ってみることをおすすめする」だ。大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、158カ国・地域が参加しての国際博覧会である。初めて聞く名前や、かつて訪れた国や場所でも新たな発見があって「いつか実際に行ってみたいな」と素直に思える。
東ゲートから入って、企業館や日本館などがあり、大屋根リングを過ぎるとすぐに目立つのがアメリカ館とフランス館だ。アメリカ館は朝一にすぐ並んで約40分、フランス館は夕刻かつ噴水ショーの時間だったこともあり約15分で入れた。アメリカ館は、外の大型ビジョンに国立公園など大自然、大都会、歴史、様々な州を代表する風景が次々に映し出されていて、並んでいる間も結構飽きない。没入型の映像展示を見せる。フランス館は、代表的なブランドが威信をかけたアーティスティックな展示を競っていて、見応えがあった。
映像展示が中心となる館が多いなか、なんと古代ローマ彫刻やダ・ヴィンチの直筆スケッチ、バチカンからはカラヴァッジョの作品と本物の展示が圧巻なのがイタリア館。やはりかなりの人気で、この日は予約なしだと2時間待ちだった。
しかし、大部分の海外出展館は、当日予約や夕刻以降ですいてきた時間を利用すれば、かなり回ることができる。体験型や試食などのある館が楽しく、訪れた中では、ペルー 館が朝にコーヒーやチョコレート、午後にはペルー 料理を2回、そして夕方にはピスコサワーと1日4回も無料で試飲試食を提供している。マチュピチュをはじめとする遺跡や自然を見せる映像展示もかなりの迫力で、観光と食の魅力をアピールしていた。
フィリピン館では、プロジェクションマッピングを駆使して地方の特徴ある織物を森に見立てたり、AI技術でインタラクティブにフェスタを体験できたりと楽しみながら、フィリピンの魅力に触れられる。予約制でヒロットという伝統的なマッサージの体験も提供している。
白い膨張式彫刻が呼吸する森を象徴するようなユニークなブラジル館では、若手アーティストの作品を大きなスカーフ状の布にして来場者に配布して人気だった。
館内だけでなく屋外ステージを利用して、ショーやライブを開催している館もかなりあって、お祭り的な楽しさも味わえる。自身は、いろいろな館を回ることを優先したが(ちなみに会場内にあるコンビニは、オリジナル商品などを除いて通常の価格ママでの販売。お弁当や水筒・ペットボトルも持込み可能。ビン・カンの飲料持込みは禁止)、各国の食を楽しみに回っているという来場者もいた。名産品・お土産品のブースも人気を博していた。
各国から来日しているスタッフは、みんなフレンドリー。各館で押すスタンプに自国の言葉で「ありがとう」と書いてもらうのをお願いしたが、快く応じてくれて、ちょっとした会話が楽しかった。
コロナ明け以降、円安などもありアウトバウンドになかなか弾みがつかない昨今。海外への興味という点では刺激になることは間違いない。また、そのなかで本物を展示するということで圧倒的な人気を得ているイタリア館で、リアルに本物と接することの魅力というのも感じられた。大阪・関西万博をきっかけに、多くの人が「海外に実際に行ってみること」に目が向くことを期待したい。
取材・文 小野アムスデン道子