豪州、29年に日本人旅行者68万人へ、農業観光など新機軸も-ブリスベンで商談会開幕
オーストラリア政府観光局(TA)は4月28日、ブリスベンで旅行商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE25)」を開幕した。オーストラリア全国の観光事業者と世界各国の旅行業者が一堂に会する毎年恒例のイベントだが、45回目となる今回はセラーが約1600人、世界31ヶ国からのバイヤーが726人(オーストラリア拠点の215人含む)と過去最大となり、5月1日までの4日間で合計で約6万件の商談が交わされる。
TA総局長のフィリパ・ハリソン氏は「旅行業界に破壊的変革が起きている現在だが、こうしてB2Bの分野で人と人が繋がることには驚くほどの需要がある。オーストラリアのように広大で素材の多い国にとって旅行業界は今後も常に重要であり続ける」と語り、対面形式での商談会の意義を強調。今回はセラーで61人、バイヤーで131人が新規で参加したという。日本からの参加者はバイヤーが24人、メディアが5人となった。
またハリソン氏は、日本を含めて各国からのインバウンド市場が好調に推移していることも説明。2025年2月までの12ヶ月間でオーストラリアを訪れた外国人旅行者の数は830万人となり、前年同期から9%の増加。特にレジャー目的は14%増の360万人と大きく伸長したほか、VFRも4%増の280万人となった。
一方、日本人旅行者の数は2024年暦年で39万6000人となり33%の増加。2019年の49万9000人にはまだ届かないものの、ハリソン氏は「日本のこの12ヶ月間は非常に好調。我々としても大変嬉しく思っている」とし、今年6月には日本でTAの理事会を開催することも明かした。そして、2029年までの各市場ごとの成長目標を示すなかで日本を68万人とし引き続き高い成長率を望める市場の一つとして認識していることを明示した。
中長期的に持続可能な成長を実現するための方針としては、「ハイイールドトラベラー」「アジア市場の成長継続」「体験の重要性」「大規模スポーツイベント」「予約流通の多様化」「より良い観光」の6つをキーワードとしてマクロトレンドを説明。このうちハイイールドトラベラーは以前からTAがターゲットとしている顧客像で、必ずしも富裕層に限らないがオーストラリアへの旅行中に多くの商品やサービスを購入する層を指し、今後はこの層を巡って他国との競争が激しくなるが引き続き強力に取り組んでいく。
アジア市場は日本を含めて成長の余地が引き続き大きいとの分析で、2010年から2019年までで旅行者数が2倍に増加しているが今後も50%の拡大を見込むとした。
一方、体験はオーストラリアに限らずグローバルでトレンドとなっているところで、ハリソン氏は「ますます重要になる」と指摘。「オーストラリアでどのようなものが見られてどんなことができるのか、提供できる体験の種類や内容の豊かさをしっかり伝えていく」と語り、特にそのための新たな切り口としてアグリツーリズムに注力することも明かした。旅行者とオーストラリア国民や農作物を繋ぐ体験を農場などで直に体験するアクティビティなどを積極的に紹介していくという。
スポーツイベントでは、22年のクリケット、23年の女子サッカー、27年のラグビー、28年のクリケット、29年の女子ラグビーとそれぞれのワールドカップ開催地となり、さらに32年にはパラリンピック・オリンピックが待つなど大型の国際競技大会が続くことを最大限活用。また予約流通の多様化では、体験やレストラン、さらにホテルなどを含めた予約全体の40%がソーシャルメディア経由になっているとの調査結果が得られているといい、こうした動向を把握し誘客につなげていく方針。さらに「より良い観光」では、「ただ楽しい(feel good)だけでなくより良い(do good)体験への需要が高まっている」なかで環境や社会にプラスの影響をもたらせる観光のあり方を追求していく。
このほか直近の施策としては、2022年に開始したグローバルキャンペーン「『グッデイ!』ではじめよう、オーストラリア」でブランドアンバサダーとなっているカンガルーのぬいぐるみのキャラクター「ルビー」について、広告動画の第2弾を制作中とのこと。ルビーは、広告を見た消費者とそうでない消費者との間でオーストラリアへの旅行を検討する割合が12ポイントも高くなるなど高い効果を得られているといい、広告以外にもスポーツやワーキングホリデーなどのテーマでも利用したりまた大阪・関西万博でもオーストラリア館のマスコットキャラクターとするなど存在感を発揮。第2弾では、「これまでの要素を踏襲しつつ各市場のタレントを活用する」「オーストラリアのアイコンである有名な素材に加えて新しい魅力も伝えていきたい」との考えだ。
なお、オーストラリアの観光業界におけるこの数年の大きなトレンドとして先住民の文化や知恵、歴史をテーマとしたアボリジナル体験にスポットライトが当たっているところ。先住民が自ら経営する優れたアボリジナル体験のコレクションであるDiscover Aboriginal Experiencesの登録社数は2025年現在53社となってコレクションを立ち上げた2018年から45%増加しているほか、今回のATE会場でも多くの企業が関連するアクティビティの提供を始めていたり、自らのルーツを伝えようとする起業家たちが出展したりとこれまで以上の盛り上がりが感じられた。
誤: 豪州、29年に日本人旅行者65万人へ、農業観光など新機軸も-ブリスベンで商談会開幕
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正: 豪州、29年に日本人旅行者68万人へ、農業観光など新機軸も-ブリスベンで商談会開幕
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