仏最大のツーリズムトレードショー開催、五輪に続きノートルダム大聖堂の再開などで勢い 各地方も魅力をアピール

 50億人の注目を集め、1200万枚のチケットが売れたという記録的なパリ五輪。スポーツの祭典として高い評価を得ただけでなく、プロモーションによってメディアやSNSを通じ、スポーツツーリズムや次の旅先としてのフランスをアピールした。プロモーションキャンペーンを見た75%の人は、休暇でフランスを訪れたいという志向を強めたと分析している。

世界中の目が釘付けになったパリ五輪。今回、文化施設コンフリュアンス博物館で行われたオープニングも芸術的でパリ五輪を思い出させた。

 2024年12月8日にパリのノートルダム大聖堂が一般公開を再開したこともインパクトがあり、再開1ヶ月で1日平均約2万5000人、最高で3万5000人が訪れる日もあったという。今後、さらに2027年に向けてステンドグラスの設置などの工事が進む。

2025年も各地でイベントが続々、さまざまな魅力をアピール

 各地方観光局が発表した2025年の観光トピックスを紹介する。

  • ■ 北フランスのリールが開幕都市となるサイクルロードレースの祭典「ツール・ド・フランス2025」(7月5日〜27日)。北フランス地域としてサイクルツーリズムを促進する。
  • ■ エクス・アン・プロヴァンスでは、2025年をセザンヌイヤーとして様々なイベントを開催予定。
  • ■ ノルマンディーでは、中世からの歴史あるカーン市が千年祭を開催。
  • ■ ロワールでは、ロワール川の世界遺産登録25周年を祝うフェスティバルなど。
  • ■ 「ランデヴー・アン・フランス2025」の開催都市リヨンは、オープニング会場となったコンフリュアンス博物館が10周年を迎えた。

「ツール・ド・フランス2025」をきっかけにサイクルツーリズムの促進を図るオー・ド・フランス地方。

2030年冬季五輪開催地オーヴェルニュ・ローヌアルプ地方の意気込み

2030年の冬季五輪の開催について語るオーヴェルニュ・ローヌアルプ地方観光局ローラン・コルミエ局長。

 リヨンのあるオーヴェルニュ・ローヌアルプ地方は、2030年の冬季五輪の開催地でもある。同地方観光局局長のローラン・コルミエ氏は「以前からのネイチャーツーリズムに加え、7年前からブルゴーニュ、プロヴァンスそしてオーヴェルニュ・ローヌアルプの3地方で『美食の渓谷』をプロモーションしている。地元の生産品を使って名物料理を提供するリヨンでのガストロノミーとボージョレをはじめとするローヌ地方でのワインを楽しんでもらえる。」

 「もちろん、シャモニーなどを有する本地方でのスキーツーリズムのシェアは高く、観光収益は70億ユーロにのぼるが、夏のグリーンシーズンも重要だ。美しい湖のほとりエヴィアンやアヌシーなどはアピールできる。サイクリングなどを含め、まずリヨンで美食を楽しみ、エヴィアンやアヌシーの湖のリゾートにステイをするもよし、モンブランでゴンドラに乗ったりシャモニーをハイクで巡るもよし、充実した滞在をしていただける」と語る。

 過去3回、冬季五輪を開催しているフランス、2030年の当地での開催に向けては「3つのことに現在取り組んでいる。1つ目は、競技用のスロープやジャンプ台など競技設備の95%はすでにあるので、アクセスとホスピタリティの強化に注力すること。鉄道で来てもらって、リゾートにアプローチできる新しいリフトを作る。2つ目は、次世代のスキーマーケットを育てること。スキーは古い世代のものになりつつあり、こちらでもスキー未経験の子供たちがいる。地元のスキークラブと組んで、スキーヤーを作っていかないといけない。3つ目は、車でのアクセスに代わる新しいリフトの造営もそうだが、環境面への配慮と地元を巻き込んでいっしょに調整していくこと。地元の理解を得て、地元にも利益のある機会にしていくことが大事だ」と語った。

日本マーケットの復調、そのきっかけは

「フランスは日本マーケットの復調を期待している」とフランス観光開発機構在日代表のジャン=クリストフ・アラン氏。

 最後にフランス観光開発機構在日代表のジャン=クリストフ・アラン氏は「フライト時間、飛行機の席数、円安などの問題もあって、日本はコロナ禍以降アウトバウンドの復調がもっとも遅い国の一つではある。しかし、フランスを訪れる人は少しずつ増えてきており、減ってはいない。そして、フランスのホテルや観光局にとって日本は魅力あるマーケットで、復調はいつかと注視している。」

 「今、海外旅行で来ている日本人は経済的に余裕もあり、パリはすでに行った人も多く、ここ最近は、有名観光地ではないところへの関心が広がっている。フランスに来る層が中間層にも広がっていけばと思っており、今年に入ってNETFLIXのニースが舞台の日本人男女10人による恋愛リアリティ番組『オフライン ラブ』の放映もいい効果を生んでいる」と語った。

 フランス観光開発機構では、フランスから観光事業者が来日してのワークショップSAKIDORI FRANCE(サキドリ・フランス)を6月上旬に予定している。「ランデヴー・アン・フランス」とあわせてマーケットの復調に向けてのステップとなることが期待される。

取材・文/小野アムスデン道子