訪日急増もインフレ&人手不足でピンチ、観光業者はDXで未来をめざせ-開発業者ナツメグがアピール

 観光業者向けSaaSベンダーのNutmegLabs Japanはこのほど東京で顧客企業を招いてユーザーカンファレンスを開催し、自社プロダクトの開発状況を紹介するとともに日本の観光業界が向き合う課題の解決にプロダクトを活用してほしいとアピールした。


NutmegLabs Japan代表取締役CEOの中口貴志氏

 同社代表取締役CEOの中口貴志氏は「Nutmegが考える日本の観光業の未来や可能性について」をテーマに観光業界の現況を分析し、インバウンド市場が急拡大する一方でインフレと人手不足の二重苦に直面していると指摘。そのうえで、こうした状況は短期的には変わらないとの予想のもと、今年有効な対策を取らなければ生き残れない可能性があると訴えた。

 具体的には「販売価格の引き上げ」と「需要の予測と分散」、「業務の自動化」を列挙。例えば販売価格については、従来の価格へのインフレ相当分の上乗せを「最低限やるべきこと」とし、そのうえで需要に応じて値付けを変える変動価格制の導入も可能であれば取り組むべきとした。

 値上げの必要性を分かってはいつつも踏み切れないケースは多いが、これに対して中口氏は具体的なアイディアも紹介。一例では、ディズニーなどの取り組みも参考に主にインバウンド向けに特別な体験を企画して高額商品とすることを提案。日付や在庫を限定することで特別感を高め、また販売方法も抽選とするなど工夫ができるとしたほか、このようなケースでは通常価格に比べて5倍以上の価格差を付けるべきと勧めた。

 また変動価格制についても、自動でのダイナミックプライシングは難しくても、繁忙期や時間帯によって価格設定を分けることから着手可能とした。さらに価格設定によって他の課題解決をめざすこともでき、当日購入の場合の料金を事前購入よりも高くすることで事前購入を促し、それによって事前の需要予測の精度を高められるほか需要の分散にも期待できるとした。

 このほか業務効率化では、独自のAIサービス「Nutmeg AI」がリリース間近であることを発表。多言語での問い合わせ対応などの機能を持たせて人手不足に対応して現場環境の改善を実現するねらいを強調した。

 なお、同社は2018年にサンフランシスコで創業しており、観光施設や交通機関、ツアー&アクティビティなどの「タビナカ」事業者向けにSaaSプロダクトを提供。現在は日本で500社以上、海外で50社以上に利用されているという。

 カンファレンスではこのほか、執行役員 VP of Biz Devの北中萌恵氏が現在の開発状況などについて説明し、執行役員 VP of Customer Successの和田英考氏が集客や売上の拡大策について提案した。このうち開発関連では、特にスマートマップの機能を肝いり事業として力を入れているところという。