国土交通大臣 中野洋昌氏

③地方創生2.0 の推進
(持続可能な観光の推進)

 観光は、人口減少が進む我が国にとって成長戦略の柱、地域活性化の切り札です。昨年は、訪日需要の高まりや、円安等の影響に加え、持続可能な観光立国の推進に向けて政府を挙げて取り組んだ結果、訪日外国人旅行者数や消費額の回復が急速に進み、観光は力強い成長軌道に乗っているものと受け止めております。令和5年に策定した観光立国推進基本計画を踏まえて、本年も「持続可能な観光地域づくり」、「地方を中心としたインバウンド誘客」、「国内交流拡大」の3つの分野の取組を強力に推進していきます。

 第1に、持続可能な観光地域づくりです。いわゆるオーバーツーリズムの懸念も生じている中、観光客の受け入れと住民の生活の質の確保の両立が図られるよう、地域の実情に応じた取組を引き続きしっかりと支援してまいります。
 また、観光産業においては、観光需要の回復に伴い人手不足が深刻化していることから、外国人材の活用も含めた採用活動支援や、業務の効率化・省力化に資する設備投資への支援などの総合的な人手不足対策を実施し、人手不足の解消に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
 さらに、宿泊施設等の改修支援や観光DXの推進等を通じて、観光産業の収益力を強化し、従業員の待遇改善等を図ることで、観光産業の高付加価値化を可能とする好循環を生み出してまいります。

 第2に、地方を中心としたインバウンド誘客です。訪日外国人旅行者数は着実に回復していますが、三大都市圏にインバウンドの宿泊全体の約7割が集中するなど、コロナ前と比べても都市部を中心とした一部地域への偏在傾向が見られます。
 今後、地方部への誘客をより一層強力に推進するため、地域の多様な観光資源を活かした体験コンテンツの磨き上げに取り組んでまいります。また、高付加価値旅行者の地方への誘客を強化するため、全国14のモデル観光地における高付加価値なインバウンド観光地づくりの取組を集中的に支援するとともに、その成果やノウハウを他の地域へも伝播させ、観光を通じた地域活性化を促進してまいります。
 さらに、大阪・関西万博開催を契機としたインバウンドの全国への誘客促進に向け、情報発信等に取り組むとともに、若者をはじめとしたアウトバウンドの促進など、双方向交流の拡大にも取り組んでまいります。

 第3に、国内交流拡大です。地域の観光資源を一層魅力的なものに磨き上げるとともに、テレワークを活用したワーケーションの推進や、反復継続した来訪の促進、ユニバーサルツーリズムといった国内における新たな交流市場の開拓に、従来の取組をさらに進化させて取り組んでまいります。

 国土交通省としては、こうした取組を着実に進め、2030年訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円という目標の達成に向けて、全力で取り組んでまいります。

(各分野における観光関係施策)
 昨年、我が国へのクルーズ船の寄港回数は、コロナ前ピークの約8割まで回復いたしました。また、寄港するクルーズ船の大型化が進む一方で、 小型のクルーズ船が全国津々浦々へ寄港するなど、船型や寄港地が多様化してまいりました。今後とも、各地域の皆様と連携し、多様なクルーズ船の受入環境整備や寄港促進に向けた取組、地域経済効果を最大化させるための取組、地方誘客促進に向けた取組を推進し、経済の活性化や賑わいの創出に努めてまいります。

 景観計画や歴史的風致維持向上計画の策定を促進し、良好な景観を形成するとともに、地方公共団体が取り組む地域固有の歴史・文化・風土を活かした歴史まちづくりに対する支援を引き続き進めてまいります。

 「道の駅」は、地方創生や観光の拠点を目指す「第3ステージ」に入り、「まち」と「道の駅」が一体となって発展する「まちぐるみ」の取組や、災害時に防災の拠点となる防災機能強化の取組を進めてまいります。

 令和3年に閣議決定された「第2次自転車活用推進計画」に基づき、私が本部長をつとめる自転車活用推進本部を中心に、政府一体となって、自転車通行空間の計画的な整備、シェアサイクルやサイクルトレイン等の普及促進、ナショナルサイクルルート等を活かしたサイクルツーリズムの推進等、自転車の活用の推進に向けて取り組んでまいります。

 地方の誘客促進に向け、「観光の足」を担う交通機関において、訪日外国人を含む旅行者により快適に利用していただくため、多言語による案内表示・案内放送の充実、クレジットカード対応型券売機や交通系ICカード等の利用環境整備、モビリティポートの設置、交通手段に関する情報提供の充実等の二次交通へのアクセス円滑化・利便性向上等の取組を進めてまいります。

(IRの整備)
 IRは、多くの観光客を呼び込む滞在型観光の拠点であり、観光立国の実現に向けた重要な施策です。令和5年4月に認定を行った大阪の区域整備計画について、実施状況評価を行うとともに、依存症対策などの弊害防止対策に万全を期すなど、2030年の開業に向けて対応を進めてまいります。

(航空ネットワークの維持・確保等)
 我が国の航空需要については、国内・国際ともに旅客数は回復傾向にあるものの、燃料費や整備費などのコストが増加していることにより、特に国内路線の収支が厳しい状況におかれています。

 航空ネットワークは、公共交通として国民の社会経済活動を支えるとともに、インバウンドの受入れをはじめ、ポストコロナの成長戦略にも不可欠な「空のインフラ」です。航空機燃料税の軽減措置等を行うことにより、地方創生や観光立国の実現に不可欠である航空ネットワーク維持・活性化に取り組んでまいります。

 また、急速なインバウンド需要の増加に対応するため、グランドハンドリングや保安検査をはじめとする空港業務の処遇改善や人材確保・育成等を支援するなど、引き続き、受入環境整備を推進してまいります。

(活力ある地方創り)
 半島地域、離島、奄美群島、小笠原諸島、豪雪地帯など、生活条件が厳しい地域や北方領土隣接地域に対しては、引き続き、生活環境の整備や地域産業の振興等の支援を行ってまいります。

 特に半島について、令和6年能登半島地震等の教訓を踏まえ、安心して暮らし続けられる災害に強い半島地域を実現してまいります。

 「ウポポイ」については、多くの方々にアイヌ文化に触れ理解を深めていただけるよう、昨年3月に策定した「ウポポイ誘客促進戦略」に基づき、戦略的・効果的な施策等を進めてまいります。

 令和元年10月の火災により焼失した首里城は、沖縄の誇りであるとともに、国民的な歴史・文化遺産として極めて重要な建造物です。復元整備工事中の首里城正殿は、令和8年秋に完成予定であり、国土交通省としても、引き続き、一日も早い復元に向けて、沖縄県や関係省庁と連携し、全力で取り組んでまいります。

さいごに
 本年も国土交通省の強みである現場力・総合力を活かして、国土交通行政における諸課題に全力で取り組んでまいります。国民の皆様の一層の御理解、御協力をお願いするとともに、本年が皆様方にとりまして希望に満ちた、発展の年になりますことを心から祈念いたします。