国土交通大臣 中野洋昌氏
①国民の安全・安心の確保
(能登半島における自然災害からの復旧・復興)
港湾については、全ての港湾で本復旧を進めてまいります。地盤が隆起した輪島港では、令和8年度中の本復旧の完了を目指すとともに、和倉温泉の護岸では、旅館の営業再開に間に合うように本復旧を進めるなど、なりわいの再建に貢献してまいります。
(中略)
能登空港については、12月25日からは震災前と同様、一日2便に復便しております。引き続き、権限代行により、滑走路等の早期復旧を目指します。鉄道についても、引き続き、七尾線の早期の本復旧を支援してまいります。
観光については、能登地域の観光拠点・観光資源の再生に向けて、観光地の復旧・復興計画の策定、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成等の支援を行うとともに、被災地の状況を踏まえた観光プロモーションを実施してまいります。
(東日本大震災からの復興・再生)
観光関係では、実際に現地を見ていただくことが最大の風評対策ですので、福島県に対し、滞在コンテンツの充実・強化等の取組を支援するとともに、ALPS処理水の海洋放出による風評対策として、岩手県から茨城県の沿岸部に対し、国際認証取得等の支援を行ってまいります。
(輸送の安全の確保)
昨年1月の羽田空港での航空機衝突事故のような痛ましい事故が二度と発生しないよう、昨年6月の羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会における中間取りまとめを踏まえ、更なる安全・安心対策に引き続き取り組んでまいります。最終的には、運輸安全委員会の事故調査報告も踏まえ、抜本的な安全・安心対策を講じてまいります。
令和4年4月に、北海道知床において小型旅客船が沈没し、乗客乗員計26名が死亡・行方不明となる重大な事故が発生しました。改めて、お亡くなりになられた方々とその御家族の皆様方に対し、心よりお悔やみを申し上げるとともに、事故に遭遇された皆様とその御家族に重ねて心よりお見舞い申し上げます。
国土交通省では、事故発生以来、海上保安庁の巡視船艇・航空機による捜索に加え、北海道警察や斜里町などの関係機関等と連携し、潜水士等による海岸部の捜索を実施してきました。また、「海上運送法等の一部を改正する法律」に基づき、船員の資質の向上に係る制度を導入したほか、本年4月には、旅客船への改良型救命いかだ等の搭載を義務化することとしています。引き続き、皆様に安心して利用いただけるよう、安全・安心対策に万全を期してまいります。
(中略)
自動車分野においては、本年までの5箇年計画である「事業用自動車総合安全プラン2025」に基づき、運行管理業務の高度化、健康起因事故対策や飲酒運転対策等の安全対策を着実に推進するとともに、改正物流法による貨物軽自動車運送事業の安全対策の強化について引き続きその周知を行ってまいります。また、軽井沢スキーバス事故等のような悲惨な事故が二度と発生しないよう、更なる自動車運送事業の安全性向上に向けた取組を進めてまいります。
(中略)
航空分野においては、引き続き、関係事業者等に対する厳正な審査・監査等とともに、大阪・関西万博で運航予定の空飛ぶクルマ等の新たな空のモビリティについても必要な取組を進め、航空輸送の安全の確保に努めてまいります。
②持続的な経済成長の実現
(持続可能な産業の実現、各分野の担い手の確保、生産性の向上)
旅客船事業者についても、インバウンド需要の拡大や、離島航路の維持確保、DX・GXの推進に向けた設備投資支援等に取り組んでまいります。
(中略)
空港での地上支援業務(グランドハンドリング)の生産性向上に向けた先進技術の開発・実装を進めるべく、必要な調査・検討に取り組んでまいります。また、令和7年の空港制限区域内における自動運転レベル4の実現に向けて官民で連携して取り組んでまいります。
(戦略的・計画的な社会資本整備、基幹的な交通体系)
鉄道分野においては、整備新幹線、リニア中央新幹線について、地元の理解を得つつ、着実に整備が進められるよう、必要な取組を行ってまいります。
現在建設中の北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)については、約8割を占めるトンネル区間や、高架橋・橋りょう等において、工事を進めているところです。
なお、昨年5月、建設主体である鉄道・運輸機構から、2030年度末の完成・開業は極めて困難であると判断した旨の報告がなされたところであり、現在、有識者会議を開催しながらこの報告内容が合理的であるのかなど精査を行っているところです。関係者の方々と協力をしつつ、一日も早い完成・開業に努めてまいります。
残る未着工区間について、北陸新幹線(敦賀・新大阪間)については、一日も早い全線開業に向けて、今般の与党におけるご議論や、沿線自治体等からいただいたご意見・ご要望も踏まえながら、沿線自治体の皆様のご理解を得られるよう、鉄道・運輸機構とともに、丁寧かつ着実に取り組んでまいります。
九州新幹線(新鳥栖・武雄温泉間)については、整備の効果を、ご地元の皆様に丁寧に説明するとともに、佐賀県についても、議論を続けることなどを通じて、ご理解を得られるようしっかりと取り組みたいと考えております。
リニア中央新幹線(品川・名古屋間)については、建設主体であるJR東海において、山梨リニア実験線を除く工事区間約243kmのうち、約9割の区間で工事契約が締結され、工事が進められています。
未着工の静岡工区については、「静岡工区モニタリング会議」を通じて、JR東海の対策状況を継続的に確認するとともに、静岡県とJR東海の協議に国土交通省も入って一層の対話を促すなど、早期開業に向けた環境整備を進めてまいります。名古屋・大阪間も含め、関係自治体やJR東海と連携し、一日も早い全線開業に向けてしっかりと取り組んでまいります。加えて、基本計画路線及び幹線鉄道ネットワークの地域の実情に応じた諸課題について、方向性も含め調査・検討に取り組んでまいります。
都市鉄道については、2025年大阪・関西万博のアクセスルートとなる大阪メトロ中央線の延伸開業が本年1月に予定されています。このほか、国際競争力の強化等に資する都市鉄道ネットワークの充実を図るため、なにわ筋線、東京メトロ有楽町線(豊洲~住吉)、同南北線(品川~白金高輪)などの整備を着実に進めるとともに、新空港線の事業化に向けて、関係者と連携し、しっかりと取り組んでまいります。
(中略)
航空分野においては、首都圏空港における年間発着容量約100万回の実現を目指し、必要な取組を進めてまいります。具体的には、成田空港については、地域との共生・共栄の考え方の下、第三滑走路の整備等の更なる機能強化の実現に最大限取り組んでまいります。
羽田空港については、2020年3月から現在の飛行経路の運用を開始しており、引き続き、騒音・落下物対策を着実に実施するとともに、固定化回避に向けた努力を継続してまいります。また、機能拡充に向けて、羽田空港アクセス鉄道の整備等を進めてまいります。
近畿圏空港については、地元自治体等の関係者と連携し、飛行経路の見直し等による関西空港の容量拡張など、2025年大阪・関西万博等に向けた機能強化を推進してまいります。
中部空港については、現滑走路の大規模補修時における継続的な空港運用及び完全24時間運用の実現等を目的とした代替滑走路事業を推進してまいります。
福岡空港の第2滑走路については、令和7年3月末までの供用開始を目指し、着実に準備を進めるとともに、北九州空港及び屋久島空港の滑走路延長事業、那覇空港の国際線ターミナル地域再編事業、新千歳空港の誘導路複線化事業などを推進し、ゲートウェイ機能の強化を図ってまいります。
(国際民間航空機関(ICAO)を通じた国際連携強化)
本年11月に実施予定のICAO理事会議長選挙について、我が国はICAO日本政府代表部特命全権大使の大沼 俊之氏を擁立しております。
ICAOは、気候変動対策をはじめとした航空分野における国際的なルール作り等に重要な役割を果たしています。
我が国としては、大沼大使の擁立を通じ、航空分野において我が国が一層貢献していく考えを改めて各国に広く発信し、また、国際社会における我が国のプレゼンスの強化にもつなげてまいりたいと考えております。
選挙での当選を目指し、各国からの支持を得るべく、引き続き政府一丸となって取り組んでまいります。
(国土交通分野における環境施策の推進)
航空分野においては、航空法等に基づく「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港脱炭素化推進計画」の認定を引き続き進めてまいります。また、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、空港の再エネ拠点化等に取り組んでまいります。
(大阪・関西万博、国際園芸博覧会の開催に向けた取組)
本年4月から大阪・関西万博が開催されます。空飛ぶクルマや自動運転の実現のほか、万博を契機とした地方への誘客促進に取り組むとともに、安心安全な開催に向け、円滑な輸送の確保や海上警備を含むセキュリティ対策に万全を期してまいります。
神奈川県横浜市で開催する2027年国際園芸博覧会は、今年3月に開幕2年前となります。気候変動等の地球規模の課題解決にも貢献するグリーンな国際博覧会となるよう、引き続き博覧会協会、関係省庁、地元自治体及び経済界と連携し、万全の準備を進めてまいります。
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