フィンエアー、SAF活用を中心とした新たなCO2削減目標設定 航空運賃への影響は?
フィンエアー(AY)がこれまでの気候変動に関する同社目標を見直し、サステナブルへの取り組みを今後さらに強化する。同社では2019年に「2045年までにカーボンニュートラル達成」との目標を設定していたが、2023年を基準に2033年までにCO2排出原単位を34.5%削減するという新たな中期目標を定義。長期目標として、国際航空運送協会(IATA)が掲げる「2050年までに二酸化炭素排出のネットゼロ達成」も新たに採用した。
このほど来日し本誌などのインタビューに応じたAYサステナビリティ担当SVPエヴェリーナ・フーッレ氏は、見直しを行った背景について、2019年時点ではロシア領空を飛行できなくなることが考慮されていなかったこと。また、「2019年当時は、ほぼオフセッティングで賄っていくという考えが主流だったが、現在の共通認識は自社内で排出削減を図ることが求められている」と説明。そのほか、目標達成への取り組みからそれに伴う航空運賃への影響などについて取材に応じた。
削減目標どう達成する?
目標達成へ最も重要なポイントは"SAF"の活用だ。同社の想定では、中期目標における削減量の半分以上をSAFの使用拡大で賄い、残りを航空ネットワークの最適化、重量課題などへのオペレーションによる対策、省燃費機材への更新などにより達成を目指す。
SAFにおいては外部機関による使用義務や目標設定も存在する。例としてEUは加盟国に対し、2025年から航空燃料におけるSAF混合率を2%以上と義務化。他にも、AYが加盟するワンワールドでは2030年までに混合率10%との目標が設定されている。
同社では、昨年に750トンのSAFを購入するなど取り組みを進める。一方、SAF活用においては、コスト高の影響から航空運賃が高騰するとの懸念もあるが、それに対しフーッレ氏は「(EU設定による)2%レベルであればまだ大丈夫。今後6%、20%となった時の影響はその時点にならないとわからない。例えばSAFの生産が今後増えれば、市場原理的に価格は落ちてくる可能性もある」と話した。
そのほか航空ネットワークの最適化については、ヘルシンキ空港(HEL)をハブに、ヨーロッパ各地へより効率的なコネクションを提供していく方針を示した。
また、目標達成に向けては「フィンエアーだけでは難しい。実際に利用してくださる皆様の協力も必要不可欠」と話したフーッレ氏。食品ロス防止を目的とした機内食のプリオーダーや荷物の軽量化、短距離移動の場合の鉄道利用、フライト予約時のSAF購入オプションの利用といった取り組みを呼び掛けており、「些細なことも日々のオペレーションで毎日積み重ねていくことが重要なこと。ネットワークの最適化や技術への投資も含め、そういった全てのことがこれから10年の間に私たちがやらなければいけないことになる」と発信した。