観光活性化フォーラム
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観光先進国におけるオーバーツーリズムやサステナビリティの現在地、英国政観トップインタビュー

  • 2024年12月4日
-具体的にはどのような活用方法が考えられるでしょうか

イェーツ 現在はデータハブを立ち上げようとしている。コロナ禍での学びのひとつは、政府が持つ統計などの情報は優れてはいてもすべて過去のデータであり、コロナ禍のようにすべての物事が崖から転げ落ちるように止まってしまうと何の参考にもならなくなってしまうということだ。

 それを乗り越えるために必要なのはクレジットカードの利用データなど業界の生のデータを活用することで、それによって何をどのようにすべきかを見出さなければならない。またそうしたデータを分析することで、旅行観光業者が需要はどこにあるのか、どの市場やセグメントが伸びているのか、どういった分野に力を入れるべきなのかといった疑問へのヒントとして使えるようにしなければならない。特に、データアナリストがいるような大手だけでなく中小の業者にも有益な形でなくてはならない。

 また消費者に対しても業界内では様々な試みが始まっているが、私は地方分散への活用に期待している。例えばVBのウェブサイトをユーザーが訪れてある地方への旅行に興味を持ったとして、1週間の旅程立案をどのように手助けできるだろうか。情報過多の現代においてパーソナライズは肝になる。

 AI活用についてのVBのアプローチとしては、自前ではなくパートナーとなり得る企業を探しているところ。アドバイザリーボードもすでに立ち上げ、パートナー選定だけでなく進むべき方向性も示唆してもらっている。

 繰り返しになるが私はAIをとても前向きに捉えていて、我々が持っている知識を個々の旅行者により適した形で提供できる非常に大きなチャンスと捉えている。来年にはVB内だけでなく旅行者向けの新たな展開も発表できる見込みだ。

-ウクライナ戦争や中東の紛争、あるいはトランプ大統領の再戦など世界のあり方が大きく変わりつつあるように感じます。VBとしてはどのように見ておられるでしょうか

イェーツ 地政学的な問題の見極めは難しい。トランプ政権になったからといって米国の人々が海外旅行により積極的になるか、あるいは控えるようになるかといったことは予測できない。ただ、英国のインバウンド市場の特徴は、訪問者全体の8割を上位5ヶ国の主要市場が占めるような他の国々と違い、22の市場に分散して誘客に力を入れていること。これは大きな違いだ。

 そして現状としてはコロナ後に米国は大きく伸びていて、消費額で言うと外国人旅行者が使う5ポンドのうち1ポンドは米国人旅行者のものになっているなど極めて重要な市場だ。そしてそれだけでなく湾岸諸国やオーストラリアも好調。欧州各国も戻りはやや遅いが打てば響きやすい市場で、ロンドン以外への送客にも資する。

 アジアについては、ロシアの問題が大きい。中国について言えば中国の航空会社はロシア上空を飛べるが欧州系は避けて通る。結果として運賃の差も大きい。とはいえ中国も戻り始めていて来年にはトップ5に返り咲くだろう。

-日本市場の状況と今後の期待をお聞かせください

1月には英国での現地商談会も開催し、日本の旅行会社も参加予定。その後の視察では鉄道を活用し、英国最大級の植物園ロスト・ガーデンズ・オブ・ヘリガンなどを訪問する(©Visit Britain)

イェーツ 中国市場と同様に飛行時間の問題はあるが、日本市場は今年、訪問者数が前年比で50%増となる見込みであるなど非常に大きく回復している。天皇皇后両陛下が国賓として訪英されて両国の歴史的に深い結び付きが広く強調されたほか、来年には大阪・関西万博も予定されている。

 まだ話せないが、万博では英国として面白い計画を立てている。万博は観光に限らないイベントだが、英国を知っていただき英国が訪れるべき国だと感じていただく絶好の機会だ。

 1月には、映画やテレビなどの映像作品をフックに英国旅行への関心を高めるキャンペーン「Starring Great Britain」も開始し、英国ではあなたが主役になれるというメッセージを打ち出していく。

 日本の皆様は英国の歴史や文化、伝統に変わらず親しみを持ち続けていただけている。VBとしても、今年実現できているような回復をこれからも継続していきたい。その際には旅行業界との協業は必須。特に新しい地域や体験の販売にお力添えをお願いしたい。

-ありがとうございました