日本市場いつ戻る?各市場の動向は?ハワイ・ポートランドなど米国4サプライヤー登壇、日米観光交流年シンポジウムで

 回復が遅れる日本のアウトバウンド市場だが、それは訪米者数も例外ではなく、今年8月までの米国への日本人渡航者数は約120万で、対2019年年間では約3割に留まる。復活に向けては円安、物価高など様々な壁はあるものの、両国の官民が往来拡大に取り組むことを目的とした「日米観光交流年」の対象期間は今年4月から来年3月までとなっており、回復に弾みをつけたいところ。

 9月下旬に開催されたツーリズムEXPOジャパンでは、日米観光交流年ワーキンググループが主催となりシンポジウムを開催。来日した4名のサプライヤーによって語られた各市場動向や今後の見通しなどについてまとめる。

【スピーカー】
■ディズニー・ディスティネーション・インターナショナル(DDI) マーケティング&セールス バイスプレジデント ジェフ・ヴァン・ランゲェヴェルド氏
■ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA) 最高管理責任者 ダニエル・ナーホオピイ氏
■ポートランド観光協会 インターナショナル・ツーリズム・アドミニストレーション・ディレクター ヘザー・アンダーソン氏
■グレーター・マイアミ観光局 トラベルインダストリー・セールス・ディレクター ジョー・ドカル氏
【モデレーター】
■ブランド USA 日本地区ディレクター 早瀬 陽一氏

 ブランドUSAの早瀬氏によると、コロナ前の米国にとって日本市場は英国に次ぐ2番目の市場で、2019年には日本から約370万人が訪れていた。コロナ禍以降は2022年約60万人(11位)、2023年約150万人(7位)となっており、今年1月~8月の累計では、英国、インド、ドイツに次ぐ4番目。以降はブラジル、フランス、韓国、中国と続いている。英国が約260万人と唯一200万人以上を記録する中、2位インドから8位中国までは、150万人~110万人と大きな差はなく、コロナ前の2番市場へ復活の期待が掛かる。

 回復の兆しを見せる訪米者数だが、その内訳はコロナ前から変化が生じている。2019年の日本人旅行者数の内、エリア別の内訳は、本土39.2%、ハワイ42.1%、グアム18.2%だったのに対し、2023年は本土52.8%、ハワイ37.7%、グアム8.9%と本土が数字を伸ばしているようだ。

各サプライヤーの現状や展開は?

 DDIのランゲェヴェルド氏は、米国に位置するディズニーパークへの日本人ゲスト数は、MLBドジャースに所属する大谷翔平選手の影響もあり、特にカリフォルニアディズニーを中心に回復傾向を見せていると明かした。来年2025年には、カリフォルニアディズニーが開園70周年を迎えるため、近日中に周年記念の各種イベントなどが発表される予定だ。

ジェフ・ヴァン・ランゲェヴェルド氏

 HTAのナーホオピイ氏は、先ず近年のハワイへの渡航者数は2019年がピークだったものの、重視しているのは税収に影響する「旅行者支出」であると示した。その上で、コロナ前に1人あたりの旅行支出が高かった日本人旅行者数の割合が減少していることから「州の税収を維持することが難しい」として、日本市場の回復を求めた。

 今後の戦略としては、観光客をローカルコミュニティに繋げ、暮らしや歴史、文化に触れてもらうことで長期にわたる関係を築き、誘客、リピートを図る。現在展開中の「やっぱりハワイキャンペーン」などを通し早期回復を目指すとともに、中長期的にはオアフ島以外の島々も含めそれぞれのブランド価値を高めたい考えだ。

 続いて、コロナ禍を経て、為替や高騰する燃料費、成田-ポートランド間の直行便もなくなったことから、同エリアへの旅行に関する状況は好ましくないと話すポートランド観光協会のアンダーソン氏。2023年日本からポートランドへの旅行者は2019年と比較し50%減を記録したという。今後は、先ず潜在的なファン層の誘客に取り組む。人気のコーヒーやヴィンテージショップなど、主にライフスタイルに関する情報の発信を積極的に展開する。

 グレーター・マイアミ観光局のドカル氏は、年間を通して開催される多種多様なイベントについて言及した。日本市場向けには、特にスポーツにフォーカス。「マイアミにはアメフト、NBA、MLB、サッカーのプロチームがある」と述べ、2026年には、昨年マイアミのローンデポ・パークで日本対米国が実現したWBCが帰ってくるとして、豊富なスポーツイベントによる誘客を期待した。

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