本当に高くなった旅行代金、紙パンフレットの行方や如何に?-MATCH 松宮英範氏
MATCHの松宮英範です。旅行会社に26年勤めた後、脱サラ・起業し、主に宿泊施設のプロデュースをやっております。前回までは、独立・起業の話題や宿泊業についてお伝えしてきました。今回から、⾧く携わった旅行業に関してのコラムとなります。早いもので7回目となり、ちょうど残り半分となりました。残りも頑張ります。
それにしても、海外旅行は本当に高くなりました!ツアーパンフレットの募集ページをめくる度に、「高い」「高い」と声が出てしまいます。これだけ価格が高くなると購買客層も変わっているようです。
先日羽田空港で馴染みの添乗員に会った際、どこへどんなお客様を添乗するのか尋ねたところ、北欧の1カ国のみ訪問し、お値段はビジネスクラスで百数十万円。エコノミー参加の人は少なく全体で12名の参加、1グループあたりのサイズが小さくなったことを喜んでいました。コロナ以前は1バスに30名前後が当たり前、スーツケースをコントロールする、バスの車内での人数カウントが大変という時代でしたが、お客様の客層も元気なおばさま達から上品なご夫婦中心となり、楽なのか寂しいのかよくわからない、との正直な感想でした。
旅行会社勤務のサラリーマン時代、海外旅行担当が⾧くおよそ50ヶ国を訪れました。今も海外旅行をこよなく愛し、毎年数回はまだ見ぬ世界へ旅します。私にとってパッケージツアーのパンフレットや旅行会員誌は、情報源かつ娯楽であり眺めるだけでウキウキいい気分になります。街へ出掛けては今も旅行会社のカウンターを覗き、パンフを手に取り重いけど何冊も持って帰ってしまいます。私の自宅やご近所さんの家にも旅行会社の会員誌が定期的に届きます。これは本当にありがたい。街へ出掛けずとも、数時間の荷物運びもなく、家にいながら世界中の旅行への誘いをしてくれるのです。
コロナで加速したWEB時代になっても、紙のパンフレットを作り続け、そして過去に参加されたお客様のご自宅へ郵送する。資料請求とは異なり、今旅行に行きたいと思っている人に送るわけではないので、一見非効率にも思えますが、私は顧客との関係性を保ち続ける素晴らしい営業方法だと思っています。コロナで海外旅行の担当者はめっきり少なくなってしまったでしょうが、毎月迫る締め切りと日夜戦う姿を想像すると、昔を思い出し胃がキリキリします。敬服。
元々旅行商品とは、募集型でも手配型でも非常にリピート率が高いものです。ホテルの場合は、次回は違うホテルに泊まりたいと思うし、インバウンドも毎年同じホテルに泊まってもらうハードルはかなり高いのですが、旅行は同じ会社から商品買っても世界中新しい場所へ連れて行ってもらえるので、むしろ知らない会社で冒険するより一度満足してもらえればリピーターになってもらえる確率は非常に高く、前職でも年間に何千万円も使ってもらえるロイヤルカスタマーは大切にされていました。
それでもこちらから何のアクションも起こさず、商品ラインナップはあるけど待ちの営業で電話の前に座っているだけではそのうち必ず忘れ去られます。会員誌・レターの送付やメール・電話でも何でもせっせとコンタクトを取り続けて忘れられないようにしないといけません。覚えてさえいてもらえれば、旅に行きたくなった時に選んでもらえるだけでなく、タイミングさえあえばツアー商品の衝動買いも多々あるものです。
前職時代ツアーの添乗中になぜこのツアーを選んだかとお尋ねすると「毎月、しつこい位(笑)、冊子が送られてくるから」「特に行きたい国でもなかったけど、お勧めされていたから」というコメントが圧倒的に上位でした。
リピーターが増えない・いないというのは、忘れられているということです。一生に一度のような感動的な体験をして、海外から帰国しても5年後には「どこの会社で行ったっけ?」となるものです。
既存顧客への忘れられない工夫や努力は新規獲得営業と同じくらいか、それ以上に大切ですね。