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星野氏「観光産業は100日の黒字と265日の赤字」、需要平準化訴え

  • 2024年7月9日

 観光クロスオーバー協会は4日、都内で「観光クロスオーバーサミット2024」を開催し、イノベーションアイデアを競うコンテストやトークセッションなどが行われた。そんな中、基調講演に登壇した星野リゾート代表の星野佳路氏は、観光産業の構造上の課題や「需要平準化」の重要性を訴えた。

星野佳路氏

 星野氏が最初に言及したのが、「国際的な旅行者の獲得競争」について。星野氏は、日本の訪日客数のこれまでの推移と各国のインバウンド旅行者数、国際観光客数のデータを提示し「日本のインバウンド急増は観光産業として競争力がついた訳ではなく、世界のマーケットが拡大し達成したもの」と指摘。他にも主な急増の要因として、ビザ緩和や隣国に中国などの大きなマーケットが存在すること、円安などを挙げており、競争力が向上していない現状のままでは「一気に萎んでいく可能性もある」と警鐘を鳴らした。

 また、生産性の低さについても触れており、その要因として観光産業の構造上の問題を指摘。「先進国の中でこれだけ祝日が多い国はない」と述べた星野氏は、祝日により観光客が集中し、観光産業はGWや年末年始、夏休み、その他の休日による100日の黒字と、265日の赤字の構造になっていると話した。

 この構造上の問題が非正規雇用への依存や低賃金の要因とし、どんな施設でも100日間は集客ができてしまい「競争に繋がらない」(星野氏)。消費者目線でも繁忙期の価格高騰や混雑を懸念し旅行を諦めることに繋がるとして「需要平準化」の重要性を訴えた。

 星野氏は2004年から「大型連休の地域別取得」を提唱しており、平準化に向け取り組んできた。一方で、競争を誘導するこの施策については同業界からも「反対する人が多い」と述べており、なかなか国としても取り組みが進まない現状がある。

 その「風向きが変わった」としたのが、昨年愛知県で始まった「県民の日学校ホリデー」。11月21日から27日までのあいちウィークの期間から1日を各学校が休みとするもので、実際に岐阜や静岡などの隣県にも経済効果が波及しているという。

 他にも日光市では校外学習を促進する「ちょこっとスタバケ日光」制度が今年度より導入され、これら地方主導の取り組みが「大きな観光維新に繋がるのではないか」と期待感を示した。