【現地情報】ウィーンのユニークなカフェ2選、「年金カフェ」って?

  • 2024年6月6日

 17世紀から続く、他に類を見ないカフェ文化を持つウィーン。UCCによると市内には、人口比で言えば東京の2倍にもなる約2300軒のカフェがあり、ザッハートルテの本家本元として認められているカフェ・ザッハーや東京にも支店を持つカフェ・ラントマンなどの有名店はもちろん、ユニークなカフェも多数存在します。

カイザー・パビリオンで朝食をとる女性。はたから見ても素敵な時間を過ごされているのが一目瞭然!

 その一例がカフェ・フォルペンジオン。フォルペンジオンとは、簡単に言えば日本で言う「年金」(※食事付きの宿泊の意味も)。年金カフェとはどういう意味でしょうか。

 実は、このカフェで働いているのはお年寄りたち。カフェ・フォルペンジオンを共同で立ち上げたダーヴィト・ハラーさんによると、もともとは12年前に誕生したアイディアで、きっかけは都市生活におけるシニアと若者の分断に課題を感じていたことと、ウィーンはコーヒーとケーキを愛する文化が根付いていてたくさんの美味しいケーキがそこここにある街であるものの、「実は一番美味しいのはおばあちゃんやおじいちゃんが作ってくれるもの」と気付いたこと。そしてできあがったのが「誰でも自由に遊びに来られて手作りケーキを楽しめるみんなのリビングルーム」です。

ハラーさん(右)と接客名人のおばあちゃん

 働いているお年寄りたちは、接客をしケーキを焼いて老若男女の客を迎え入れることで、年金だけに頼らずに暮らすための給与を得られるだけでなく、若者とのふれあいややりがいも。市民だけでなく旅行者にも人気で、カフェ2店舗のほかお菓子作りの教室用にスタジオも確保。イベントなどに合わせて出店するためのフードトラックも持つまでに成長しているそう。高齢者の活躍は日本にとっても喫緊の課題。何かのヒントになるかも?

フォルペンジオンの名物ケーキのひとつ、ブフテルン。素朴な味わい深さが最高

 もう一軒、いかにもウィーンらしいカフェが世界最古の動物園であるシェーンブルン動物園内のカイザー・パビリオン。名前の通りシェーンブルン宮殿の敷地内にあり、それだけでもこれぞウィーンの体験と言えますが、カイザー・パビリオンはおしどり夫婦として知られたマリア・テレジアとフランツ1世がよく朝食をともにしていた場所。フランツ1世はそもそもこの動物園を創設した人物で、2人はエキゾチックな動物たちを眺めながら朝食を楽しんだそうです。

カイザー・パビリオン内装

 カイザー・パビリオン内はごく気軽に立ち入れるものの、重厚、絢爛でありながらほっとくつろげる居心地の良さはさすがの一言。悠久の歴史の良い部分を残しながら居心地良く現代を生きる、そんなウィーンっ子の真髄を感じられる場所と言えそうです。

カイザー・パビリオン外観