Trip.comグループ 中東市場へ積極展開、AI活用で顧客体験向上図る
コロナ禍からの旅行需要急回復を背景に、23年度の通期決算で純利益を前年比7.1倍としたTrip.comグループ。第4四半期の海外ホテルと航空券予約では、19年同期比80%を記録するなど順調な回復を見せている。
日本政府観光局(JNTO)が先月発表した2月の訪日外客数統計では、同月の中国からの訪日者数は19年比63.5%と苦戦するなかで、同社の中国から日本への予約数は既に19年レベルを超えていると、このほど来日した同社国際市場マネージングディレクター兼副社長のブーン・シアン・チャイ氏が明かした。
チャイ氏は、日本含んだ中国からのアウトバウンド需要は今年さらに飛躍すると予想する一方で、「(同社は)中国のみを中心とした会社ではない」と強調した。これまで、日本、シンガポール、マレーシア、タイ、韓国、台湾、香港など、アジアを中心に投資を行ってきた同社だが、欧州ではここ数年、英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアへの投資を拡大。直近ではアラビア語への対応を行うなど、中東地域での展開も積極的に進めている。
先月には、サウジアラビア政府観光局とパートナーシップ契約を締結。これについて、チャイ氏は「我々にとっては中東のお客様を取り込める。彼らとしては、我々の技術やプラットフォームを活用して中東地域へ海外からの観光客を呼び込むことができるため、ウィンウィンの関係を築ける」と話したほか、今後宿泊施設など同地域の仕入れも拡大する方針を示した。
同社は、沖縄県やJNTOなど日本でも連携を進めているが、その狙いについてチャイ氏は「日本の持っている多様な魅力をユーザーに紹介したい」と話しており、例として沖縄、福岡、岐阜、仙台など「あまり知られていないが、そういった所に非常に魅力的なものがある」と地方への誘客を積極的に進める。
若者のニーズに合わせたアプリ開発
「TripGenie」などAI活用も
チャイ氏によると、現在同社の予約の6割ほどをZ世代やミレニアル世代が占めており、それに合わせ同社アプリ上では、従来のホテル、航空券、送迎などの各種予約に加え、旅行に関する情報をユーザーがシェアできるようになっている。チャイ氏は「若者はこのようなコンテンツを好んでおり、SNSのように写真や動画などをユーザーがシェアできることで、アプリ上にコミュニティができあがる」と話しており、若者のニーズに合わせたアプリ開発も積極的に進めている。
また、直近の同社の展開で注目を集めたのが、昨年2月に実装されたAIチャットボット「TripGen」。オススメのアクティビティや宿泊先など、AIから旅程の提案を受けられるもので、現在は「TripGenie」と名前を変え展開されている。
チャイ氏によると、「TripGenie」を利用するユーザーは、利用していないユーザーと比較して、平均30分長くアプリを使用しており、コンバージョン率も20%高くなるなど一定の効果が表れている。
今年2月には「Apple Vision Pro」と連携した新たな旅行体験アプリをリリース。Vision Proを通し各国の旅行体験を行えるもので、それに対し「その旅先までのフライトやホテル情報などを提供することで、ユーザーの旅行予約の手助けを行う」(チャイ氏)。
加えて、同社ではカスタマーサービスの分野でもAI活用を進めており、予約からサポート含めたカスタマーエクスペリエンス向上へ注力している。