TIFS会員インタビューVol.10 セブンシーズリレーションズ 榎本 律子 氏

  • 2024年5月22日
  • 出典:一般社団法人新観光創造連合会(TIFS)
-創業後の苦労や成功体験についてお聞かせください。

榎本 起業を決めてはみたものの、本当に自分で経営ができるのか確かめたい気持ちもあり、東京都や東京商工会議所が主催する起業塾に足を運びました。不安もあったのですが、商工会議所の起業塾ではMVPを取ることができ、前向きな気持ちになることができました。とは言え、実は創業したのがリーマンショックがあった2008年だったこともあり、事業が進みづらい状況で、クルーズ会社と契約ができるまで1年は待ちました。無事契約が出来てからは、旅行会社さん、一般旅行客の両方を顧客として、営業を展開しました。

ウインドスターのヨットスタイルは、南洋では船から直接マリンスポーツが楽しめる

 その後も、契約していたクルーズ会社、ウインドスタークルーズがチャプターイレブン(再建型の企業倒産)になり大きな影響を受けました。オーナーが変わった途端、急に営業やマーケティングチームからメールの返信が来なくなったこともありました。実は新しいオーナーは、自国(アメリカ)の顧客だけで充分クルーズ船室を埋められると考え、外国人への販売を控える方針だったようです。

 そんな状況の中、私自身がコーディネーターとして乗船したクルーズの船上で偶然に同社の新社長を見かけ、突撃して直談判をしました。私は(当時は)ウインドスタークルーズのみを取り扱って日本で勝負をしているのだと主張し、返信をもらえるよう取り付けました。その後、アメリカまで飛んでミーティングを行い、「今後も頑張って販売をするので、成果を上げたら排他的な契約をしてほしい」と約束を取り付け、1年でそれを実現しました。

-凄い行動力です。クルーズ会社との契約はその後拡大されましたか。
船尾のインフィニティプールが特徴的なエメラルドのリバークルーズは全室海側で70%以上がバルコニー付き。ヨーロッパの流れる景色と共にクルーズを楽しめる

榎本 現在、弊社の契約するクルーズ船社は「ウインドスタークルーズ」、「シーボーン」、「ホーランドアメリカライン」、「エメラルドクルーズ」、「クリスタルクルーズ」の5ブランドです。同じ会社のクルーズ船だけを取り扱っているとやはり波があるので、エメラルドクルーズというリバークルーズとも契約をし、事業を拡大しました。その他、同じくエメラルドクルーズが手掛けるスーパーヨットの取り扱いも始まり、現在ではオーシャン、リバー、スーパーヨットの3本立てで展開しています。

 コロナ禍以降、クルーズ旅行に対するマインドセットには変化があり、小型高級船やスーパーヨットにも興味を持つ人も増えましたね。エメラルドのリバーはグループ用の条件がこれまで以上に整ったことにより、今後旅行会社さんがグループ販売しやすくなったので、積極的に展開していきたいです。また、オーシャンクルーズの会社との契約も拡大していきたいです。

-日本のクルーズ会社とは契約はされないのですか。

榎本 日本の船会社さんは既に販売網を十分お持ちなので、そこに参入する予定はありません。わたしとしては、日本人のお客様をもっと海外に送り出すというお仕事をしたいのです。海外に行って初めて感じることができるインスピレーションや日本との違いを、もっともっとたくさんの日本人のお客様に体験して頂きたいです。海外で見たもの感じたもの、日本には足りないもの、学ぶべきもの、逆にこれなら日本はもっと世界に打って出られる…など、海外旅行で受けられる恩恵は多大です。また、実際に現地に足を運んだことにより、日本人が現地の人に与えるインスピレーションもたくさんあります。民間レベルの交流はとても大切で、政府がやろうとしても出来ないことですし、とても意義があると考えています。だからこそ日本人の海外旅行をやりたいのです。