「日本は文化観光だけではなく、自然観光にもっと力点を」星野リゾート代表が語るこれからの観光産業
1月17日 日本政府観光局(JNTO)は、昨年12月の訪日外国人客数が273万4000人となり、19年同月比で108.2%、12月として過去最高を記録したと発表した。また、JTBが昨年12月に発表した旅行動向見通しでは、24年の訪日外国人客数は3310万人と、19年を上回る見通しと予測するなどインバウンドの勢いが止まらない。
新規開業のホテルも相次ぐなか、長期的に見て日本の観光産業の成長にはなにが必要なのだろうか?宿泊施設の再生や地方の振興を数々手がけてきた星野リゾート代表の星野佳路氏に、今後を見据えて日本の観光産業に求められるものを聞いた。
場所は昨年12月に、旧アルツ磐梯&猫魔スキー場(福島県)の2つのスキー場が連結リフトで繋がった、全33コースの国内最大級規模のスキー場「星野リゾート ネコマ マウンテン」。東日本大震災を乗り越えて、星野リゾートによる14年越しのプロジェクトである。
インバウンドの増加が吹き飛ぶ国内消費の減少予測とは
星野 いま、国内、特に東京・京都・大阪にはインバウンドバブルと思えるほどホテルが増えていることには危機感を感じている。ホテルの運営で大事なのは生産性だが、今はそれを追求しなくても売上や収益性がよい状態となっている。今後、マーケットが縮小し始めると生産性の低いホテルはすぐ大変になる可能性がある。
また、実は旅行消費額28兆円のうち80%が国内の消費である。国内消費が少し落ちると、インバウンドの収益は吹き飛んでしまう。コロナ前の10年間も現在と同様にインバウンドの右肩上がりの増加が注目されていたが、実は普通の年であるにもかかわらず国内旅行消費額が少し落ちて全トータルでマイナスになったことが2回ある。1つは2014年で消費税が8%に上がった年。もう一つは2018年で、この年は自然災害が多く、日並びが悪かった影響だとされているが、それが原因かどうかは定かではない。
2025年には、団塊の世代が全員、後期高齢者になる。ここ10年観光を支えていた団塊の世代が退くので国内消費は落ち始めることが予測される。今後の10年間は過去2回だった旅行消費額のマイナスが5回になることもあり得る。
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