スポーツ・文化×観光の課題は?「高付加価値」ツアー造成のポイントは?シンポジウムや4省庁連携セミナーで議論
高付加価値ツアーはマネタイズ・持続性が課題
観光業以外のステークホルダーとしっかりとしたコミュニケーションを
観光庁・文化庁・スポーツ庁は2月2日、3庁連携で「第4回スポーツ文化ツーリズムシンポジウム」を開催するとともに、環境省を加えた4省庁連携セミナーを実施した。第1部のシンポジウムでは3庁の各長官がトークセッションでそれぞれの取り組みを解説。第2部の4省庁連携セミナーでは「地域活性化・まちづくりに寄与する高付加価値ツーリズムとは」をテーマに、旅館やエコツーリズム・武道ツーリズムの担い手、インバウンドコンサルティング会社の代表者が現場の生の声を語った。
3庁トークセッション、ラグビーや2020年東京五輪のレガシー活用も
トークセッションでは、モデレーターを務めた日本スポーツツーリズム推進機構代表理事の原田宗彦氏が「インバウンドへのアプローチ」「2025年の大阪・関西万博等世界的なイベントを見据えた戦略」の2つの論点を掲示。観光庁長官の髙橋一郎氏、文化庁長官の都倉俊一氏、スポーツ庁長官の室伏広治氏が、各庁の取り組みや今後の戦略を紹介した。
観光庁長官の髙橋氏は、訪日外客数が順調に増加する一方で、訪問者の7割が3大都市圏に集中していることを改めて指摘。「限りないポテンシャルを持っている地方の魅力を引き出し、地方部に太く誘客する流れを作ることが最大の課題であり仕事」と強調したうえで、観光庁として地域文化に触れて魅力を体験できるようなコンテンツの整備を引き続き支援して行く方針を示した。
スポーツツーリズムについては合気道発祥の地での稽古体験など、地域の文化のルーツを探るコンテンツの造成支援に加え、欧米を中心に人気の高いアドベンチャーツーリズムを「重要な柱」と位置付けて整備を進めていることなどを紹介。大阪・関西万博については「日本が文化芸術立国であり、スポーツ立国であることを遺憾なく見せていく場」と位置付け、地方誘客に向けたコンテンツの磨き上げと受入体制づくりに取り組んでいく考えを述べた。
文化庁長官の都倉氏は、訪日の目的となりうる日本のエンターテイメントやスポーツなどの体験が不足していることを指摘し「そういう付加価値が観光ビジネスにはなくてはならない」と強調。訪日観光客がエンターテインメントに参加することは日本の文化芸術レベルの向上につながるとし、「日本には文化芸術のリソースがあることを再確認し、文化観光に大いに役立てていくことが目標」と話した。
また、都倉氏は文化庁の京都移転についても言及。「我々には京都発で日本中の文化芸術を再発見し、育成継承する義務がある」と話し、そのための取り組みとして全国に105ヶ所ある「日本遺産」を紹介するとともに「国からのお墨付きを海外に向けないといけない」と示唆した。また、京都はアニメをはじめとした「ニューメディアの首都的存在」とし、「国を挙げてコンテンツを売り込み、インバウンドが本家本元・求めてくればいい好循環になるのでは」と話した。
スポーツ庁長官の室伏広治氏は、同庁が日本発祥の武道と歴史や文化を組み合わせた「武道ツーリズム」を推進していることを紹介。「武道は精神性があるためビジネスとしての側面は理解が得られない部分もあるが、知られなければ衰退していくのが常」と語り、引き続き国内外での認知度向上や情報発信などにより、インバウンド誘客に取り組んでいく方針を説明した。
今後のスポーツイベントについては「関係者だけで集まるのでなく、プロモーションを十分にして観光に結びつけ、日本を知り、文化芸術に触れてもらうような取り組みを共同でやっていかないともったいない」とコメント。2020年東京オリンピック・パラリンピックの際、御殿場市がイタリア空手代表のホストタウンになったことを契機に「空手のまちづくり」に取り組んでいることを紹介し、「一過性の取り組みに加え、人と人の交流・ブランディングにつながることもスポーツの魅力。良い事例をスポーツ庁も増やして繋げていきたい」と話した。