元大手広告マンが”建築”を軸に挑むまちづくりのかたちとは?-Koe代表 小川翔大氏
小川 独立後にまず設立した合同会社Koeは「まちづくりのエージェント」として、コンサルティングに近い形で様々な事業のお手伝いをさせてもらっています。その最初のお仕事が盛岡市動物公園 ZOOMOの再生事業でした。建築及び広告・広報の専門家として動物園の再開発のお手伝いをしました。
その後、先ほども話に出たオガールという施設の中で飲食店(焼肉屋)や、かつて紫波町の町役場があった場所に新たな温浴・サウナ施設「ひづめゆ」を開業しました。
直近のビジネスとしては、株式会社LOSS IS MOREを立ち上げ、ロス材のアップサイクル事業に注力しています。サウナや飲食店をやってみて改めて実感したのが、サービス業のクオリティを上げるほどロスが出てしまう、ということでした。花屋ではちょっと茎が曲がってしまうだけでも商品として売れなかったり、焼肉屋でもお客様に見場よく提供するために、柵取りをして端材が出ます。サービス業としては当たり前だしやるべきことだとは思っていますが、コロナ禍を経てサービス業もキャッシュポイントの多様化を図らないと経営の安定化ができないと痛感し、ロス材をキャッシュポイント化できればどれだけ経営が楽になるかと常に考えていたため、いっそ事業化することにしました。
色々なサービス業のロス材を買い取り、それを新たなサービスや製品にして利益を生み、その利益を別のロス材に投資できるという循環をつくることができれば、サービス業が元気になり、その舞台であるまちも元気になると考えたのです。
最初に取り組んだのがロスフラワーを活かしたお酒です。お花の特徴は艶やかな見た目と香りだと思うが、寿命が短いお花のせめて香りだけでも後々まで残したい。クラフトジンは元々香りが特徴的なお酒で、尚且つアルコール度数が高いため消費期限がなく長い間楽しめる。儚い花の香りをお酒に移して長く楽しんでもらえたら素敵だと思い考案しました。
小川 いくつかあるが、サウナの排熱はロスだと思っているのでそれを活用したい。岩手は冬は寒いし、夏も意外に暑く、光熱費の負担も大きい。高気密高断熱の住宅は住人の日々の生活を豊かにするので、そういった住宅に更にサウナのロスエネルギーを活用出来たらよいと考えています。
例えば、1階に一般の人も使える大きなサウナがあり、その熱を上階に住んでいる住人の部屋に循環させると冬だけでも暖房がほとんどいらないマイクログリッド型の住宅にできます。住人は1階の温熱施設を使えれば各住宅の光熱費はかからない。更に理想を言えば、サウナは太陽エネルギーなども使いながら賄えるとベストです。
住人としては、商業施設のサウナが儲かるほど自分たちの光熱費は安くなるので、集客に協力もしてくれるし、住宅価値自体もオーナーシップ制度にすれば「儲かる家」になります。日本の住宅は経年劣化で価値が棄損していくのが普通だが、建築士の目線としては、なるべくそうならない住宅をつくっていくのも目標のひとつです。
小川 基本的に「あり続けること」でしょうか。作って終わりではなく、作ったものがどれだけの期間元気に存在して、人を笑顔にし続けられるのか、だと思います。
無理やり同じことを続けるのではなく、かたちや内容が変わっても良い。変わりゆく世の中にうまく適応しながら続けていくことがひとつの正解だとは思っています。同じく適応できている仲間や環境を作っていくことも大事ですね。
小川 横のつながりを強く持つことだと思います。先日も自分でやっている焼肉屋と日本酒のコラボイベントを開催しました。実は紫波町は3万3000人の人口に対して4つの酒蔵があり、また近々もう一軒新たに作られる日本酒の町です。焼肉と日本酒というのはなかなか結びつかないが、考え方を変えれば魅力的な繋がりになります。自分がやっているビジネスはあくまでひとつだが、それに何を掛け算するかで新しいコンテンツや人との繋がりなど、様々なものが生まれます。きっかけをつくり持続させるのも自分の仕事の一つだと思っています。