業界の人材不足などで議論、震災復興サポート策も-観光立国推進協議会
協議会では宿泊業界を代表し、日本旅館協会会長の大西雅之氏が発言。能登半島地震については「被災地域には核となる施設も多く、仲間の苦難で言葉もない状況」とコメント。「直接の被害に加え、風評被害、旅行控えが大きなダメージになる」と懸念を示した。そのうえで「個々の企業のBCP(事業継続計画)、被害規模の算定やとりまとめ、段階的にどう支援していくか、危機管理のノウハウがなかなか業界でも地域でも確立できていない。今回の災害を契機に、観光産業自体を持続可能なものにしていくためにも整理が必要なのでは」との考えを述べた。
また、「能登半島エリアからは金融支援、雇用支援を強く求める切実な声が出ている」と説明。「自分たちの力だけでは再起できない、心が折れた状況なので、借入金返済のリスケジュールや金利補填をスピード感をもってしてほしい。個別対応では間に合わないので、地域一括した対策が望まれている」と訴えた。
このほか、大西氏は人材不足対策としての外国人の活用促進等に取り組んでいることに触れつつ、最も重要なこととして「コロナで大きな信用を失うなか、もう一度夢のある業界を取り戻す必要がある。お客さまだけでなく日本の若者・外人が夢のある職種として選んでくれる、宿の後継者にとってやりがいのある業界になってもらいたい」と力説。「有事の時こそ団結力を高める大きなチャンス。幅広い団体が結集する協議会のさらなる強いリーダーシップを心からお願いする」と話した。
ぐるなび取締役会長・創業者の滝久雄氏は地域固有の食文化の情報を国内外に伝え、オーバーツーリズムの解消につなげたい考えを示すとともに、旅行者の意識が変化するなか、信頼できる観光情報の発信や、趣味のコミュニティからのユニークな情報提供、ユニークべニューの民間公開の促進によるさらなる活用などを提案した。加えて子どもたちに年1回旅行してもらい、学校も出席扱いにする「旅育」を引き続き提案。「旅育を通じて観光好きな国民を育て、旅行先を全国に分散させることで日本各地の観光資源の劣化を防ぐことにつながる」とした。
定期航空協会理事長の大塚洋氏は、双方向交流に向けたアウトバウンドの回復に注力すべきとしたうえで、空港で保安検査担当を含むグランドハンドリングの人員が不足しており、運航や新規就航などに影響していることを改めて説明。自治体に対し「地域空港における受入体制の準備を誘客と共に注力し、官民連携で受入体制を強化してほしい」と訴えた。
さらに、持続可能な観光産業の実現については2021年のCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)でのグラスゴー宣言において、観光産業の二酸化炭素排出量を2050年までにゼロにすることがうたわれ、移動手段におけるグリーン化が求められていることを指摘。「観光における気候変動対応はグローバルスタンダード化しており、訪問地の選択の際重要な要素になっている。事業者・産業単位でなしえるものではなくサプライチェーン全体で進めていくべき問題で、世界に後れを取ることなく観光産業界全体として取り組んでいくべきでは」と訴えた。