コロナ禍を経た観光学部の現状、業界企業に求めるものは?-玉川大学観光学部長 家長千恵子氏
家長 入社する学生らはそれぞれが唯一無二の存在です。若いとか経験が足りないなどで排除せず、アイデアなどを是非彼らから引き出してほしいと思います。もちろん人手不足が深刻ななかで難しいことも承知していますが、もう少し若者の活かし方に工夫があればと考えています。
観光のアイデアは若者から高齢者まで、その人にしかない経験値が多く生きるもの。どんなアイデアが飛び出すかは話してみないとわからないワクワク感が凄くあって、そのためには聞き出す力が必要だと思います。
幸いなことに、卒業後5年以内に社内で優秀賞を取ったと報告してくれる学生もおり、そういった成果を見ると企業側でも一人ひとりの力が発揮できる場所を与えてくれていると実感します。
家長 間違いなくDXは必要です。使い方を誤るとただただ無機質になってしまいますが、人が介在すべき部分と、システムに任せる部分を見極めなくてはいけません。それを見極められる人材は必要で、そうした人材の育成も必要となってきます。
システムを人がうまく使いこなすことで、例えば5人でやっていたことが1人でできるようになったという事例も存在しています。それによって一昔前は、「システム化で仕事が奪われる」とネガティブに考える人も少なくなかったですが、今は適材適所。一人ひとりをどう生かすかということを企業側は一生懸命考える必要があります。
家長 データサイエンスや観光分野でのテクノロジー活用事例などの授業を取り入れています。個人的に調べた情報になりますが、現在全国にある観光系学部ならびに観光系人材の輩出を目指した観光系学問が学べる大学は約180校。その中で、データサイエンスやICT、AIなどの学修を前面に出している学校は6校とまだまだ少ないです。当校も観光業界の変革に着目し、デジタル技術や新たなITソリューションを情報として知っておくことが重要だと感じています。
家長 観光学部としては、19年に沖縄県久米島町と山形県山形市蔵王と連携して地域にどう若者を呼び込むかなどをテーマに地域創生プロジェクトを実施しました。コロナでしばらく学生たちを外に連れ出すことができなかったですが、22年と23年の夏に和歌山県古座川町で実施しました。令和6年度に復活を計画しているのは沖縄県久米島町です。少しでも地域の活性化に貢献できればと考えています。
家長 ご周知の通り業界の構造は変わり、テクノロジーもあらゆる場面で駆使される時代になってきました。観光学部の学生も、そうでない学生も、多様な知識・経験を持つ人材が活躍できる場が観光だと思います。日本の観光産業の発展を目指して優秀な観光人材を輩出してまいりますので、ぜひ若者たちの力を活かしていただければ嬉しいです。