コロナ禍を経た観光学部の現状、業界企業に求めるものは?-玉川大学観光学部長 家長千恵子氏

  • 2024年1月24日

 コロナ禍を経て深刻な状況続く業界の人材不足。影響は観光業界を志す学生が集まる大学も例外ではなく、玉川大学観光学部ではここ数年新入生の数は減少した。学部長を務めるのは前職のJTBの頃から学生の教育に関して活動を行ってきた家長千恵子氏。入学した学生の多くが観光産業に進むなか、大学の立場から同産業の関連企業に求めるものは何か。人材不足の対策などについてお話しを伺った。

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玉川大学観光学部 学部長の家長千恵子氏
-自己紹介をお願いします。

家長千恵子氏(以下敬称略) 前職はJTBでMICE関連の業務や、中高大学マーケットの教育事業開発などに携わりました。その際の「大学生観光まちづくりコンテスト」の創設や、大学での非常勤講師などの経験を経て、2019年に玉川大学観光学部着任。2021年より学部長を務めまして、同校では観光開発論、イベントツーリズム、アートツーリズム、日本文化論などを担当しています。

-玉川大学観光学部の特徴などについてお聞かせください。

家長 特徴として、4年間の内の1年オーストラリア留学が必修になっていて、留学中には2週間の海外インターンシップを2回実施します。観光業界に就職したい人たちはもちろんのこと、異文化理解や、国際交流など外資系企業に勤めたい人や、海外で働いてみたいというような人たちにも、多くの学びを得られるカリキュラムを用意しています。

 卒業生の進路は観光業界が最も多く、19年は53.8%が観光業界に、20年は32%、21年は26.7%、22年は39.2%ということで、以前は観光学部から観光業界に進む学生は約20%と言われていたなかで、当校は比較的高確率で観光業界に進んでいることになります。

 ただ、私自身は今はどんな業界でも観光に繋がっていると考えていて、最近では銀行が地域づくりを進めていたり、メーカ-に就職したとしても訪日客に対して購入を促すこともあるでしょう。漁業そのものが観光素材になることもあります。旅行、宿泊、交通など所謂観光に直結する産業以外でも、観光の学びは必ず生きてくる。これは入学してくる子たちにも話しています。

-必ずしも観光業界に進む必要はないということですね。

家長 サービスの拡充が進む昨今で、極論を言うとそもそも観光業界とは何か。学生たちも海外のカフェでロボットがサービス提供を行う状況を見て、寧ろ人だからこそ喜ばれるサービスは何かと考えるようです。これがツーリズムで、広く言うと、人が動き「交流」が生まれる仕事は観光業界の一つと捉えています。この考えは前職のJTBから繋がっているものです。

 そういった意味で、観光の学びはあらゆる場面で活かせるのであまり縛られずに、進みたい道を見つけてくれると良いですね。

-コロナを経て、学生もしくは親御さんが観光業界を敬遠する様子はなかったでしょうか。

家長 入学してくる学生は、もともと観光もしくは英語を使った仕事に興味がある子たちが多いのでネガティブになることはなく、留学などの経験を今後どのように就職に役立てるかという目線で勉強に励む子たちばかりです。海外と日本をつなぐ仕事がしたいと考えて学修に励む学生もいますし、経験を活かして新しいビジネスチャンスを掴みたいと考えるポジティブな学生もいます。今のところ、親御さんから「観光業界はやめなさい」と言われたということは耳にしていません。

-観光学部に入る学生の数に変化はありますか?

家長 当校のみならず全国的に減少していて、コロナによる影響や最近では人材不足が深刻な分、かなり大変だという状況も影響していると思います。