学生を観光業界に導くには?国際観光学会がディスカッション、現場でコミュニケーション不全の課題も
コロナで学生のコミュニケーション能力に課題も
神田氏は大手旅行会社の現場で起きている課題として「学生のコミュニケーション能力の不足について、本当に何とかしてほしいという切実な思いがある」と主張。コロナ以降の新入社員の傾向として「メンタルヘルスを保てず休む新入社員が増えた」と振り返り、「(話を聞くと)客観的に見ても8割近くは本人の問題が大きい。業務上の指導をしているにもかかわらずパワハラだと本気に受け止めているケースもあった」とコメントした。
神田氏はその原因として「リアルのコミュニケーションがコロナ過で圧倒的に不足していたのでは」と語り、「先生方には社会人としてのコミュニケーション能力を習熟させる必要性を学生に説いてもらいたい。旅行業界へと学生を導くには、コミュニケーション能力はポイントになる」と訴えた。
航空業界、日系大手は客室乗務員も「総合職の感覚」、外航は専門特化
パネルディスカッションでは航空系出身者として、日本航空(JL)で客室訓練センター長などを務めた経験を持つ浦和大学社会学部教授の藤島喜代仁氏が登壇。JLと全日空(NH)の客室乗務員(以下CA)の採用について、状況や学生に求められる資質などを講演した。
藤島氏はJLとNHのCA募集状況について、2020年新卒はJLが600人、NHが500人だったのに対し、2024年新卒はJLが350人、NHが430人(※すべて募集時)だったことにふれ「約70%まで回復しており、2025年卒以降は2020年卒並みまで回復する見込み」と説明。
新卒以外についても2社ともキャリア採用を実施しており、JLは新卒採用の際に「2021年4月~2023年3月までの間に専門学校・短期大学・高等専門学校・4年制大学または大学院(修士課程)を卒業されている方」を対象に加えていところ。NHも第2新卒を後日発表見込みで、2社ともコロナ禍で採用をストップしていた期間の人材確保を狙っているという。
藤島氏は日系2社のCA採用の特徴として「社員として企業にどう貢献できるか、何を実現したいかという、経営に参画する総合職に近い感覚が必要」になっていると指摘。マネジメント層の育成という視点から「組織で働く社員として通用するのか」をみられるとし、学生にはそうした視点が必要と指導していることを説明した。
その反面、外資系航空会社についてはジョブディスクリプション(職務定義書)があり、業務内容が明確に決まっているため、日系2社とは異なる。会場からはその旨を改めて指摘する声が上がっていた。