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学生を観光業界に導くには?国際観光学会がディスカッション、現場でコミュニケーション不全の課題も

冒頭にはコーディネーターの矢嶋氏が「業界の30年後を考えられる学生はいる。ぜひ採用を」と訴えた

 国際観光学会が11月4日に東京都の白百合女子大学で開催した第27回全国大会では、「観光学部・学科学生をどのように業界へと導くか?」をテーマにしたパネルディスカッションが開催された。ディスカッションでは旅行・航空・宿泊の各業界から登壇したパネリストたちがそれぞれの業界の課題や学生を導くためのポイントなどを紹介。現場で起きている課題などについても発表された。今回はパネルディスカッションの様子について、旅行業界を中心に紹介する。

【パネリスト】
サービス連合情報総研業務執行理事 神田達哉氏(JTBグループ労働組合連合会)
浦和大学社会学部教授 藤島喜代仁氏(日本航空出身)
ホスピタリティコーチングサービス 代表チーフコーチ 青木昌城氏(帝国ホテル出身)
【コーディネーター】
日本大学国際関係学部准教授 矢嶋敏朗氏(日本旅行出身)

旅行会社の応募者減、事業戦略を学生に伝えてミスマッチ防止

サービス連合情報総研業務執行理事の神田達哉氏

 パネルディスカッションではJTBからサービス連合情報総研に出向し、業務執行理事を務める神田達也氏が登壇。観光学部・学科の学生たちを旅行業界へと導くかについて、企業・教員の双方の視点から大手旅行会社の場合を例に講演した。サービス連合に加盟する労働組合のうち、JTBグループをはじめとした大手数社のヒアリングにもとづくもの。

 同氏は旅行業界への応募学生数の減少や内定辞退者の増加といった現状を説明。その背景として、低賃金や残業の多さを含めた労働条件や不祥事を起こす企業風土に加え、「旅行業界がコロナにより、外部環境に大きな影響を受ける不安定な業界だというのが社会情報として流通した。生産性がなくて稼げず、デジタル対応も遅く、時代の先端をいく企業と距離がある」点を指摘。

 加えてコロナ発生以降、大手旅行会社がソリューション事業に「傾倒」し、旅行以外の他分野に進出したことで「旅」に関するタスクが減少したことも、旅行にかかわりたいという学生とのすれ違いにつながっているという。

 その上で同氏は「採用活動の中で現状と今後の計画をしっかり説明しないとミスマッチが起きる」と強調。「業務範囲が広くなり、顧客ニーズも多様化するなか、はっきり『あるべき人材像』が示せていないのでは」と課題を指摘し、事業ドメインの戦略・戦術を打ち出すとともに、採用活動の中でミスマッチが起きないよう学生にしっかり伝えていく必要性を説いた。

 一方で神田氏は、旅行会社で副業を認める企業が増えていることや、ソリューション事業により地方創生など旅行以外の幅広い業務に関われるチャンスを得られるようになった点を評価。「転職を考えている学生にとっても視野が広がるのでは」と話すとともに、教員に対し企業とミスマッチが起きないよう、企業の経営戦略・事業領域を明確化したうえで応募するよう促すことを提案。「副業もそうだが、学生が働きやすい環境が一定程度できてきた。教員として業界にいたころのイメージで捉える人もいるかもしれないが、各企業の雇用実態を把握し周知するべき」と話した。

 これに対し、会場からは日本旅行業協会(JATA)の合同インターンシップ制度を例に、「各社がかなり個性的なインターンシップをやっている。そういう企業の取り組みを学生に伝えておけばマッチングミスはないのでは」「採用に関しては応募が減っているがきちんと採用できている。先生方も大変だが、潮目が変わったことを伝えてもらいたい」という意見が上がった。