ATWSの成果と課題は?MICE誘致にはサステナビリティに関する発信急務-JNTOメディアブリーフィング
日本政府観光局(JNTO)は10月23日に開催したメディアブリーフィングで、9月の訪日外客数が2019年同月比96.1%の218万4300人となり、1月から9月までの累計では19年同期比71%の1737万4290人を記録したと報告した。昨年10月の水際措置緩和以降、19年比での回復率は右肩上がりとなっている。地域別で見た場合には、中国除く東アジア3市場、東南アジア6市場、米豪州その他エリアからの訪日客数は過去最高レベルまで回復している状況だ。
■東アジア3市場(韓国・台湾・香港)
1月~9月訪日客数:935万人(19年同期比91%)
■東南アジア6市場(タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム)
1月~9月訪日客数:236万人(19年同期比93%)
■米豪州その他エリア(米国・豪州・カナダ・メキシコ・インド・中東・北欧・ロシアなど)
1月~9月訪日客数:327万人(19年同期比101%)
訪日客数の回復に伴い、日本発着の国際線も回復基調にあるものの、夏ダイヤ時点での19年比の回復率は約6割、世界的には約9割まで回復しており、訪日数の増加と比較するとやや回復が遅れている。JNTO理事の中山理映子氏は「国際線の回復がさらに遅れると、今後訪日に影響する可能性もゼロではない」と懸念する。
また、訪日の回復に伴い懸念されるオーバーツーリズムの問題に対し、JNTOが取り組む対策の3本柱として「マナー啓発」「地方誘客促進」「地域の実情に応じた対応」を挙げており、中山氏は特に3点目に関し「(オーバーツーリズムに関する)課題は地域差があるため、各地域の実情をお伺いした上できめ細やかな対応をしていきたい」と述べた。
対策としてJNTOでは、ウェブサイト上で、手ぶら観光等旅ナカのお役立ち情報や、旅行者に対して「責任ある旅行者(レスポンシブル・トラベラー)」としての行動指針の発信を、SNSでは地方誘客を目的とした地方観光コンテンツの発信を行っている。
「地域の実情に応じた対応」としては、京都市からの依頼でJNTO海外事務局を通じて現地旅行会社に京都観光におけるマナーの周知を行った。JNTOとしては今後も「地域から発信してほしいことなどをお伺いしながら情報発信をしていきたい」(中山氏)
ATWS2023の成果と今後の課題は?
メディアブリーフィングでは、9月11日~14日に北海道で行われた「Adventure Travel World Summit(ATWS)2023」の成果について報告が行われた。アドベンチャートラベル(AT)はアクティビティ、自然、文化体験の内、2つ以上の要素を含む旅行のことで、同イベント内では日本全国のATコンテンツを発信する「Japan Lounge」の運営、基調講演・パネルディスカッションへの登壇、商談会への参加など、JNTOとして様々な取り組みが行われた。JNTO市場横断プロモーション部の藤内大輔部長は「ATを構成する3要素は日本が観光資源として多くを有しているもの。また、地方の強みを発揮でき、地方誘客に貢献できること。対象となる顧客層が富裕層中心で消費額の拡大に期待できるという点で、JNTOとしても事業の柱のひとつ」と、AT推進に対し積極的な姿勢を見せている。
開催された「ATWS2023」は「調和-Harmony」をテーマに行われ、世界71カ国から776名が参加した。Japan Lounge及び北海道ラウンジ来訪者に対し行ったアンケートには計225名が回答。興味関心が高い日本のATコンテンツとしては、アクティビティ、自然体験に加え、地域住民との交流、食、伝統文化体験が挙げられた一方で、「ガイドの英語レベルが低い」や「情報が不足している」などが課題であることがわかった。
また、藤内氏は「英語ガイドを増やすことも必要」と述べており、AT推進においては、ガイドの確保及び育成が今後の課題となりそうだ。
JNTOとして現在ガイド育成に係る取り組みはないものの、国際的なアドベンチャートラベル業界団体である「Adventure Travel Trade Association (ATTA)が行うガイド専門スタッフのコンサルティングなどの活用を次年度に検討したい」(藤内氏)とした。