ヌーヴェル・アキテーヌ地方観光局、日本市場復活と宿泊日数増を目指し商品造成を訴える
このほどヌーヴェル・アキテーヌ地方観光局から同会長クリステル・シャッサーニュ氏はじめ観光ミッションが来日し、旅行業界誌記者に対しインタビューに応じた。ボルドーを中心とするワインやバスク地方、ドルドーニュ渓谷の自然に加えラスコー洞窟、伝統工芸といった素材を加えて多様性をアピールし、日本市場のリカバリーを狙う。
インタビューに応じたのはシャッサーニュ会長、同局アジア・アメリカ圏マーケティング担当のセリーヌ・ブット氏、ラスコー洞窟の管理・運営を行う財団であるラスコー・セミトゥールのジェネラルディレクター、アンドレ・バルべ氏。ヌーヴェル・アキテーヌ地方は日本の北海道とほぼ同等の面積で、シャッサーニュ会長によると国内外を含め年間3000万人の観光客が訪れる。そのうちフランス人観光客は2600万人を占め「フランス人にもっとも人気のある観光地のひとつといえる」。外国人客は年間約400万人で、そのほとんどが英国、ドイツ、オランダなどEU圏から。日本人客はコロナ禍前の2019年は約1万5000人、年間宿泊数は3万泊を記録したが、「まずは2019年の数値をリカバリー目標とし、さらに平均2泊を伸ばせれば」とブット氏は話す。
その方策として同局が提案するのが伝統工芸や、ラスコー洞窟での特別プログラムなどだ。これまで日本市場は①ボルドー周辺のワイン産地やバスク地方、②ボルドーからドルドーニュ渓谷の自然、小さな町や村巡り、といった2つのルートが主で、シャッサーニュ会長は「日本は食文化や歴史など知的好奇心が高い重要市場。伝統工芸は知識をより深掘りできる素材」とし、リモージュの磁器、オービュッソンのタペストリーといった工房訪問や体験プログラムといった切り口を加えることで商品内容に深みを持たせ、さらにシーズナリティにも左右されないツアー造成を狙う。とくにオービュッソン国際タピスリーセンターでは宮崎駿の映画『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』などの大型タピストリーの制作に取り組んでおり、日本人の織り師も制作に携わるなど、話題性も期待できるとしている。
さらにラスコーIV(洞窟壁画国際センター)は年間40万人が訪れる人気スポット。2023年から開館前または開館後に行う特別貸し切りツアーを設定しており、特に閉館後のツアーは地元のミシュラン星付きレストランによるディナーも楽しめ「アメリカ市場では好評。ガイドも同席し、洞窟に対する知識をより深めることができるので、日本市場にもぜひ提案したい」とバルべマネージャーは語る。
またオーバーツーリズムについては、「ヌーヴェル・アキテーヌ地方では大きな問題は起こっていない」(シャッサーニュ会長)。ピークシーズンの夏でも海外市場は大西洋側のビーチリゾートに集中し、日本はドルドーニュ渓谷など内陸部を好むことから観光客の動きは分散されているという。また、広大な地域ではあるが、ボルドーを拠点とした地方都市への公共交通機関も整備され「アクセシビリティは非常に良さも強調したい。ぜひ商品造成を」とシャッサーニュ会長は力強く語った。