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訪日旅行者数 年内での19年水準回復視野、ブッキングドットコムへは聞き取り調査実施-髙橋長官会見

  • 2023年8月22日

 観光庁の髙橋長官は8月21日に会見を開いた。足元では、7月の訪日外国人数は232万600人(対19年同月比77.6%)を記録し、中国を除く総数ではコロナ前の実績を上回った。また、それに伴い訪日外国人の消費額も増加しており、4~6月期の消費額は1兆2052億円を記録し、対19年同期比で95.1%となった。

 7月の中国からの訪日客数は31万3300人、19年同月比29.8%に留まるが、今月10日には中国から日本への団体旅行が解禁。国別では19年最も訪日者数が多かったのが中国であったため、今後の訪日旅行者数、消費額ともに大幅な増加が見込まれる。

年内での19年水準回復視野に

 今年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画では、「2025年までに訪日外国人旅行者数の2019年水準超え」「訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成」を掲げていたが、中国からの団体解禁に伴い、観光庁としては年内に単月で19年水準に戻ることを視野に入れ、環境整備を進める。

 観光庁が訪日旅行を取り扱う中国の旅行会社に行った聞き取りによると、造成される団体旅行の多くは8月末から9月以降の出発見込みで、10月の国慶節に送客の本格化が見込まれるという。

懸念されるオーバーツーリズム
「需要の分散・平準化」ポイントに

 国内及び訪日客の増加に伴い懸念されるオーバーツーリズムについて髙橋長官は、「それぞれの地域の実情に応じて、旅行需要の平準化を図り、観光客の皆さんの過度な集中を回避するとともに、マナー違反など地域住民の方々への影響を最小限に抑える取り組みが重要」との見解を示した。「需要の分散・平準化」というポイントでは、日本観光振興協会と連携して実施してきた「平日にもう1泊」キャンペーンのほか、北海道美瑛町では観光庁支援のもと観光スポットの混雑状況を可視化する取り組みなどが行われている。

 続けて髙橋長官は「混雑やマナー違反対策を進めつつ、地域の自然、文化の保全など地域産業の発展と観光振興を両立させる」方向性を示しており、このほど10地域、団体を選定した「持続可能な観光推進モデル事業」について継続的な取り組みを実施していく考えだ。

令和6年の予算概算要求

 検討が進められている令和6年(24年度)の予算概算要求に関しては、観光立国推進基本計画における各施策の具体化を進める方向性であるとともに、現在の観光需要の都市圏偏在を懸念した。

 髙橋長官は「観光需要の回復状況は、宿泊地域によって偏在しており、今年5月時点で(観光需要は)3大都市圏のみで約7割。観光の効果を全国あまねくお届けするべく改善しなければならない」と地方誘客への取り組みを強化する考え。

ブッキングドットコムへは迅速な対応求める

 一部で報道がされたブッキングドットコムの宿泊施設への支払い遅れの問題については、観光庁から同社へ原因等の事実確認が行われ、「7月のシステムメンテナンスの不具合により、全世界の取引のある宿泊事業者への送金がストップしていた」との回答があったことを明かした。

 8月16日からシステムの復旧と順次送金の手続きが行われている状況であるが、観光庁では引き続き事実関係の確認と宿泊事業者への迅速な対応を求めていく方針だ。

 また、8月9日にコロナ関連事業の過大請求問題で、調査報告書の受領と再発防止策の策定方針を発表した近畿日本ツーリストについては、「国民の税金を活用した事業において、過大請求などは断じてあってはならないことであり、極めて遺憾。早期に再発防止策の策定、実行するよう求めていく」と述べた。