ラグジュアリー層の訪日旅行者と観光事業者との間で感じる「ズレ」-KYOTOyui 近藤芳彦氏
株式会社KYOTOyuiの近藤芳彦です。最近とても感じる事を書かせて頂きたいと思います。
弊社は立ち上げた頃から「国の光を観る」観光に取り組んできておりますが、ようやく今!求められ出した!とつくづく感じております。例えば日本文化に触れる体験として、代々継がれてきた創業200年、300年企業の代表からお話しを聞くことに対して魅力を感じていただくことがあり、特にラグジュアリー層の方々にとっては、その話しそのものが価値となり数千円の体験料ではなく、それなりの体験料を払っても来たい!という話を良く耳にします。
旅のニーズは多様化して来ていると思うので、これからは旅行業者として、観光事業者として、それぞれのニーズにあった旅行商品を創るべきだと思っており、逆に言うと今までのありきたりの観光ではお客様は来ない!またはリピートされない時代が来ていると思います。
先日ご縁を頂いた華僑の方に聞いたお話がとても興味深いお話でした。少しだけ触れさせていただくと、今までの中国人富裕層は爆買いの時代だったが、心の豊かさを求める時代に変わってきた!と仰っておられました。今まで日本人を見下していた方々が、その華僑の方が案内されている「遊学」旅行に参加され、日本を敬う考え方になっておられるそうです。
その華僑の方と違った目線で、ある最大手の日本企業が日本文化に触れられる観光商品が欲しい!と仰っていると聞きました。良く言われる話ですが「WEBサイトには出て来ないような特別な体験!」そしてこれも良く言われる「普通の観光客は行けない場所!」などの商品を求めて来られます。さて特別な体験!行けない場所!と聞いて皆さんはどんな場所が思い浮かぶでしょうか?
日本企業が考える観光商品って、言い方が悪いかも知れませんが、とても薄っぺらさを感じてしまいます。例えば特別な体験!イコール、人間国宝さんから学べる体験!だったり、行けない場所!イコール、寺社仏閣の普段は入れない場所!だったりする事が多いです。決してそれを悪くは言いませんが、先に挙げた華僑の方が求めている観光はそうじゃ無いんです。
今後観光立国を目指す日本としてやるべき観光は、正しく「国の光を観る」観光だと最近熱を増して感じております。
最近いろいろな方からご連絡を頂くなかで、京都の宿泊業をされている方からのご相談で、1泊10万以上のお部屋を提供される宿では、ラグジュアリー層へのお客様に喜ばれるよう素晴らしい空間をつくっておられますが、そこで宿の滞在だけではなく、日中又は夜の観光案内に困っておられるというのです。
ここで上記に挙げた日本企業又は宿泊事業者の課題、そして一例で挙げている華僑の方が求められる観光にとてもズレを感じる今日この頃です。皆さんに問いかけてみたいのですが、そのズレとは何だと感じておられるでしょうか?
それぞれ違う答えが出てくると思いますし、正解は特に無いと思っております。何故ならば観光事業者のそれぞれ理念やターゲット、売り上げ規模が違うからです。ただ私が感じているズレを最後にお伝えさせて頂きます。
抽象的で分かりにくいかも知れませんが、一言で言うと日本に対しての想い、日本への愛が有るか無いかだと思っており、その持ちようによってズレが出てしまう!という事だと思っております。私が思うアッパー層の方々は、華僑の方からも出た言葉にある通り「心の豊かさ」を観光で求めておられ、欧米諸国の訪日外国人においては日本の長きにわたる文化にリスペクトされ、なぜ日本人は礼儀正しいのか?勤勉で努力家が多いのか?美意識が高いのか?等などを感じられる体験や場所を求めておられると思うのです。
残念ながら昔の日本とは違い、礼儀正しい!勤勉で努力家!美意識が高い!など感じられる日本人が少なくなっているからこそズレが出てしまうのだと思います。そこで先ずは旅行事業者や観光事業者が気付くべきで、もっと日本に対して興味や愛をもって知るべきだとも思います。
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光サポーター。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。