価格の値上がりをどのように捉えるか?-RT Collection 柴田真人氏
第29回目のコラムは「価格の値上がりをどのように捉えるか?」について書いていきます。
ゴールデンウィークがあっという間に終わりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしたでしょうか?私はというと、国内旅行はとても混雑すると思い、溜まった仕事を片付けたり、インバウンドのオペレーションの対応をしたり、映画を観たりと自宅で過ごす時間が長く、すっかり繁忙期の旅行に億劫になっていました。
ゴールデンウィーク期間中の観光地は以前のように旅行者であふれかえっており、旅行需要の高まりをとても感じました。東京駅の新幹線乗り場や東京ディズニーランドは長蛇の列、江の島の弁財天仲見世通りは旅行者で通りが埋め尽くされていて人が動けない状態、関西にいる友人から送られてきた京都の二寧坂の写真も同様に観光客で道がごった返しており、繁忙期が本当の意味でリアルな繁忙期に戻ったと感じた1週間でした。一方で海外旅行はゴールデンウィーク前の海外旅行動向の調査ではまだまだ需要は少ないものの、ゴールデンウィーク最終日の帰国ラッシュのニュースを見ると海外旅行をする旅行者層も増えてきたなと感じました。個人的にはどこもかしこも大混雑だった様子を見ると週末やピーク時期をずらして旅行をしようと改めて思う機会にもなりました。
インバウンドでは、桜シーズンも終わり、日々のアライバルとデパーチャーも少し落ち着き、秋の10月の商戦がスタートしています。主要観光地のホテルは混雑し始め、訪日外国人観光客に人気の宿はすでに満室の日程もあり、また、ガイドも確保し辛くなってきています。そんな矢先、先月の4月14日にJRグループからインバウンド向けの「ジャパンレールパス」の価格とサービス内容の改定に関するプレスリリースが発表されました。
価格の改定では、2023年10月以降(詳細な日程は未定)、7日間の普通車利用のパスが大人29,650円だったものが改定後は50,000円(約69%の値上がり)、7日間のグリーン車利用のパスが大人39,600円だったものが改定後は70,000円(約77%の値上がり)など約50%から最大で約77%の値上がりが発表されました。
種類 | 現行価格 | 改定後 | ||
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JR指定販売店・代理店 | 専門サイト | |||
普通車用 (大人用) | 7日間用 | 29,650 | 33,610 | 50,000 |
14日間用 | 47,250 | 52,960 | 80,000 | |
21日間用 | 60,450 | 66,200 | 100,000 | |
グリーン車用 (大人用) | 7日間用 | 39,600 | 44,810 | 70,000 |
14日間用 | 64,120 | 72,310 | 110,000 | |
21日間用 | 83,390 | 91,670 | 140,000 |
サービスの改定では、今までは東海道・山陽新幹線の「のぞみ」、山陽・九州新幹線の「みずほ」は利用できませんでしたが、ジャパンレールパスを利用する訪日外国人旅行者は乗車前に専用のきっぷを購入することで「のぞみ」や「みずほ」を利用できるようになります。(専用のきっぷの価格は未定)以前は「ひかり」や「こだま」の指定席が訪日外国人観光客の利用で混雑していたことを考えると、「のぞみ」や「みずほ」の利用ができる選択肢が増えたことはサービスの改善につながると思います。
インバウンド従事者にとって、ジャパンレールパスの価格の改定をどのように捉えるのかは様々です。価格の値上げ率や料金差額だけを見てしまうと「高い」「高すぎる」というイメージを持ってしまいますが、個人的にはこの価格改定は良い方向に向かうのではないかと思っています。
欧米豪の旅行者の取扱いをしていると日本の滞在日数は2週間から3週間が多く、定番ルートの1つに東京から河口湖、木曽福島、高山、金沢、京都、広島、大阪の旅程があります。ジャパンレールパス14日間・普通車利用を購入すると改定前の価格では大人47,250円となります。もし各都市間の新幹線(ひかりやこだま)や特急列車の乗車券や特急券を個別に購入すると約50,000円、そして、滞在中のJR普通列車での移動や東京滞在中に日光、京都滞在中に城崎温泉など各都市でサイドトリップをすると合計で70,000円~90,000円ほどになります。そのため、旅程の組み方次第では改定後の80,000円でもお得感は残ります。
また、JRの他のエリアパスと比較をしてみるとジャパンレールパスは非常に安いパスでした。他のエリアパスは5日間で20,000円のものや7日間で25,000円のものがありますが、ジャパンレールパスは7日間で29,650円となり、エリアパスとほぼ変わらない価格帯の設定になっています。
パスの種類 | 内容 | 価格 |
---|---|---|
Japan Rail Pass | 7日間・普通車利用 | 大人 29,650円 →改定後:50,000円 |
Hokkaido Rail Pass | 7日間・普通車利用 | 大人 25,000円 |
JR East-South Hokkaido Rail Pass | 6日間・普通車利用 | 大人 27,000円 |
JR Tohoku-South Hokkaido Rail Pass | 6日間・普通車利用 | 大人 24,000円 |
JR East Pass | 5日間・普通車利用 | 大人 20,000円 |
JR Kyushu Rail Pass (All Kyushu) | 7日間・普通車利用 | 大人 20,000円 |
もし、「Hokkaido Rail Pass」や「JR East-South Hokkaido Rail Pass」を30,000円に値上げをしたい場合でも、ジャパンレールパスが29,650円であればそれ以下にせざるを得ません。今回の価格改定により、旅行者へのインパクトは大きい可能性はありますが、商品価値と価格のバランスが保たれると思っています。
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。
訂正箇所:表1つ目「普通車用(大人用)7日間用の改定後価格」
誤:500,000
↓
正:50,000
お詫びして訂正いたします。